日直チワワ、がんばり給え。
Rはホワイトボードにあれこれ書き連ねながら、じいさん先生と、チワワ諸君に向かって話し掛けた。
「前提として、チワワ諸君が丸写しするAI回答自体は、テストするまで見抜けないくらいのレベルに達している」
「仮に課題時点でAI使用の回答が間違っていたとしても、私Rの○つけアプリや、ほかの先生方直々の記述○つけで、ちゃんと正解は教えられる」
「だから――あと君たちに足りないのは、復習だけ。可能であれば予習も。ここをどう解決するかってだけじゃん?」
【Scene:午前8時 オンボロクラブハウス】
曇り空。湿気で床が少し滑る。
練習前の“学習タイム”中、チワワ諸君はAIアプリをいじっている。
今日の日直チワワは、多少課題をやりつつも、手元のノートPCで全員の集中データを確認中。
Rはそれを見守りつつ、情報講師としての書類作成に追われていた。
集中力の短いチワワが声を上げる。
Rが解説する。
「このアプリ、“あと3分で集中切れ”って言ってくるんだよね。こえー、The 監視社会」
「そう見えるかもね。でも君の脳波を読んでるわけじゃない。入力した行動パターンと、心拍数の変化から推定してるだけだよ」
負けん気チワワもつぶやく。
Rは笑いながら答える。
「俺、“あと3分で集中切れ”とか言われたら、逆に粘りたくなるんだけど……負けた気がして」
「それもデータに反映されるよ。“反骨タイプ”って出る」
冷静チワワはため息。
Rは共感する。
「これ、25分ごとに“休憩しろ”って止めてほしい。
集中してるときに切られる感じ」
「わかる、それが一番よくあるパターン。でも脳は『集中してる』ときほど、クールダウンを入れると記憶が安定する。
“疲れ切る前に休む”のが、本当の時間管理だよ」
少し沈黙が流れる。
チワワ諸君も調子を掴んできたようだ。
そこに、全員のスマホが同時に震えた。
AIアプリの共通音声だ。
《残り集中時間:2分です。水分を取りましょう》
じいさん先生が生徒たちにドリンクを配る。
「……はいはい、スポドリ一丁おまち」
熱中症防止も含めて、これは“倒れないための設計”だ。
酷暑の夏――“根性論”は過去のもの。命を守る設計が必要だ。
AIによる管理と、人間の自己決定権とは何だろうか。
AIは“鏡”であり、人間は管理される側ではない。
決して万能ではない。
あなた自身の知識やひらめきを駆使しなければ、AIは時に、もの忘れ老人よりひどい誤回答や珍回答をまくし立て、苛立たせる。
しかし、AIは画面の向こうで反応するだけで、あなたを傷つける腕や目はない。
ニヒルなチワワがあることに気づいた。
「へぇ……じゃあAIに“今日サボる”って言ったら、どうなるんだろう」
《いいですね。それでは“明日”立て直しましょう。
あなたが“倒れない”ことが一番ですから》
「マジで? なんかまるで……発達支援?」
《その通りです。
“発達支援”とは、本来最初から“全員向け”に設計されている。それがユニバーサルデザイン教育です》
「そこ!❌️ 今日は課題しないなら、先に体育館準備しときな。日直指示だから、拒否権なし」
Rはじいさん先生、チワワ諸君と相談のうえ、課題時間のリーダーとして、交代制の日直当番を導入。
部員の誰かに負担が偏らず、交代で指導役を担うことで自己規律を高める。
立場が人を育てるとは、よく言ったものだ。




