夏とラムネとキミと
下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオのコーナー
『トライアングルレッスン』に投稿したものです。
朗読してもらうためなので
小説ではないと思います…。
最後はわちゃわちゃ楽しい気持ちで読んでくれると嬉しいです!
ひろし目線で読み進めてくれるとありがたいです
(о´∀`о)
ゆいこ『おはよー!たくみ、ひろし♪
お二人にお願いがあるのー。今日の放課後買い物に付き合ってくれない?ダメかな?』
元気いっぱい、後ろから小走り気味でやってきてたくみとオレの間に割り込んできた、ゆいこ。
たくみ『買い物⤴︎何買うのゆいこ?』
ひろし『…どーせ荷物持ちだろ?』
ゆいこはたくみの方を見て言った
ゆいこ『あのね、新しく出来たスーパーでね…
私1人じゃなくて、たくみとひろしにもお手伝いお願いしたいの』
ひろし『やっぱりね、荷物持ちたなんだ、いいよ行ってあげる。』
たくみ『オレもいいよ。新しい所行ったことないし、楽しみだね』
ゆいこ『じゃあ、放課後ねー』
ゆいこはその足で友達の所へまた走って行った。
そして、放課後
いつもの場所でゆいこが先に待っていた。こちらに気づき手を振る。ちょっと不思議そうな顔で。
ひろし『ごめん、ゆいこ。たくみのやつ学級代表で委員会あるんだって。あいつ今朝忘れてたみたいでさ。終わったらくるからもう少し学校で待ってよ?』
ゆいこ『そうなの?わかったよ。たくみの事待とうか。早く終わるといいな。』
ひろし『ここじゃ暑すぎるから、ちょっと購買まで行ってみよ?』
ゆいこと並んで、購買の方へ向かう。
外は雲一つない快晴、セミが声が鳴きわたる。
ゆいこ『それにしても暑いっ…もうすぐ夏休みだねー。今年は花火大会あるのかなー』
ひろし『あるといいけど、どうして?』
ゆいこ『花火大会にね浴衣着て行きたいなぁって。たくみは何色が好きなのかなぁ、ひろし知ってる?』
ひろし『それオレに聞くの?』
ゆいこ『ご、ごめん』
気まずそうな顔でゆいこが言った。
ひろし『ったく…たくみかぁ…ピンクとかじゃない?ピンク好きだと思うよ。オレは青が好きだけど。』
ゆいこ『ピンクかぁ、ひろしは青が好きなんだね…迷っちゃうなぁ。』
ひろし『…たくみかオレで迷ってるの?』
聞こえるか聞こえないくらいの声でつぶやいた。ゆいこに聞こえていたようで、
ゆいこ『っえ』
ゆいこが驚いたような表情で急に立ち止まる。
ひろし『ウソだよ、冗談。浴衣の色だろ、迷ってるの。花火大会たくみと行きたいんだろう?』
慌てたような顔で首を横に振り、オレの隣に寄ってきたゆいこ。
図星だったんだろうな…。
そんな顔されっと困る。
ひろし『花火大会なかったらオレんちで花火やろっか?』
ゆいこ『え?』
ひろし『たくみも誘うよ。
なんだよ、浮かない顔して。ほら花火大会中止ってまだ決まってないだろ?
もしもの話だって』
ゆいこは静かに頷いて、
ゆいこ『そうだね、もし花火大会中止だったらひろしの家で花火しようねっ』
と無理に明るく答えたような気がした。
購買には似つかわしい「ラムネ」が売っていた。
祭りで馴染みの氷水のあれに入っていた。
オレがおごるよって言って3本手に取った。
氷水が冷たくて心地良かった。
隣にいたゆいこもマネして手を入れて
『気持ちいいね』って無邪気にオレの顔を覗き込むように微笑みかけたから
心臓がはち切れるかと思った。
愛想悪く『あぁそうだな』とぶっきらぼうに答えながら指先についた水滴をゆいこの顔目掛けて飛ばしてみた…
ゆいこ『ちょっと!ひろし?!やったなぁ!』
そういうと今度はオレに水をかけてきた。
手についてた水滴全部飛ばしあって遊んだ。
無邪気に笑ってるゆいこ、好きだな。
ゆいこ『ひろし、いい顔してるねっ』
心の声が聞こえてしまったかと思ってドキっとした。
ひろし『あ、そう?ありがとう』
ゆいこが楽しそうに声を出して笑っていた。
日陰を探して、非常階段の所まで来た。
相変わらず外ではセミの鳴いている声が響いていて、遠くから運動部の声がかすかに聴こえてくる。
階段の所にゆいこを座らせて、手すり側にオレは立っていた。
座ってるゆいこの目線よりオレの目線はちょっと高めだった。
青色のラムネを開けてゆいこに差し出す。
ビー玉が落ちる音が爽やかさを連れてきた。
マスクを外し、ラムネを飲むゆいこをボーッと見ていた。
ラムネと一緒に吸い込まれていきそうな、この気持ち…。
ひろし『あのさ、ゆいこ…』
ゆいこがオレの方を見たか見ないかくらいで…
たくみ『あ、いた、いたぁあ〜!ゆいこ〜!ひろし〜!』
遠くから委員会の終わった、たくみが両手を振って叫んでいた。
