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記念日
「よし!成功だ!」
「招き病にはかかっていないか?」
「あれが今向こうで流行りの服かしら。後で聞かないと!」
「今度は真面目そうな女子だ。期待できるぞ」
私はなぜ、長杖を持ったオッサンとオバサンに囲まれているのだろう。
受験という名の戦いを一足先に終え、読書に耽っていたのに。
直前の行動は、本を置いて目を閉じ、背を伸ばしただけ。3秒後に開けたらこれだ。さては疲れて寝落ちたか。
夢なら服くらい整えてほしい。どうして律儀に部屋着なんだ。真っ青な布地に、堂々と書かれた『桜羽中学校』の文字が映えてしまっている。
自分の服に気を取られていると、王様が来た。金の冠に深紅のマント、白い髭。絵本に描かれているいかにもな王様。
ふくよかな腹を圧迫しながら、私の前で片膝をつく。
「遠き地よりお越しになった、日昇る国の賢者様。我ら王国へ富と安寧をお与えください。」
「……その前に説明を頂けませんか?」
こうして、ひとときの夢が始まった。