すべてはアイを証明するために、我が弟と共に
「っらっしゃいやせー!」
オーライ、オーライ――表から大声の、短縮挨拶と車誘導が聞こえた。
――ここはガソリンスタンドか?
オフロード沿いに店を構えた中古車販売店。その少々狭い事務所にCはいた。彼が見ていたのは、官公庁オークション。どこかの誰かが強制執行された、掘り出し物のレトロ車を狙ってにらめっこだ。
先ほどの声の主は整備士K。Cの弟であり、普段は別の町工場に勤務しているが、焼肉と引き換えにタイヤ交換などを手伝いに来る。
飛び込み客か?
Cは手帳を開いて頁をめくったが、やはり今日は何も予約は入っていない。カラカラと硝子の引き戸が開いた。
「やあ、Cくん」
「お疲れ様です。Yさん、なにかございましたか?」
「いや、ちょっとそこまで来たものだから」
CはYにソファをすすめ、奥のキッチンに引っ込むと、急いでドリップコーヒーを淹れてサーブした。
都会からFIREし、悠々自適スローライフを送るYは砂糖を好まず、植物油脂も否定派。挙句の果てにカフェオレを好んだ。さすがにホットミルクはレンチン製だ。
「嗚呼、いいねえ。やっぱり君の珈琲が一番だ」
――うちは純喫茶か?
こういうムダなサービス精神に嫌気が差して辞めたのに。
結局売上のため、Cは高級自動車ディーラー時代と同じことを繰り返している。
「恐れ入ります」
「やっぱりカフェオレはホットに限るよ。フランス式さ――行ったことはないけれど」
「フランス……そういえば昔、モンサンミッシェルのドキュメンタリーを見たんです。そこの宿屋では変わったオムレツを出していて。卵を100ぺんかき混ぜてバターで焼くんですって。真似して作ってみたら面白かったなあ」
「表に居る弟くんにも食べさせてあげたのかい?」
「そうですね。喜んで食ってました。でもモンサンミッシェルのレビューでは、泡だ。泡でしかない。って観光客ばっかりですね」
Yは珈琲を飲み終えるとタクシーを呼び、乗ってきた車のガラコを依頼して帰っていった。
「K! 洗車手伝って!」




