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義妹に虐められていても婚約者である彼さえ味方でいてくれれば大丈夫、そう思っていたのですが……。  作者: 四季


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13話「人生の新章へ」

 当面はこの当選金で生きてゆくことにした。


 ……といってもありとあらゆることを一人でやってのけるというのもきついものがある。


 なので私はディコラールの家へ行くことにしたのだった。


 彼とは特別な関係ではない。それは理解している。私たちは特別な二人ではないし、ただの友人。けれども、ただの友人でありながらもそれ以上の繋がりを持った友人と言えるだろう。


 だからこそやや重めのことでも頼んでみることができた。


 お願いする時はかなり緊張した。けれども彼は快く頷いてくれて。戸惑いながらも真っ直ぐに向き合って温かく接してくれる彼にもうとにかく凄く癒された。


「まさかマリーさんと暮らすことになるなんて思いませんでした」

「無理を言ってごめんなさい」

「いえいえ! いいんですよ! 何も、嫌だと言っているわけではないですから。むしろお力になれるのなら大歓迎ですよ!」


 これで何とか実家へ戻らずに済みそうだ。


「……ありがとうございます、本当に」


 最悪の展開は実家へ戻るしかなくなる展開だろう。そう考えれば、その展開から逃れられるだけで幸運の極みというもの。

 もし多少嫌なことがあったとしても、あの暗黒の場所へ戻るよりずっと良いと思えるから、耐えられる。耐える自信がある。

 もちろん、嫌なことが何もなければそれはそれで穏やかな心でいられるわけだし。


「急に女性を連れて帰ったら親にびっくりされそうですけどね……」


 ディコラールは苦笑しつつ言う。


「やはり迷惑でしょうか」

「いえ」


 予定通りの宿泊を終え、迎えに来てくれたディコラールと共に宿を出る。


「迷惑でしたらすみません。ご両親には私から謝ります。できる限り誠実に対応するつもりです。必要であればご両親への説明も全力でします」

「落ち着いて落ち着いて。大丈夫ですよ。僕の親は悪魔じゃないですから」

「驚かせてしまうと申し訳なくて……」

「まぁびっくりはするかもですけど、でも、それはマリーさんへの悪意があってというわけではないですから」


 ここからまた新しい物語が始まってゆく。


 人生の新章の幕開けだ。



 ◆



「おい! ロロルレニア!」

「何よ急に叫んで! うっるさい! 落ち着いて喋りなさいよっ」

「何だその口の利き方はッ!!」

「それはこっちのセリフ。あたしに対して偉そうな物言いサイテーよ。分かってんの?」


 マリーを傷つけてまで隣り合うことを望んだガインスとロロルレニアだったがその関係はあっという間に負の方向へと傾き始めた。


 そもそも秘密ゆえの楽しさから生まれた関係だ。


 すべての根底にあるのは秘められた関わりであるからこその特別感――なのでそれがなくなってしまえば基礎部分から壊されることとなってしまうのである。


「誰に向かって言ってんのよ、おっさん!」

「はあ!?」

「あ、の、ね! はあ、とか言ってんじゃないわよ! あたしよ? 魅力的なロロルレニアよ? その隣にいたいなら、そんな生意気な言葉二度と吐かないでちょうだい!」

「何だと!? あんまふざけんなよ! お前なんか見た目だけの馬鹿みたいな空っぽ女だろが!」


 ロロルレニアはパンチを放った。

 鋭い拳が目の前の男の左頬に命中する。


「ぐっふぉえ!!」


 ガインスは殴られたての頬を押さえて倒れ込んだ。


「う、うぐ……やり、やがった、な……くそ、女が……」

「そもそも弱いのよ! 男のくせに! あたしにも勝てないって、それ、男としてどうなの? 馬鹿ね!」


 ロロルレニアは勝ち誇ったような顔でガインスを見下す。


「ゆ、っる、さねぇ……絶対に……ぜってぇに……許さ、ねぇぞ、くそ女が……暴力に出やがって……こっちが、男で、やりずらいからって、なぁ……舐めやがって……」

「何ぶつぶつ言ってんのよ」

「許さねぇマジで……許さねぇ、ホント、に……いつか、絶対に、痛い目に遭わせてやる……許さねぇ、ぞ、許さねぇ、マジ、で……許さねぇマジで許さねぇからな……許さねぇ許さねぇ許さねぇぜってぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇぞ……泣いても、なぁ、許さねぇ……からな、マジで、泣かせてやる……から、な……泣かせて、やる……泣かせてやるッ……泣かせてやる泣かせてやる泣かせてやる……絶対に、ぜってぇに……泣かせる泣かせる泣かせる……」

「ぶつぶつ言うのキモいから」

「百倍にして、返して、やっから……覚悟、しとけ……しとけ、よ、ぜってぇ……」

「言いたいことがあるならはっきり言えば!?」


 ――直後、ガインスは急に立ち上がり、ロロルレニアの顎に頭突きした。


「ん、ぁ、びゃッ!?」


 もろに食らってしまうロロルレニア。

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