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【完結】検察審査会の人々  作者: 鈴音あき
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検察審査会の人々3

二郡の出席者がそろったので予定通りに顔合わせが始まった。


二郡の出席者は全員で4人。


確かに少ない。


まず、局長の保科政之さんが司会進行をしてくれて、会長・副会長を選ばなければならないという。


その為には審査員・補充員のことを知ってからと、自己紹介が始まる。


最初に半年間、審査員たちのお世話をする局長や審査会職員の皆さんからしてくれた。


3か月ごとに入れ替わりをするので、職員たちは喋るのに慣れている。


テキパキと自己紹介は済まされた。


二郡の皆さんも申し合わせたように審査員の望月さんから向井さん、補充員の山城一さん、一条香穂さんが順に自分の趣味や特技を手短に話し、時には談笑を交えて三か月間よろしくと、挨拶を終えていった。


「それじゃぁ、三郡の皆さんにも自己紹介をしてもらいましょうか。高山君からな」


局長から自己紹介のバトンを渡された。


立ち上がって、全員を見渡してみる。


本当に、いろんな世代の人間が集まったなと実感がわいてくる。


「はい。こんにちは、高山右近といいます。寝屋川市から来ました。望月さんの次に若い、らしい23歳で、趣味は旅行です。子供の頃から親に旅行に連れて行ってもらってたこともあって、グループで行ったり。家族で行くことも楽しいですけど、回数で言うと一人旅が一番多いですね。で、現地の写真をコレクションにしてます。

それから、特技というほどのことではないんですけど、趣味が高じて時刻表の早読みが出来ます。親や友達にツアコン頼まれることもあって穴場を教えたら喜んでくれました。

これから旅行に出かける方はどうぞ俺に相談してください。

トラベルコーディネーターになる予定ですので。

いろんな人たちと知り合うのも旅先での楽しみの一つだし、美味しいものを食べるのも、遊ぶのも、リラックスするのも、どんな希望にも応えられるようなコーディネーターを目指してます。

……が、就職に失敗して、今はある企業の求職情報がでるまで浪人中です」


きっぱりと現在の自分の状況を話しておく。


「就職浪人なん? ある企業って何? そこだけ?」


向井さんが興味を持ったらしい。


「カオス旅行です……カオスだけ、なんですよね、俺の……あ、僕の第一希望。というかそこにしか行きたくない? 行かなきゃならない?」


「カオス旅行ですか」


企業名を聞いて、有馬さんが反応した。


「はい。カオス旅行です」


「私の勤めている会社ですね」


「は?」


「はい」


そう言って、有馬さんは立ち上がり、スーツの内ポケットから名刺入れを出して一枚を俺に向かって差し出してくれた。


それが凄くスマートで、名刺交換のお手本の様に見えた。


名刺を両手で受け取った。


「ええ! 本当ですか!?」


俺はこの驚きを全身で表してしまった。


「大阪支社、人事部長・有馬晴信……」


声に出して書かれている文字を読み上げた。


「よろしくね」


二ッと笑顔で一言で済ませ、さっと椅子に座りなおしてこちらを見ている。


「え、人事部長!? 凄い! 高山君カオスに入れてもらえるかも!」


望月さんがきらりと瞳を輝かせて叫んだ。


「いや、ダメですって! コネ入社はしませんから! 実力で勝負したいです! 正々堂々と入社しますよ!」


俺は慌てて皆さんにもコネを使わないと宣言する。


「そーなんや。カッコイイ」


「ははは」


「それで、今は何をしてるんや?」


「今は、居酒屋でバイトしてます。いつでも旅行に行けるように資金調達」


「居酒屋はどこの?」


自己紹介で酒が好きだと言っていた山城さんが話に乗ってきた。


「家の近くなんですけど、寝屋川の駅前の『肴夜』って店です」


「おお。知ってるで。焼き鳥のタレが旨いところや! 最近行ってないわー」


「焼き鳥のたれ?」


「そうなんですよ。あのタレだけで焼酎飲める」


「え、他にもおいしい料理あるし、居酒屋やから酒もいっぱい種類揃えてるんやけど。俺…あ、僕は木金土曜に入ってるんですけど、毎週土曜は必ず店が終わってから味見するか?って大将がおつまみや新作のメニューを食べさせてくれるし、クラフトビールも飲ませてくれる、良い店なんですよ~」


