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義妹に虐められていても婚約者である彼さえ味方でいてくれれば大丈夫、そう思っていたのですが……。  作者: 四季


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10/25

10話「落とし物を探す女性に遭遇し」

 取り敢えず近くにある喫茶店に入った。

 朝一番だというのに店内には既にわりと多くのお客さんがいる。


 無事空いていた席に座れてから、私は「意外と混んでますね」と呟くように口を開く。すると向かいに座っているディコラールは「そうですね、空いているところがあって良かったです」と返してくれた。


 そしてそれぞれメニューを見始める。


 ――そんな時だった。


「すみませぇん!」


 淡い色みのワンピースをまとった女性が声を発した。


「どなたか、この付近で、宝くじ一枚を拾った方はいらっしゃいませんかぁ!?」


 女性の言葉にハッとする。


 宝くじってもしかして……さっき拾ったやつ?


「近くの宿の辺りで落としてしまったみたいなんですけどぉ! どなたか、見かけた方はいらっしゃいませんかぁ!? もしいれば教えていただきたいですぅ!」


 ……あの宝くじの持ち主?


 だとしたら、拾っておいたことを伝えなくては。


「あの」


 私は席から立ち上がる。


「はぁい」

「宝くじって……もしかして、これ……ですか?」


 差し出してみると。


「ああ! それ! それです!」


 女性は飛びつくように接近してきた。


「拾ってくださってたんですね!?」

「はい。宿の前で拾いました。それで一応拾っておいたのです」


 女性は「わああ! ありがとうございます! ありがとうございますぅ!」と大きな声を発しながら大喜び。


「ではお返ししますね」

「大丈夫ですか!?」

「もちろんです。落し物は持ち主に返すべきですから。といいますか、勝手に拾ってしまいすみませんでした」

「いえいえいえ! そんな! いいんですっ。むしろ拾ってもらえていてとっても助かりましたよぉ!」


 宝くじもきっと本来の主のもとへ帰ることができて喜んでいるだろう。


「このお礼はいつか必ずしますぅ!」

「いえいえ結構です」

「そういう問題じゃないんですよぉ! お世話になりましたからぁ、ぜぇーったい、お礼はしますっ!」


 女性は上機嫌で店から出ていった。


 ――こうして宝くじの件は解決したのだった。


「マリーさん、拾ってたんですね」

「はい」

「持ち主が見つかって良かったですね」

「本当に。そう思います」


 こんな展開が待っているとは欠片ほども想像していなかったけれど、持ち主に返すことができて良かったとは思う。


 でも……こういう運命なのなら、あの占い師が言っていたことの意味は一体何だったのだろう?


 拾った宝くじが当たる、というわけではなかったようだし。


「注文しましょうか、マリーさん」

「あ、はい。遅くなってすみません。そうしましょう」


 それから私たちはそれぞれ希望するメニューを注文した。


「ではこれからについて話しましょうか」

「そうですね」

「まず何から考えるべきか……」


 今は平穏を手に入れられている。

 心から生きる幸せを感じられている。


 だがそれは束の間のものでしかない。


 この穏やかな時間はいずれ終わる。


 爽やかな朝も、彼と過ごす時間も、すべて永遠のものではない。


「ディコラールさん、本当に大丈夫ですか?」

「え」

「その……私の人生に巻き込むみたいで、少し、申し訳ないのですが」


 言えば、彼はふっと笑みをこぼした。


「そういうことを言うのはもうやめてください」


 言葉自体は厳しさもあるものだが、声の質は優しげである。


「遠慮は要りません」


 彼ははっきりとそう言いきった。


「マリーさん、遠慮せず何でも話してください。そして頼ってください。今の貴女に一番必要なのは他者に頼る勇気です」

「そう……ですね、ありがとうございます」

「僕はマリーさんに不幸になってほしくない。だから協力するんです。貴女には辛い思いをしたままで終わってほしくないから」

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― 新着の感想 ―
>拾った宝くじが当たる、というわけではなかったようだし。 同じことを感じました(笑)。 頼る勇気、難しいですよね……。
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