ゆいこ『たくみ〜』
そう言って手を振りかえすゆいこ。
たくみの強運には敵わないな。
たくみ『ここに居たのか、探したよ。つーかさ、電話出ろよ。ひろしにも、ゆいこにもかけたんだぞ?』
ひろし『それは悪かったよ』
ゆいこ『ごめんね、たくみ』
2人で慌ててスマホを確認した。
秒刻みの着信履歴に吹き出してしまった。
ひろし『ほら、お詫びじゃないけど。オレの奢り』
たくみ『ラッキー♪じゃ、いただきまーす』
たくみのビー玉もいい音を奏でて落ちていった。たくみにはピンク色のラムネ、太陽の光がたまに反射してキラキラしていた。
たくみ『ぷはぁー。サンキューひろし♪おいしいわ』
ピンク色のラムネを見て、ゆいこが言う。
ゆいこ『ラムネって色が違うけど味は同じなんだって』
たくみ『え?そうなの。じゃあゆいこの一口ちょーだいっ』
そう手を伸ばしてゆいこのラムネを取ろうとするたくみ
ゆいこ・ひろし『バッ…』
ゆいこ『バカっ、今はソーシャルディスタンスだからそう言うのダメだよっ』
顔を赤らめてたくみに言い放つゆいこ。
そんなゆいこをみて、えっ…とたくみが息を飲んでいるのがわかった。
ラムネの色を変えたのが仇となったと悟った瞬間だった。
たくみ『あ、ごめん。別にそういうつもりはなくて…そんな照れられると困るっていうか…』
ゆいこの様に顔を赤らめるたくみ…思った事を口に出せるたくみがうらやましいと思った。
オレは最後の青色のラムネを開ける前に
2人にみつからないように振った。
端的に言えば2人の空気に耐えられなくなった。
ひろし『比べたいならこれ飲んだら?たくみ』
と言いながらラムネを開けた。
炭酸が吹きこぼれる。まるで最終章の幕開けを祝うかのような…落ちて行くビー玉の音がスターターピストルの音に感じた。
たくみ『おい、ひろし!』
ゆいこ『ひ、ひろし。ラムネ!』
ラムネでベトベトになったオレの手を慌てて拭いてくれたゆいこ。
それは想像以上で、制服までダメにした。
いつからなんだろう。
いつから素直にゆいこを見られなくなったんだろう。
考えても答えはみつからないけど、
ずっと前からそうだったのかな。
ひろし『ゆいこ、ありがとう』
気づいたらハンカチを持って拭いてくれていた手を掴んでいた。
ひろし『ご、ごめん』
掴んでいた手を離す。
ゆいこ『大丈夫だよ』
ひろし『ハンカチ洗って返すね』
ゆいこ『気にしないでっ、これくらい平気だよ』
たくみ『なんだよ、見つめあっちゃって。どーした、どーした2人とも。』
たくみが茶化してきた。
ひろし・ゆいこ『バーカ、違います!』
2人ハモって答えたから、3人で笑った。
ゆいこ『今日はこのまま帰ろ!』
そう言ってカバンを持った。
オレとたくみは、少し考えて、ゆいこが帰るって言うなら…と後ろをついて行く様に3人で帰る事にした。
たくみ『いいのかよ。買い物。オレのせいか』
ひろし『どー考えてもオレだろっ』
たくみ『そうだな、お前だな。ラムネだな。』
ゆいこ『もぉ、たくみでも、ひろしのせいじゃない
よ。なんだかもう疲れちゃった。
でも晩ご飯作るからうちで食べてってね2人とも』
ひろし『いいの?』
たくみ『イェーイゆいこのお手製ぃ!
んで、今日のメニューは?』
ゆいこ『クリームシチュー』
たくみ『シチュー?暑いのに?』
ゆいこ『何か問題でも?』
たくみ『問題…ありません』
ゆいこ『わかればよろしい』
ひろし『でも何で、クリームシチュー。オレすごい好きなんだけど』
たくみ『オレだってすっっごい好きだよ』
ゆいこ『まったく何の競争よ(笑)
夏バテしないように、たまには温かいの食べてお腹いたわらないと。』
たくみ『母さんみたいだな』
ゆいこ『言ったなぁ』
ひろし『まぁ、まぁ、ゆいこ落ち着け。
いい奥さんになれるってことだ』
たくみ『はぁ〜ものはいいようだな。流石だ、ひろし』
ゆいこ『もぉ2人ともうるさい』
ひろし『ごめんなさい』
たくみ『ごめん』
ゆいこ『じゃあ罰として、作るの手伝ってね』
ひろし『玉ねぎ切るの手伝うよ
ゆいこに泣かせる訳いないし』
ゆいこ『いやいや、玉ねぎで泣くのは悲しいからじゃないよ』
ひろし『それでも、な』
たくみ『そうだな、ゆいこに涙は似合わない♪』
ゆいこ『あーもう2人ともうるさい(笑)』
いつぶりだろうこんなに楽しいの…
ずっと昔は3人並んで手を繋いで帰ってたいた事を思い出した。
いつまでも続くなんて思ってないけど
いつまでも続けばいい。
そう願う事も悪くない気がした。
もちろん長く続かない事も知っている。
オレ達はまだ大人になったつもりの子どもだ。
だから無限に広がる世界
まだ夏は始まったばかりだ。
おわり