23話「心は決まった」
あれから色々考えて、心は決まった。
もう引き返すことはない。
そう覚悟を決めて。
そこまで至れたならば後はもう突き進むのみだろう。
なので取り敢えずディコラールのところへ行ってみた。
「ディコラールさん、お話があります」
朝食後、自室へ戻っていたディコラールのもとへ向かい、そんな風に言ってみる。
緊張して変な汗が出てきた。
ただそれでも下がることはできない。
ここで折れたら、今日まで何をしてきたのか、という話になってしまう。思考してきた時間も、様々な感情を抱えていた時間も、すべてが無駄になる。そんなことは避けたい。
「あ、マリーさん」
「今少し良いでしょうか」
「大丈夫ですよ。時間ありますし。……お話なら談話室にでも行きますか?」
だから進むしかない。
「そんな。手間では」
「もし遠慮しているのなら、それは必要のないことです」
「そうでしょうか……」
「マリーさんはいつもそんな感じですよね。でもいいんですよ。頼れる時は頼るべきだし、人生時には甘えも必要です」
だから勇気を出すしかない。
「では行きましょうか、談話室へ」
「……はい」
こうして私たち二人は部屋を移動することとなった。
廊下を歩いている途中、一人のメイドとすれ違う。
そのメイドは「ディコラール様、どちらへ?」と尋ねてくる。それに対してディコラールは「談話室へ」とさらりと答えた。
会話はあっさりと終わる。
メイドはそれ以上話を聞こうとはしなかった。
――いよいよその時が来る。
「ディコラールさんと共に生きていきたい、そう思っています」
一息で、はっきりと、決めた言葉を発する。
「貴方が嫌でないなら私は貴方と共にありたいです」
ディコラールは驚いたような目をしていた。
「前置きもなくいきなりこんなことを言ってすみません」
「いえ」
「本当はもっと気の利いたことを言うべきなのだと思います。でも私にはそういう器用さはありませんでした。なので敢えて余計なことは言わないことにしました」




