総支配人のひそかな愉しみ
重厚な扉が静かに開かれた。
会場はすでに花と照明で飾りつけられ、和と洋が交じり合う。
メインテーブルの背後には白梅の枝。
その下で、四郎が腕時計を見ながら声を張る。
「新郎新婦入場、三度目確認いくぞ。C、歩幅80。四乃、裾に気をつけて」
(ああ……しあわせだ。正直自分の時より楽しい(。•̀ᴗ-)✧)
四郎の目線の先には、妹・四乃。
彼女は先ほどの白無垢から、披露宴用の色打掛に着替え、赤と金糸の刺繍が、灯りの下で煌めいていた。
髪は文金高島田のまま、かんざしを変えただけ。
まるで浮世絵のように鮮やかで、どこか近寄りがたい。
(さすがは我が妹にして、仙洞館若女将――まことに着物がよく似合う^_^)
Cもそれに合わせて紋付き袴。
普段のおちゃらけ具合が中和され、衣の格でサマになる。
(うっ………(ꈍᴗꈍ)尊死………これがギャップ萌というやつか……?)
四郎は二人の立ち位置を確認しながら、表面上少し笑う。
「やはり和装は正解だったな。外資の式場ではこうはいかん。……R、映像班は動線の確認を」
Rは肩にかけたスタッフ証を気にしつつ、スクリーンの映写位置を確認する。
「でも私、本番はスピーチの人ですよね? なんで映像班……」
「何か反論が? S家の業務は、裏方を知ってこそ。お前の段取りが狂えば式全体が崩れる」
四郎の言葉は命令のようで、同時に不思議な温度があった。
完璧主義のホテル仙洞・総支配人としての顔。そしてどこか、楽しげな“演出家”の顔。
次はお色直しリハーサル。
「次の衣装は、白のウェディングドレス。R、控室でチェックだ」
(四乃の成長も、思えばあっという間……なんか急にさみしくなってきてしまったぞ……>.<)
Rは、そんな四郎の身勝手な葛藤を知りようもなく――スタッフに案内され、控室の扉を開いた。
鏡の中には、純白のドレス姿の四乃。
背中まで流れるレースのヴェールが光を受け、柔らかく揺れる。
和装のときと打って変わって、華やかで気品が漂っていた。




