誰がための
流血の末にたどり着いた玉座はたいして座り心地のよいものではなかった。もとより位そのものを求めていたわけではないのだからなおさらだ。眼下に居並ぶ禿げ頭を眺めるのにも飽きた。やはり己には戦場が合う。玉座など求める者にくれてやればいい──。
そう言って席を蹴った先王のおかげで国は荒れに荒れ、やがて治めるべき土地も枯れた。廃墟となった城にはやがて魔物が棲みつき、それらを治めるためやってきた魔の王は玉座を一瞥して嗤ったという。
ああ、これは人間どもにはさぞ座り心地が悪かろう。かつて好事家か組み上げた骨と皮張りの椅子が、肉と血潮を求めないはずがないのだからと。
第17回 毎月300字小説企画、お題は「椅子」でした。




