25話「二人の道を真っ直ぐに」
高級品の紅茶はとても美味しかった。
重厚感のある味わいは飲み手の心を掴んで離さない。
一口、また一口、と、ついティーカップへと口を運んでしまう。
上質なシーツの上に寝転ぶように。
贅沢な入浴剤を湯船に注いで浸かるかのように。
贅沢さと共に過ごす時間というのは大変偉大なものである。
もちろん、毎日そうではなくていい。そんなことは望まない。毎日贅沢したいなんて言ったらあまりにも欲張りだから。それに、たまにだからより一層強く幸福を感じられる、という側面だってあるだろう。それゆえ日常的にこういった贅沢をしようとは思わないのだけれど、同時に、たまにはこういうのもいいな、と思いはした。
けれどもひとりぼっちではその魅力も薄れてしまうというものだろう。
愛しい人がいて。
寄り添ってくれる相手がいて。
それでこそ、たまにする贅沢が輝くのだ。
……多分。
「紅茶、気に入ってもらえたようで良かったです」
「とても美味しいです……!」
「マリーさんのお好みに合ったようで何より、それが一番です」
そんな感じで祝福のお茶会はあっという間に過ぎ去っていったのだった。
その後ディコラールの両親にこのことを報告することとなった。
こちらの親は無関係なので向こうの親だけへの報告で話を進められそうでありがたい。
とはいえやはり一応緊張はした。いくら知っている人で同じ家に住んでいる人であるとしても、重要な決定を伝えるとなるとさすがに身体が強張ってしまう。
ただ隣にいる彼が寄り添い支えてくれたので大きな失敗はせずに済んだ。
ディコラールの父親は体調が悪いこともあり控えめな反応だった。が、反対はしなかったし嫌そうな顔をしてくるといったこともなかった。基本的には前向きな反応であった。
そして母親。彼女は、私が想像していたよりも、ずっと分かりやすく喜んでくれた。息子が結ばれる相手を決めた、という事実は、きっといろんな感情を生むだろうに。それなのに彼女は大変前向きな反応をしてくれた。日頃は冷静な彼女が喜びを露わにするところを見られたのは意外なことだった。だが良い意味である。良い意味での、意外、なのだ。
「マリーさん、これからもよろしくお願いしますね」
こうしてまた新たな物語が始まっていく。
「こちらこそ。よろしくお願いします。いつまでも仲良しでいてください」
悲しみを、苦しみを、そのすべてを越えて。
「「もちろん!」」
私たちは歩んでゆく。
二人の道を真っ直ぐに。
◆終わり◆




