神さまの獏
さら~っと。
淡々と。
読んでくださると嬉しいです。
ぼくは神さまにつくられた。
ぼくの仕事は、いつも寝不足の神さまが少しでも眠れるようにしてあげる事。
そのためだけにぼくはいる。
神さまの寝床がぼくのいる場所。
ぼくは神さまに夢を吸い出す力を貰ったので、神さまが眠っている時に魘され始めたら、神さまのおでこに僕のおでこをくっつける。
そして神さまの夢の中に入って夢を吸い出す。
神さまが魘されていないときにもの夢の中に入ってみた。
神さまの夢にはいつも人間が出てくる。
この人間たちは不思議な生き物だ。
顔がよく動く。
怒っていたり、悲しんでいたり、喜んでいたり、楽しそうだったり、気持ちが分かって面白い。
この人間たちが見る夢はどんなものなのか知りたくなったぼくは、人間がたくさんいる街に出かける事にした。
人間たちの夢を見るのが楽しみだ。
ぼくは一人の人間に近付いて眠っている顔を覗き込んだ。
神さまが寝ている時みたいに魘されている……?
だったらぼくのお仕事だ。
その夢、魘されるほどに辛いなら吸い取ってあげるよ。
ぼくは眠っている人を見つけては、どんどん夢を吸い取っていった。
そうすれば、神さまもきっと喜んでくれるだろう。
魘されるほど苦しい夢を見なくて済むのだから。
吸い取ってあげた人はみんな、よく眠っている。
良かった。
そしてまた、魘されている人を見つけに、ぼくは移動する。
今度は女の子が泣きながら寝ているのを見つけた。
泣くということは、悲しいということ。
悲しい夢をみているの?
ぼくはおでこをくっつけて夢の中に入っていく。
あれ?
泣いていたのに、夢の中は幸せで暖かい?
女の子はお母さんとお父さんがいて楽しそう。
家族三人で笑顔でご飯を食べている。
でもこの夢は女の子にとっては辛いんだよね。
なら、ぼくがちゃんと吸い取ってあげるからね。
女の子の夢を吸い取ろうとすると、神さまが急に現れた。
「獏。その夢は吸い取ってはいけないよ……」
神さまはぼくのお仕事を止めた。
なぜ?
「その夢は彼女にとって、大事な思い出だから」
でも泣いてるよ。
「この思い出があれば、頑張って生きていくことの力になるから、吸い取ってはいけないんだ。分かっておくれ」
そうなの?
「そして、獏。もう人間の夢を吸い取りにいかないように。その人にとって大事な記憶を間違えて吸い取ってしまったら大変なことになるからね」
たいへん?
「人間は辛い出来事があっても、乗り越えていく力をもっているんだよ。大切な思い出があるだけで生きていける。だから大丈夫。彼女の強さを信じてあげて」
神さまは、人間は弱くて守らなければならないわけではないと、優しくゆったりとした口調で教えてくれる。
ぼく、まちがえた?
「すこしだけね。……獏は人間が私と同じように魘されているのを見て心配になったのだね。君は優しい。私はね、獏。君が私の夢を吸い取ってくれた時に君の優しい気配を感じていたよ。ありがとう」
神さまにありがとうって言ってもらえてぼくもうれしい。
「さぁ、私たちも帰ろう。獏。私と一緒に眠ろう」
神さまはそう言って、ぼくに微笑んでくれた。
獏。
どんな姿を思い浮かべましたか?
動物?人型?妖精?
私は動物のぬいぐるみが浮かんできました。