地獄は最初から善意で敷き詰められている
むかしから実家とは折り合いが悪かった。通わされた専門学校を出て、逃げるように就職し、職場結婚。長女の妊娠が分かった時は、ほんとうに嬉しかった。あの人も喜んでくれた。
「大事な身体だろう。キミの分まで稼ぐから、家でゆっくりしていなよ。ご飯だけ作ってくれればいいから」
実際はそれ以外も全部だったけど……専業主婦なんだし、しょうがないのかな? やっぱそういうもの?
無事長女が産まれた。とってもかわいい。この子の為なら、なんだってしてあげたい。でも、夜泣きはしんどいな。あの人は手伝わないし、育児なんて初めてだし……頼んだら義母召喚。なにをやってもダメ出しされる。
やっと長女も3歳になって、幼稚園に通い出した。でも送迎や、布バッグとかのお裁縫、毎日のお弁当づくりはしんどい。スモックもすぐ泥まみれ。ねえ、どうやり繰りしているの? 親しくなったママ友の返事は、実家の全面バックアップだった。
「な、やっぱ兄弟が居た方がいいだろ? 正常な発達にもよくないって」
そうかな? 幼稚園では一人っ子なんて珍しくもないけど……でもさみしいのは事実かも、長女も妹が居たらうれしいよね。
無事次女も産まれた。あの人はちょっと残念そう。義母からチクリと、一姫二太郎って知ってる?と嫌味。そっか……言われなかったけど、あの人はどちらかといえば息子が欲しかったんだね。
長女はお姉ちゃん扱いを嫌がって、赤ちゃん返りが始まってしまった。
娘二人とあの人の世話で、身だしなみはヨレヨレ。いつもきちんとしてるママ友たちには、尊敬しかない。でも、姉妹ってやっぱりいいな。最近はケンカしてもすぐ仲直り。
長女がようやく小学校。馴染んでくれてよかった。環境変化が大きすぎて、ぐずって不登校気味になる子も多いらしいし。
「もう一人くらいいいだろう。もっと残業増やして稼ぐから」
残業、残業って……今でさえ手伝ってくれないのに? でも扶養されてるし文句は言いづらい。長女は小学生だし、次女ももう少し。なら、あとちょっとの辛抱で、みんな上手くいくはず。
待望の長男に、義母はご満悦。ひっきりなしに顔を出すのは勘弁してほしい。でも男の子の育児ってほんとうに大変。お姉ちゃん達とは全然違う。
息つく暇もなかったけど、長男も晴れて六年生。チャンネル争いに敗れ、お姉ちゃん達の大好きなバラエティクイズ番組を見ながらおしゃべり。よかった。ほんとうにいい子達で助かる。そうだ!
「中学に上がったら、パートに出ようかな」




