Rの挑戦はつづく
Rは学校の情報準備室でも、自作の○つけアプリを操作しながら、机の上に広げた○つけ印刷済みの小テスト用紙を眺めていた。
「よし、生徒の悪筆でも達筆でもいい感じ…! これで3年主任に、ごまをスリスリ……」
小さくつぶやきながら、学校から貸与されたタブレットの画面を、指でタップする。残りのテスト回答のデータも、瞬時に手書き文字を読み取り、正解と照らし合わせる。間違いがあれば「再確認」フラグを立てる仕組み。便利すぎて、少し笑みがこぼれる。
そこへ、同じく情報担当のじいさん先生がやってきた。Rは意気揚々と○つけアプリを説明する。
「いや、僕はいいよ。ちゃんと見てあげたいんだ。ずっと手書きで慣れっこだしね。それに老眼だから、画面ばっかり見てると目が疲れるのさ」
――そっかー、そういう意見もあるよね。Rはうなずく。
じいさん先生は、情報教諭にあるまじき手書き派だ。アプリを否定するわけではないが、きっと今後も使わないだろう。
「いいと思います。結局は、自分の方法がいちばんですし」とR。
昼休みの職員室で、Rはさっそく、3年主任にお伺いを立てた。彼女は学校の裏ボス的存在であり、教頭並みの影響力を持つからだ。
「あら~、助かります~! 本紙はこちらで保管? 生徒には書き換え防止の○つけレイヤー版コピーを渡すんだ。ふーん、まあ悪くないんじゃないですか、R先生」
主任は画面を覗き込み、にやりと笑った。
「じゃ、記述もこの調子で、生徒が課題で丸写ししたAI回答を、ぱぱっと検出できたりして~」
Rの手が止まる。思わず肩をすくめて言う。
「それは無理難題ですよ…!」
午後、情報の授業。Rは生徒たちを、学校サーバー上の模擬SNSにアクセスさせた。
さあ、生徒たちよ! 存分に学ぶがいい! これで炎上の恐ろしさを身を持って体感――
「きゃー!! バズってる! 炎上商法サイコー!! これで私も有名人?」
黄色い歓声を上げたのは、Rが苦手とする、ちゃん付け生徒だ。彼女は画面越しの模擬SNSを眺め、単純に“炎上=バズ”と解釈して、自己承認欲求を満たしている。
Rは思わず頭を抱えた。
「ちょ、ちょっと……炎上って、インフルエンサーになることじゃないからね?」




