セレス
馬車に揺られているとなんか眠くなってくる。うつらうつらと舟を漕いでいると停止したのか体が大きく前に倒れる。あぁ、これはいたいやろうなぁと少し覚悟するとポヨンと柔らかい感覚があった。
「あら~大丈夫ですかぁ?」
優しくゆったりとした話し声に包まれる。あとなんか柔らかいものに包まれる。
「あ、あぁすんません。寝かけてた。」
「ふふ、甘えん坊ですねぇ。」
馬車から降りて焚火をする。今日はここで野宿らしい。それはそれとして何でこの人俺の頭掴んで撫でてるの?なんで初対面なのにここまで距離近いの?ぶん殴られる覚悟してたんだけど。
「ちょっと!何くっついてるのよ!」
横から引きはがされる。ていうか80㎏くらいある俺のこと片手で引きはがすの凄いね。
「まぁまぁ、お疲れのようですし。」
「えっと・・・この人が疲れてても男の人とくっつくのダメでしょ!!」
あぁ、そっか自己紹介してないや。
「あ~・・・俺はハルヒサ。16歳。冒険者。」
「16⁉まだまだガキじゃない!」
「そうなの!?なんで冒険者に・・・」
詳しく聞いてみたところ、10歳から冒険者になれる制度なのはストリートチルドレンなどの救済らしい。基本は家業の手伝いか学校が普通らしい。そんで冒険者になるのはある程度の勉強と常識を身に着けた18歳からが多い。
「私はリリィ。19歳だよ。魔法使い。」
青く長い髪を編み込んで後ろに垂らして、ザ魔法使いみたいな恰好をしている子。可愛い。てか年上なんだ。小さいから同い年くらいかと思ってたよ。
「私はルミナ。18歳。剣士。」
軽装備の双剣使いと言ったところか。肩までくらいのオレンジ髪を二つに結んでいる。さっき俺を引きはがした子。
「私はアルナ。ヒーラーです。」
あ、うん。多分この人20超えてるな。女性が年齢言わないときは大概そう。余計なことを言わないに限る。一番スタイル良いし腰回りとか・・・
「あの、そんなに見られると恥ずかしいです・・・」
「あ、失礼。」
「今後どうするか決めてるの?」
「どこかで腰を落ち着けて、食い扶持を稼ごうかなって。」
「家族とかは?」
「あはは・・・実はいなくて。」
そういうとアルナさんが抱きしめてくる。
「あの・・・えっと?」
「こんな若いのに頑張ってますね・・・とっても偉いです。」
あぁ、ダメだ。結構頑張ってたんだけどなぁ・・・俺、この世界に味方なんていないし泣かないようにしてたんだけどなぁ。あぁいじめられたことまで思い出した。なんか涙出てきた。
「あの・・・グスッ・・・服汚れます・・・ウエッ・・・」
「あ!そうだ!私たちのパーティに入らない?」
「えっ?」
リリィさんの提案に少し動揺する。リリィさんの提案は俺にとってはありがたいんだけど・・・ルミナさん俺のことアレみたいだし・・・
「ま、良いんじゃない?アンタの戦い方見た感じうちのパーティの穴埋めになりそうだし。」
遠距離一人、回復一人、近接一人。確かに攻撃の手が足りない。
「良いですね。私たちが冒険者の心得を教えてあげます。これから一緒に頑張りましょうね!」
アルナさん。ありがたいけど落ち着いたからそろそろ離してほしい。
「明日、街に着きますのでそこで訓練しましょう。」
冒険者の街だからな。それくらいあるか。その後、食事を終えて眠りについた。
起きたときにはもう街の中だった。安心したのかぐっすり寝てしまった。というかせめて起こしてくれよ。
「あ、起きたわね。」
「うす。」
「さ、行くわよ。」
ルミナさんに腕をひかれ連れて行かれる。
「ここは?」
一軒家の前に連れてこられる。一見普通の木造建築だな。ただコピペしたみたいに同じような家が乱立しているけど看板とか装飾とかでなんとか見分けがつくな。
「今の私たちの拠点よ。アンタの部屋は二階の奥。風呂とトイレは共用。食事は当番制よ。」
「わかりました。」
取り敢えず部屋に荷物を降ろし共用のリビングに出る。
「あ、ただいまー!」
リリィさんが帰ってくる。こういう時の返答方法に困る。お帰りというべきなのか?そしたらすぐにここを家だと認識した図々しい奴だと思われそうだし、何も返さなかったら家に置いてもらってるのに不愛想なクズだと思われそうだし・・・取り敢えず会釈しとくか?そうだ、それがいい。会釈することで気付いていたし無視してないというアピ出来るし、行けるか?行けるな?
