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C店長の営業トーク


 キャリア学習の時間というのは、当事者高校生からすれば――どこか的はずれ、かつ陰鬱だろうな。Rは視聴覚室で機材を調整しながら、教え子たちをちらりと眺めた。死ぬほど退屈そうな高校生たちが、死んだ魚の目をしてずらりと席に並んでいる。


教壇側でCが、軽く笑いながら手を挙げる。

「なんか理事長に頼まれちゃった! 俺今日は営業に来ただけだからさぁ~気楽に聞いて。寝ててもいいよ!!」


あまりに型破りな発言で、視線が一気に前方へ集まる。


室内は一瞬クスクスと笑いに包まれる。


Cは教壇に置かれたスタンドから、マイクを外して手に取る。


「……皆さんの夢は、叶いません」

声が静かに落ち、教室の空気が変わった。

RはCの隣の教壇席で、目を丸くして聞いている。


「勉強してないから? 努力が足りないから? それとも単純にお金がないから? ――いいえ、そういう話ではありません」

生徒たちはざわりと息を呑む。Cは急に教壇を立ち、一歩前に出て、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「夢と聞いて、今、何を思い浮かべましたか? たいていは、職業ですよね。では、なぜアナタは、それになりたいのでしょうか?」


後ろの生徒が手を上げる。「有名になりたいから?」

Cは微笑みながら首を傾げる。「なるほど。それもあります。でも根本は、“なりたい自分像”です。職業は、たまたまその自分像に結びついただけに過ぎません」


Rは小さくうなずく。Cの言葉は、頭の中のもやもやを整理するように響く。


「職業は、何であれ、生活できるお金を得るための手段です。それ以外は、趣味です。経済学でいう、需要と供給――そのバランス次第で、入れ替わるだけです」


視聴覚室の窓から差し込む光の中、Cの言葉は真剣そのものだ。Rは目をそらさず見つめる。

“職業に夢を見出すこと”の危うさ、そしてかつて手段と目的を混同していたR自身への、静かな警告のように響いた。


「数には限りがあります。理想と現実には、ギャップもあります。職業は、他人ありきだからです」


生徒の一人が、息を呑む。


「では、どうすれば夢は叶うのか?」

Cはゆっくりと間を置く。「簡単です。職業に夢を見出すのをやめること。割り切って趣味のために働け、という話ではありません」


「まずは、選択肢の幅を広げてください。そして時々、少し立ち止まって考えてみてください。自分が本当に好きなこと、仲のいい友人、もしいれば愛する人、家族との関係――夢は職業ではありません。職業は手段です。手段と目的をごちゃまぜにしてはいけません」


ある生徒は静かに頷く。Rも胸の奥で何かが腑に落ちる感覚を覚えた。Rは息を吐く。長い間、何かを見失っていた気がする。

それは肩書きでも成功でもない。自分が笑って暮らせる時間、自分が大切にしたい人間関係――それこそが、夢の本体だった。


「もっと大きく、全体的な流れこそが夢です。将来自分が笑って楽しく暮らせるような――そんな生活、そのものです」


Cの声は部屋の隅々まで届き、聞き手たちになにかは残した。

そして最後に、Cは軽やかに笑う。


「だから誰か、左ハンドルEV買って~!!」


視聴覚室は笑いに包まれ、生徒たちの肩の力がふっと抜けた。



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