表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/128

社長室単独ライブ✧\(>o<)ノ✧:「さわらせないキミは少女なの?」

 四郎の脳裏に浮かぶのは、義弟・Cの、あの泣きそうな顔(比喩)。

 先ほどまで四乃からの“追いキンモクセイ・ハンドクリーム”を拒み続けていたCは、

 中古車査定の電話を口実に、逃げるように社長室を後にした。


 その背中を見送りながら、四郎の胸に奇妙なフレーズがこだまする。


「……さわらせないキミは少女なの?」



 ――その瞬間、閃光のようにインスピレーションが走った。



 数時間後。S不動産・社長室のドアが勢いよく開く。


 ノック? していない。

 社内ルールでは「内線で許可を取る」が鉄則。

 だが新人秘書・Fは、初日のOJTで言われた言葉を忠実に守っていた。


「社内botに頼るな。人間の判断で動け」



 今、Fは判断した。

 ――報告遅延はまずい! ノックなど不要!




 その瞬間、ドアの向こうから――


〽「さわらせないキミは少女なの~?

 あるいは推しのガードが硬すぎる~!」


 魂の歌声が、社長室いっぱいに響いた。


 四郎の指先が、空気を指揮するように動く。

 リズムに合わせて、机上の書類が震えた。

 革張りの椅子、会議資料、卓上メモ――すべてがステージ装置に見える。


 完全にトランス状態。


 Fはドアを開けた姿勢のまま、凍った。



---


♪【1番】

さわらせない キミは少女なの?

心のドアに鍵かけて投げ捨てた

「開かないよ」って指を絡めて

すぐに離して 微笑み真顔


こたつやソファの隣で

募る想いは上の空

振り向かぬまま星を眺める

推しても推しても キミは「知らない」

届かぬ想い 喉にしまい込む――


(……これ、現実……?⊙.☉)



---


 だが四郎は気づかず、情熱の2番へ突入。


♪【2番】

スマホ画面に 遊ぶような通知

「やっぱなし」そう言って

キミはそのまま部屋で寝るだけ

遠い街灯 ビルの谷間

祈る声さえ風に消えて

認知されないその深淵に

届かぬ想いに身を焦がす――


(四郎様、謎ラップ入りました……ᕙ(@°▽°@)ᕗ)



---


♪【3番】

さわらせない キミは少女なの?

その心 永遠に閉ざしたまま

それでもこの胸に響く

つたないメロディ

俺自身のために歌い続ける

さわらせない……

キミは 少女なの……?



---


 ――静寂。エアコンの風すら止まる。

 残ったのは、四郎の荒い呼吸だけ。


 四郎は、ゆっくりと振り向いた。


「……F」

「はいっ!」


 沈黙。四郎は慌てて咳払いをした。


「こ、これは……新曲練習だ! 誰のことでもない!!」


 Fは無言のまま一歩前へ進み、タブレットを抱え直す。


「歌詞の『キミは少女?』――つまり少女ではない。対極、成人男性ですね」


「なっ(ʘ言ʘ╬)!?」


「『心のドアに鍵』=ガードの固い男性。

『ソファの隣』=四郎様が死守したC君の隣席。

『星を眺める』=男性の星――彦星。織姫の夫。

天帝によって別居中。つまり、社長の“推し狂い”を暗喩。」


 四郎、顔面蒼白。


「なぜだ……! なぜそこまで分かる!?」


 Fは無表情でタブレットを傾けた。

 そこには――ブレた後ろ姿のアイコン。


「これが私の推しです。十年来の相棒。

 名前を出さなくても、想いは伝わる。

 四郎様の“魂の歌”も同じ。

――想いと推し活、ぜんぶバレてます」




 四郎は完全敗北。

「……トップシークレットだ」


「もちろんです。私は推し活勢の味方(`・ω・´)ゞ」


 Fはそのまま、新たな三世帯同居案を淡々と報告。

 四郎は、デスクに突っ伏した。


(……歌も推しも、全部バレた……)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