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乙女妄想を守護りたい

 病院の廊下を、四郎は足早に進んだ。

 靴音が白い床に響き、消毒液の匂いが鼻を突く。


 病室のドアを押し開けると、蛍光灯の光が白く揺れ、Cがベッドに腰掛けていた。


 いつもと違って線が細く、か弱い姿。

 四郎の心が――いや、全身が震えた。


(尊い……尊いぞ……! 生き様すら全力で美しい……! なんたる甘美……!)


その瞬間、四郎の頭の中で暴走する想像――


(くっ……もし、コイツが女だったら……!

 即、離婚して再婚していた……!

 ああ、こんな危険な存在を目の前にして……理性が試される……! ギリリ……!)


四郎は息を整えようと顔を動かすが、視線が、Cの反抗的な笑みに絡まる。

その笑みが、まるで全てを知っているかのように、こちらを捉える。


(……くそ、揺れる……心が、理性が揺れる……

 だが、目の前で推しが全力で生きてる……

 この生き様が、心に突き刺さる……尊い……!

 ああ……この存在、逃すはずがない……!)


四郎の喉奥が熱くなる。

指先はわずかに震え、背筋は無意識に伸びる。

四郎の理性は全力で「平静を保て」と命じるが、心は推し活暴走中。


(もし女だったら……いや、想像するだけで血が熱くなる……

 S家の全身全霊をもってしても、この存在を守らねば……!

 地球の果てでも、絶対に逃さない……!(ಠ_ಠ)✨)


 四郎の目の奥で冷たく光る理性と、内側で燃え滾る妄想。

 そのギャップが、病室の空気を静かに震わせる。



 Cの視線は揺れず、四乃も医師も、静かな圧を感じ取る。

 まずCが口を開いた。


「これでわかっただろ?笑

 俺は異常なんだよ! そんなに妹を不幸にしたいのか?

 とんでもないおにいさまだ!」


四郎は一歩踏み出し、声を張る。


「S家はたかが錯乱ごときで離婚は認めない。以上だ」


四乃はベッド脇の椅子から、涙をこらえきれずに立ち上がる。

号泣しながら嗚咽混じりに、ほとんど叫びながら言った。


「お兄様! もうどうしたらいいの…? 私のせいでCさんが……」


Cは肩をすくめる。


「なんでそこまで俺にこだわる? 別にいいよ。四郎様が認めようが認めまいが」


Cは四乃に視線を移す。

そして優しげな声で、四乃に語りかける。


「四乃さん、明日一緒に市役所に来てくれませんか?」


四乃は涙を拭いながら答える。


「分かりました…何時に迎えに来ましょうか?」


四郎の顔が引きつる。


「馬鹿な真似をするな! 一族の恥を晒したいのか?」


Cが笑みを深める。そして声を張り上げる。


「うるさい! 家庭なんか紙ペラ1枚で即終わり! 協議離婚なんてすぐ!

 なんて簡単な世の中だ、まさか自分が離婚届に感謝する日が来るとはね」


四郎はベッドに近づき、静かに告げる。


「これはしばらく入院だな、なにも気にせずゆっくり休め」


「どこも悪くないのに? 医者の話を聞いていなかったのか?

 ……ああ、まるで現代の座敷牢だ……さすがはS家だなー◦o°. ( ̄‿ ̄)☞☜ .°o◦」


Cは無表情で乾いた拍手。病室の空気が、その異様さに張り詰める。


四郎は、少し屈んだ姿勢でCの肩に手を置き、声を低くする。


「勘違いするなよ? これは個人的要望だ。

 ……家族を守りたい。そこには当然、オマエも含まれる」


 病室の空気は静まり返り、LEDの光が淡く揺れる。




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