夜のニュースと「ざまあ!」の始まり
Fは実家の台所で、息子の弁当箱を洗いながら、スマホでニュース動画を垂れ流していた。
すると、耳に、よく知った名前が飛び込んできた。
『深夜の迷子を救った観光協会職員・Mさん、同じくシェアハウス住人であるRさんに、警察署長から感謝状が授与されました。
2人は先月、◯◯市の路上で、X歳の女児を保護し――』
Fは思わず笑った。
「RとM部長、さっすが~♪
なんでRetrojiの名前出さないんだろ? せっかく良い宣伝になるのにさ~」
そんな状況でも素早く動けるなんてと、Fは心の中で拍手喝采。
自然と動画の高評価を連打する指先。
「よかった~ほんとに。私も息子いるから気が気じゃないわ~」と一人ごちた。
しかし、時計の針は、着々と進む。
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Day 1
地域密着掲示板に、ある投稿が投下された。
【速報】○○市の深夜徘徊女児、母親○○オートの副社長じゃね?
旦那と別居中らしいぞ
リンク先:
地方紙デジタル版: 副社長B氏、家庭と会社の両立に挑む ✍
地元TV局の速報:
「県内の自動車販売会社『DDオート』副社長B氏。年齢(XX)。
深夜に保護された幼児の母親として、警察の事情聴取を受けている模様です。」
時を同じくして、Fの実家の食卓。
TVから県内ニュースが流れていた。
「○○市の路上で深夜、女児(3)が保護された事件で
昨日、女児の両親が『保護責任者遺棄』の疑いで書類送検されました。
父親A容疑者と、母親B容疑者は――」
Fは耳を疑った。
画面のテロップに浮かぶ「A」「B」の名前。
眉をひそめ、息を呑む。
次の瞬間――
「ざまああああ!!」
思わず声が出た。
Fはおどろいた息子に「なんでもないよ~♪」と笑って誤魔化す。
食器を片付けると、Fはすぐに部屋へ戻った。
Fはかつて、DDオートに新卒で就職した。
しかしその事務職採用は、真っ赤な詐欺だった。
妻B容疑者は、独自ルールと朝令暮改を繰り返し、
何をしても褒めない。常にダメ出し。
夫A容疑者は、最初はにこやかで、妻B容疑者をたしなめる事すらあった。
Fが少しだけホッとしたのもつかの間。
ある日とつぜん態度を豹変させ、Fに罪悪感を植え付けることに成功すると、外回りやノルマを強要。
Fが到底不可能なノルマ未達の瞬間、フッと夫A容疑者の口元が歪んだ。
それから奴は、心底うれしそうにFを罵倒しはじめた。
その憎きダークトライアドどもに――
天罰が下ったのだ!!
Fは笑いながらSNSを開き、片っ端から“いいね”を連打した。
ありがとう! イーロン・マスク!
これで心置きなく炎上に身を委ねられる!!
いいね罪なんかクソ喰らえ!
言論弾圧・大・大・大反対!!
ペンは剣よりも強し!!!
「あははははは!! やった!やった! とうとう勝ったんだ!!」
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Day 2
バズ◑速
【悲報】バリキャリ女さん、仕事に夢中で娘放置→深夜の街をおむつ徘徊
No.1:かわいそうなのは子ども
No.2:女が働くから悪い。しかも発達
No.3:旦那カワウソwwwメシウマw
No.4:家に居ないからこうなる
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Day 3
イナゴ動画投稿者がすかさず投稿
▶【修羅場】不妊治療の闇、我が子を愛せない金の亡者…成金社長夫妻の裏の顔がヤバすぎた…
(※サムネは無関係の防犯カメラ風画像)
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Day 4
SNSトレンド
#母親放置 #無責任ディーラー女
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今日もFはタイムラインを眺め続ける。
DDオート批判で埋め尽くされたその画面は、
もはや外付け脳内快楽装置と化していた。
だが、そこにふと混じった投稿。
「この夫婦、Retrojiのクラファン出資者じゃん」
「嫁側と結託して、子ども放置仕組んだんじゃ?」
Fは、Retroji公式アカウントに飛んだ。
固定ポストは――クソリプまみれだった。




