2話 影を重ねて
週明けの月曜日
俺達の学校に転校生がやってきた。
「関西の方から来ました、佐々木叶です。よろしくお願いします。」
教卓の前に立った女子生徒が自己紹介をする。
すぐに拍手が起こり、
それと同時に、みんなが喋りだす。
「じゃあ、佐々木の席はあそこだから。みんな仲良くな」
そう言うと担任は教室を出ていく。
佐々木さんが席に付くとみんな一斉に話しかける。
関西って言ってたけどどこ?とか、関西弁じゃないね。とか
離れたこの席からでも質問の内容が聞こえてくる。
「転校生だってよ」
前の席の健太が話しかけてくる。
「興味ない、健太は話しかけなくていいのか?」
俺は健太に言う。
佐々木さんの容姿は普通にいい
可愛い子に目がない健太ならすぐにでも話しかけに行くかと思ったのだが。
「ん〜、今はな〜」
健太が佐々木さんの方を見ながら言う。
俺はそちらを見るまでもなく察する。
おそらく、人が多くて困っているんだろう。
「そういえばさ〜」
健太が話し出し、佐々木さんの話題は終わる。
まもなく、授業開始のチャイムが鳴り
クラスの全員が自分の席に座ると、担当教諭がやってきて授業が始まった。
〜〜〜
放課後、授業が終わった後に俺は図書室へと向かっている。
俺は読書が好きだからだ。
面白い本を探そうと、図書室に寄ることにしたのだ.
図書室に入ると、受付以外に人は居なかった。
俺は、本を探す前に宿題があることを思い出す。
面倒くさいが、先に宿題を始めることにした。
俺の文字を書く音だけが響く。
もう終盤にも差し掛かろうかというところ
中学では冬葉と図書室で勉強したことを思い出した。
「ッ!!集中しないと…」
俺はもう気合を入れ直し、宿題の続きを始める。
ガララッ
その時、図書室の扉が開く。
入口を見ると、佐々木さんが入ってくるところだった。
佐々木さんはそのまま本がたくさんあるところへ行こうとして俺を見つける。
「ッ!?」
佐々木さんは驚き、人差し指を立てて「シー」というポーズをする。
それを見て、懐かしい気持ちになる。
前にもこんな事があった。
「叶ちゃーん!!」
俺が感傷に浸っていると、一人の女子生徒が図書室に入り佐々木さんの名前を呼ぶ。
いつの間にか佐々木さんは奥へと消えていったようだ。
女子生徒は俺を見つけると近寄ってくる。
「日川、叶ちゃん見なかった?」
その女子生徒が話しかけてくる。
さっきのジェスチャーはこういうことだったか。
「いや、見てないよ」
俺は答える。
「そっかー、ありがとう」と言いながら、女子高生は帰っていった。
後ろから、佐々木さんが出てくる。
「ありがとう」
佐々木さんは俺にお礼を言うと、奥へと戻っていった。
奥の方を見ると、佐々木さんは本を漁っていた。
読書が好きなんだろうか。
『読書が好きなの?』
『うんそうだよ。』
今日はやけにあの頃の思い出がよみがえってくる。
図書室が思い出の多い場所だからだろうか
俺も宿題を終えてから、本を漁った。
あの時とは違い、俺は話しかけなかった。
…読みたい本は無かった。新しく読みたい本は見つかったのに。
……あの本は今度本屋に探しに行こう。
ここまでお読みくださりありがとうございます!
新連載2話目ということで、今回は新キャラクター・佐々木叶が登場しました。
彼女はまだ物語の中では“ただの転校生”ですが、今後、主人公の心の動きや関係性に大きく関わってくるはずです。
この先、主人公と彼女たちがどんな関係になっていくのか、ぜひ見守っていただけたら嬉しいです。
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それでは、また次回お会いしましょう。