「あ・・・っす・・・」
頭を下げる。しばしの沈黙。
「ふふっ、【おかえり】でいいんですよ。もうここは君の家です。」
「あっ・・・はい。すみません。」
しばしの問答のあとにリリィさんが俺を外に連れ出そうとする。
「どこ行くんですか?」
「訓練場!魔法教えてあげる!!」
「あ、待って私も行く!」
ルミナさんが準備して出てくる。この後どうするんだろう。俺集団リンチか?
「アンタこれから私たちのパーティーに入るんだから少しでもまともに使えるようにしないとだからね。体大きいしガタイもいいからまあまあ使えると思うけど。」
「あ、そうだ。ステータス教えて!魔力量!」
あ、そうか。魔法するなら必要か。
「ステータス。」
表示された魔力量を読み上げる。
「・・・」
二人して固まっている。ステータス画面の表示がまずかった?いや、他の人もやってたし、ここの人もやってた。
「・・・すごい。レベル1なのもそうだけど、そのレベルで300の魔力・・・。魔法適正があるとされているレベル1時点の魔力量は80なの。私は多いって言われてたんだけどそれでも200だったの。」
てことは俺の魔力量は相当多いのか?
「で、結局ポジションどうするの?」
ルミナさんが話を変える。確かにパーティ単位でのチーム戦だから位置取りが重要になってくる。
・回避型タンクとアタッカーをするルミナさん。
・支援型だけど攻撃魔法も使えるリリィさん。
・替えの効かないヒーラーのアルナさん。
「俺はルミナさんとリリィさんの中間くらいで陽動する役をやろうかと。機を見て前衛に混ざることができれば・・・と。」
そうと決まればと腕を引かれ訓練場に連れ込まれる。
まずは魔法の訓練。風、土、水、雷魔法を教えてもらう。
「う~ん、雷魔法は難しいか・・・」
水と風は難なくクリアできた。土も少し手こずったけど何とか出来たけど雷魔法がどうしても不発になる。
「まあレベル上がったら適正になるときもありますし。」
「そんなことより魔法終わったらこっち来なさい。足腰立たなくしてあげるわ。」
なんかちょっとエッチな・・・
「くだらないこと考えたら足へし折るわよ。」
そう脅されて木剣を持つ。少し重いな。構えて前を見るともう眼前まで迫ってきていた。何とか反応して防ぐも矢継ぎ早に攻め入られて立て直せない。無理に立て直そうとすると体勢を崩しそうになる。
双剣使い相手に慣れてない重い剣は少し不利だった。筋力は俺のほうが強くても速度、反射、手数。すべて負けてる。このあとどうする?
一か八か・・・!!
「オラァ!!」
剣を振り上げ無理やり仰け反らせる。そのまま距離を詰める。近距離に入って体勢を立て直させない。剣を振り回しても重くて間に合わない。剣を置いて締め技に入る。一応これでも柔道の授業は受けてた。
「ちょっ!離しなさい!!この変態!」
あっ、汗で滑って締めが!
「よくもやってくれたわね・・・!!この変態!!」
「わー!待って!そこまで!」
リリィさんが止めてくれる。
「ふぅ、それよりすごいね。よくルミナの連撃を防ぎ切ったよ。」
イジメられてたからな。動体視力は上がった。動体視力は元々よかったけど殴る蹴るの暴行を避けてたらよりよくなった。
「なんとか起死回生の一手だと思ったんだけどなぁ。」
その後もルミナさんに変態だのケダモノだの言われたけど少しは仲良くなれてよかった。




