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リアムの秘密

「リアム、あなたも元気そうでよかったわ。昨夜は少し、心配したのよ?」


私が微笑んで声をかけると、アルカード様がグラスを置くカチャリという音が、不自然に鋭く響いた。


「……セシリア。彼はこの城の備品のようなものだ。いちいち心を砕く必要はないよ」


アルカード様の声はどこまでも優しい。けれど、その瞳の奥には、私を自分だけの箱庭に閉じ込めておきたいという、底なしの独占欲が渦巻いているのがわかった。


「……左様でございます、セシリア様。私はただの影。どうか、お気になさらず」


リアムが消え入るような声で答える。その時、私の膝に乗ってきたピピンが、耳元でこっそりと、けれど残酷なほど無邪気に囁いた。


(「セシリア、内緒ですよぉ。リアムさんは、公爵様に『死ぬことを禁じられた』呪いにかかってるんです。何度窓から飛び降りても、朝にはクローゼットの中で燕尾服の形に戻っちゃうんです。面白いですよねぇ!」)


私は一瞬、喉の奥が引き攣るような感覚を覚えたけれど、指輪から流れてくる甘い魔力が、すぐにその不快感を塗りつぶした。

ああ、そうなのね。死ぬことさえ許されないほど、彼はアルカード様に必要とされているのね。……なんて光栄なことかしら。


「そういえば、セシリア。今日はこの後、城の中で好きに過ごすといい。君がこの場所に慣れてくれることが、今の私の最大の願いなんだ」


「嬉しいわ、アルカード様。あなたの愛するこの場所を、もっと知りたいと思っていたの」


食事の締めくくりに、マダム・ヴェノマが特製のハーブティーを運んできた。

カップの中で揺れる液体は、深い森の奥のようなエメラルド色をしていて、一口含むと、全身の力が抜けていくような、至高の癒やしが広がった。


「マダム、このお茶、とても美味しいわ。心が洗われるような香ね」


私の言葉に、マダム・ヴェノマは巨大な葉を揺らしながら、ざらついた声で笑った。


「あら、お嬢さん。お口に合って何よりだわ。これはね、庭園に咲く『安らぎの忘却草』を、昨日まで泣き叫んでいた罪人の涙でじっくり蒸らしたものなの。心を空っぽにするには最高の一杯でしょう?」


「ふふ、マダムったら、またそんな面白い冗談を。……ねえ、もしよろしければ、そのハーブを摘んでいる庭園を案内してくださらない?」


私の頼みに、マダム・ヴェノマは一瞬、食虫植物の口をパクパクと動かした。


「庭園へ? ええ、構わないわよ。あそこは私の『食堂』でもあるしね。……せいぜい、勝手に肥料にならないように気をつけて歩くことね。あんたみたいな綺麗なお嬢さんは、うちの草たちが一番喜ぶトッピングなんだから」


「まあ、頼もしいわ。よろしくお願いしますね、マダム」


アルカード様は「マダムが付いているなら安心だ」と、私の手に軽くキスをして、書斎へと向かわれた。


私はマダム・ヴェノマの後に続いて、城の裏手に広がる庭園へと足を踏み入れた。

そこは、色彩が暴力的に溢れかえる、美しくも禍々しい「エデンの園」だった。

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