救いの糸
休日のアスレチック公園。
抱っこしたまま、長い長いすべり台を一気にすべりおりる親子――Fも息子も大はしゃぎだ。
「もう一回すべるー」
「いいよ! 行こっか!」
ふたりは笑いながら林道を登っていく。途中、下は年少くらい、上は高校生くらいの子どもたちが、木登りや虫取りに夢中になっていた。
枝の間を駆け回る姿、ざわめく葉の音、弾む歓声。
「ぼくもやりたい!」
息子が目を輝かせる。
Fは一瞬ためらったが、最年長の高校生が声をかけてきた。
「こんにちは! 大丈夫ですよ。習い事とかじゃないんで。ね、君も来て一緒に遊ぼ?」
Fは少し考えてから、そっと手を離した。
息子は嬉しそうに子どもたちの輪へと走り、木の幹に手をかけて慎重に枝を登る。
Fは下から見守り、手を差し伸べる準備をする。
地面では、小学生くらいの女の子たちが虫かごや網を持ち、落ち葉のあいだからコガネムシやバッタを探していた。
息子も木から降りると、網を貸してもらい、小さな手で慎重に虫を捕まえる。
捕まえたバッタを掲げると、周りの子どもたちが「すごーい!」と声を上げ、笑い声が広がった。
#R&M
少し離れた林道では、RとMがのんびりとハイキングをしていた。
木漏れ日の下、Rは道端で何か動くたびに声を上げる。
「ぎゃっ、ムリムリムリ……M部長、よく触れますね」
「なにが? あ、ほら。かわいいカエル」
Mは屈んでデジカメを構える。Rはその場で固まる。
「後で図鑑で調べよっと!」
#F
Fが息子と一緒に自然教室の輪に混ざっていると、引率の保育士が声をかけてきた。
「今日はおひとりですか? 旦那さんはお仕事?」
Fは少し息をつき、無難な笑顔を作る。
「いえ、夫とは別れてまして……」
「そうなんですね。じゃあ、お仕事がお休みで?」
「いえ、実はまだ仕事も見つからなくて……でも、こうして一緒に、外で遊べるだけありがたいです」
保育士はやわらかく頷き、少し間を置いて話す。
「大変ですよね。……私もそうでした。息子たちとここに通いながら勉強して、保育士資格を取ったんです」
「え!」
保育士は笑みを浮かべる。
「こういう場所があることこそ、子どもにとっても、保護者にとっても救いになるんですよ」
Fは虫取り網を持つ息子の背中を見つめた。
夕暮れが近づき、子どもたちの笑い声が木々に反響する。
少し勇気を出して、Fは尋ねる。
「あの……それって、他の資格でもいいんですか?」
保育士は目を瞬かせ、にこりと笑った。
「え? 逆になぜダメなんです?」




