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義妹に虐められていても婚約者である彼さえ味方でいてくれれば大丈夫、そう思っていたのですが……。  作者: 四季


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8話「夜の祈り」

 結局、ディコラールに宿を取ってもらうこととなった。


 取り敢えず二泊分。

 ひとまずは安心。

 思わぬ形で夜を明かす場所を手に入れることとなったことには驚いたけれど、でも、助かったことは紛れもない事実である。


 家族の顔はしばらく見たくない――それが胸に在る強い思いだから。


 不快な存在から離れられる、というだけで、今はもう十分幸せなのだ。


 別れしな。

 彼は意外な提案をしてくれる。


「よければ明日も会いませんか?」


 想定していなかった言葉をかけられた私は「え」と呟くようにこぼすことしかできなかった。


「ああ、別に、変な意味ではないですよ。今後のことについて一緒に考えられたらな、と」


 ディコラールはいつも優しくしてくれる。けれどもだからこそ私には彼がよく分からない時があるのだ。どうして彼はこんなに優しくしてくれるのだろう、という疑問は、常に私の心のすみに残り続けている。


「そんな……悪いです、迷惑じゃないですか」

「迷惑じゃないですよ」

「そう、でしょうか……」

「もちろん、マリーさんがよければ、ですから。無理にとは言いません。けれど、孤独に戦われるよりは誰かと共に戦われる方が良いのではと」


 でも、それでも、人は進まなくてはならない。


「……そうですね。はい。お気遣いありがとうございます、では……明日、よろしくお願いします」


 だから私は彼に頼ることにした。


 ……こんなことばかりだな、最近の私。


 自分の情けなさに呆れもするけれど。それでも自力でできることには限りがあるから。生きるため、そして、より良い道を選ぶためには、時に他者に頼ることも必要ではあるのだろう。


「では、また明日!」


 ディコラールは笑顔で去っていった。




 今夜泊まる部屋に入る。


 周りには誰もいない。

 静けさに包まれている。


 こんなことになるとは思わなかったけれど、最悪の展開というわけではない。


 むしろ良い展開ではないだろうか。

 なんせ味方になってくれそうな人が現れたのだから。


 ディコラールのことを本当に信じて良いかはまだ分からない。

 自分の中で明確な答えはまだ出ていない。

 が、力を借りれるのなら借りておくべきだろう――そうすればきっと私一人ではできないことだってできるから。


 道を進むということは時に思い悩むことでもある。


 どう進めば良いのか。

 どう選んでゆけば良いのか。


 敷かれたレールの通り進むのでないとなれば、悩みなどいくらでも生まれてくるものだ。


 でも今は、それも含めてすべてを受け入れて進んでゆきたい。


「明るい未来が待っていますように」


 窓の外の夜空を見上げて祈る。


「どうか……神様、幸せを与えてください」

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