43.世界樹の不沈艦
「船を作るだと? 正気か? ここにはまともな木材なんて残ってねぇぞ」
ナギサの村長は、浜辺に積み上げられた残骸を指して嘆いた。 クラーケンの襲撃で、村の船はすべて破壊され、使える資材などどこにもない。
「心配いらん。材料なら持ってきた」
俺は亜空間収納……代わりの四次元ポケット的リュックから、一本の巨大な丸太を取り出した。 いや、丸太という表現は生ぬるい。 直径2メートル、長さ20メートル。白銀色に輝くその木肌は、太陽の光を浴びて神々しいオーラを放っている。
「な、なんだその木は……!? 鉄のように硬そうで、羽毛のように軽い……!」
「『世界樹の枝』だ。エルフの姫さんから徴収した、世界最強の建材さ」
漁師たちが腰を抜かす中、俺はガンテツ親父に合図を送った。
「親父さん、設計図は頭に入ってるな? 竜骨はこの世界樹を使う。そして船体は……これだ」
俺が指差したのは、コボルトたちが混ぜ合わせている灰色のドロドロした液体。 火山灰と石灰、そして海水を混ぜた「ローマン・コンクリート」だ。海水に触れることで強度を増す、海洋建築のための魔法の泥である。
「世界樹の骨格に、コンクリートの装甲。さらにスクリューの軸にはミスリルを使う。……クックック、腕が鳴るわい!」
ガンテツが愛用のハンマーを振り下ろした。 そこからは、常識外れの突貫工事が始まった。
「オラオラァ! 型枠を組めワン!」 「鉄筋を入れるワン! クラーケンの触手でも折れないように密に入れるワン!」
コボルト工兵隊の動きは洗練されていた。 世界樹を削り出し、鉄筋を組み、コンクリートを打設する。 魔法使い(エリル王女から派遣されたエルフの技術者)が乾燥の魔法をかけ、硬化を早める。
わずか三日後。 浜辺に、異様な船が姿を現した。
流線型ではなく、どっしりとした箱型の船体。 表面は岩のようにゴツゴツとした灰色だが、喫水線より下はミスリルでコーティングされ、銀色に輝いている。 美しさのかけらもない。だが、圧倒的な「暴力的な頑丈さ」を感じさせる威容。
「完成だ。名付けて超重装甲漁船『大漁丸』!」
俺が船首に名前を書き込むと、漁師たちがざわめいた。
「おい……あんな石の塊が浮くわけねぇだろ!」 「沈むぞ! 絶対沈む!」
「見てろ」
俺たちが船を海に押し出す。 ズズズ……バシャァン!
巨大な水しぶきが上がった。 船体は一度大きく沈み込み――そして、ゆらりと浮き上がった。
「う、浮いたァァァッ!?」
「当たり前だ。アルキメデスの原理を舐めるなよ」
俺は「大漁丸」の甲板に飛び乗った。 びくともしない。まるで陸地の上にいるような安定感だ。
「よし、野郎ども! 出航だ! クラーケンを釣り上げて、今夜はイカ刺しパーティーだ!」
「「オオォォォッ!!」」
少しでも「いいな」と思ったら、下にある【★★★★★】を押して応援してもらえると嬉しいです。 ブックマークもぜひお願いします。