ちょっとしたスタッフの裏の情報を自慢して暴露してしまう。


「ええなぁ。店員の特権や」


「ハハハ、実はそれが目当てでバイトしてるってのもあって。料理覚えたくて行ってます。皆さん来てくださいね、旨いですから」


「よし、それじゃ三か月後の修了式の後の打ち上げは高山君のバイト先だな」


向井さんがもう三か月後の話を持ち出してきた。


「え」


「予約は今からしといてもええか?」


局長も乗り気で加わる。


「はい。もちろんです。お待ちしてます!」


店内と同じように威勢のいい返事をした。


「ところで、高山君は大阪弁がきつくないみたいやけど?」


「ああ、そうですね。うちの両親は、東京のヒトなんですよ。僕は、東京生まれの大阪育ち。大阪弁使ってるつもりなんですけど、生粋の大阪人には『変な大阪弁使うな!』って怒られるんです。……アレには困りますよ~。親と話す時は標準語で、他は大阪弁使用って感じで、無意識に使い分けているようで。で、ヘンな言葉になっているらしいんです。……妙な言葉になってますか?」


「そうか? 高山君独自の言葉でええと思うねんけど」


「だいたい大阪に住んでても京都寄りやと京都のイントネーションに近かったりするやん。尼崎は大阪やと思ってる人もいてるし? まあ、関東の人が無理やり大阪弁を喋るのは気色悪いから止めてほしいなとは個人的には思うけど。高山君の喋る関西弁は変な聞こえ方はせーへんなぁ。……なんでやろ」


「あはは……そう言ってくれると嬉しいです、ありがとうございます。……これで自己紹介終わっていいですか? ええと、これから半年間、よろしくお願いします」


軽く頭を下げて腰を下ろす。


「はい、ヨロシク。次は、有馬さん。お願いします」


局長が有馬さんに自己紹介を促した。


「はい」


ゆったりと俺の隣に座っていた有馬さんが立ち上がる。


「初めまして。守口市の有馬です。午前の説明会をすっぽかしてしまって申し訳ありませんでした。

……えー、高山君の就職したいといっているカオス旅行大阪支社の人事部長をしております。

今朝は急に部のシステムに不具合が見つかり、緊急呼び出しがあってそちらを優先させました。

去年の夏まで私は東京本社で勤めておりましたが、大阪に転勤が決まり、家族と引っ越してきました。

まだまだ言葉には不慣れで、標準語を話していると部下に冷たいといわれてしまいます。

そして、実は、本社に務めている時にも、私がまだ入社してから直ぐに補充員に選ばれて審査会の経験があります」


「えっ!?」


皆が驚いた


「もうないだろうと思っていたのですが、こちらに引っ越してきて直ぐに検察審査会の籤で選ばれたとのお知らせが届いたので驚いています。

その時は、本当に事件ばかりを扱っていて、審査員同士の交流もなかったので、かなり堅苦しい思いをしていました。一度くらいは何処かに行ったり、食べたり飲んだりしたいと思ってましたね。

あの頃の審査会は、とにかく議決するためにずっと一日中調書を読んで説明を聞いていました。……何度休みたいと思った事か。

あ、そうだ、高山君。息子から冬休みに何処かに連れていけと言われているんだが、プランを頼めるかな? 就職試験のつもりで」


いきなり指名されて俺は驚いた。

フィクションなので、有馬さんが以前に経験したような調書を読んで説明を聞くだけで議決しろだなんてことはありません。

審査員・補充員、時には事務局の職員が意見交換をしたりします。

難しい事案があるとすぐに事務局の職員が分かりやすく丁寧に説明してくれるので、法律の勉強をしていなくても構わないです。

私が審査員を経験した時には、私の発言におじさんたちの心を抉るような事もありました。

小娘(当時の私)に正論を突き付けられて落ち込む大人たち(?)に「あれ?」と思ったことがあって、会議室ではなんでも喋れる良い雰囲気がありましたよ。


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