表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/128

はじめまして、さようなら。

 パーテーションの向こうは、

 既に帰ったCの営業スペース。こちら側はRが間借りするアプリ開発スペース。


 RはPCの画面をじっと見つめていた。

Android版アプリは完成済み。最低限のUIテストも通過し、動作は安定している。だが、油断はできない。


クラファンは『漆黒企業』社長Aからのお恵みで

ーーどうにか100万円を達成。


しかしフルゴールの150万円には届かず、Rの胃の奥がキリリと痛む。


「……これで本当に大丈夫かな」


指先がわずかに震える。完成したアプリはある。だが、次の課題は運転資金だ。


❦ 有料APIの月額利用料


❖ 法人クラウドの維持費


✧ 想定以上のアクセスによるサーバー負荷


資金カツカツのRには、死活問題だ。

もしアクセス集中でサーバーが落ちれば、ユーザーからの信頼など、一瞬で消え失せる。


さらに地域コンテンツの権利関係も万全ではない。写真や映像の使用許可が一部未取得で、もしクレームが入れば、リリース延期や追加費用は避けられない。


会社設立時の資金は、Cの出資金とR自身の貯金。


登記費用、法人口座、PCや机などの設備費に使ったが、開発費にはほとんど使っていない。


Rの今までの積み重ねによりーーAndroid版は、ほぼテスト費用だけで完成していた。


「ふぅー……万全とは言えないけど、前進あるのみ」


Rは深呼吸をし、Android端末でアプリを起動。

画面はスムーズに動き、地元店舗の情報が見やすく表示される。


ユーザー獲得の土台はすでに整っていた。


Fによるママ友ネットワーク、別ジャンルインフルエンサーの案件。地元の口コミ、SNSの拡散、そして応援してくれたユーザーからの支援。78万円は、その結晶。


「まずはAndroid版で収益を盤石に……!iOS版は、次のステップ」


Rの決意は固い。リリースまであとわずか。

サーバー監視、権利関係の最終確認、APIの負荷テスト――不安は尽きない。

だが、これまでの努力と、支援の力を信じるしかない。


もうじき夜が来る。店内の灯りだけが、Rとアプリを静かに照らしていた



【アプリリリース初日 ― 初期反応と収益】


 眩い朝の光が、中古車販売店の窓から差し込む。Rはいつもより早く出社し、PCとスマホを机に並べた。


Android版アプリの公開ボタンを押す。

画面が切り替わり、ストアに新規登録されたアプリが表示される。緊張の一瞬ーー


数分後、通知が次々と届き始める。


ユーザーA「使いやすい!地元の穴場スポットまで載ってる❦」


ユーザーB「写真キレイ。店の雰囲気もわかる」


ユーザーC「マップが見やすい」


Fも朝から電話やチャットで進捗を確認している。

ママ友ネットワークや、SNSでの口コミが即効性を持ち、DL数は徐々に増加する。


Rはひたいを拭いながら、収益画面をチェックする。


✧ 広告表示による初日収益:わずか数千円


✦ アプリ内追加機能課金:初回DLで数件発生


❖ 将来的な法人クラウド利用料の負担は、まだ問題なし


「……一瞬ヒヤッとしたけど、何とか回ってる」


Cが傍で笑う。

「俺にはさっぱりだ」


Rは深呼吸し、画面を見つめる。ユーザーのレビューに励まされ、焦燥感は少しずつ希望に変わる。




数日後、RはCに報告した。

「へー、こうやって見るんだ? DL数、まずまずだね。広告も少しずつ回転してる」


Rはうなずく。

「あとね、Fが言ってたママ友口コミ、想像以上に効いてるよ」


Rは画面をスクロールし、ユーザーのレビューを確認して見せた。

「操作しやすい」「地元情報が役立つ」「エモい写真で散歩気分が味わえる」

レビューの★の数に一喜一憂しつつ、確かな手応えを感じる。





「やっぱそのうち、iOS版も出すの?」

Cの笑いながらの軽い質問。こやつめ。簡単に言ってくれるーーそう思いながらも、Rは深く頷いた。


いずれはiOS版をリリースしたい。

そしたら次はーーRの開発環境や、Cの仕事の邪魔をしないためにもーーこうやっていつまでも、中古車販売店に、間借りする訳にはいかない。


オフィス移転なんて、まだ遠い夢の話だが。


まずはAndroid版で盤石な土台を築くことが最優先。


FもCも帰った後の中古車販売店。

Rの小さな安堵が流れた。


「なんとか、うまくいきそう……」

“はじめまして”と“さようなら”のあいだで、Rの指先は、まだかすかに震えていた。


❥ 店内の灯りだけが、Rとアプリを静かに照らしていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