4話 元の世界に戻してくれ
うわぁあああああああああ
全長何十メートルあるかわからないほどバカでかいムカデ。その身を包ませ、寝ているのか何かを守っているのか、こちらには気づいていないようだった。
とりあえずここから離れなければ。もう自分以外の人間はどこにもいないのかもしれない。いつ動き出すか分からない大きなムカデがいるせいで武器の回収もできない。
だが、どこに行く?このまま逃げ続けても安全な場所なんてないのでは?結局、誰かに助けを求めるという希望は捨て、しばらくは自分の身は自分で守るしかないようだ。国、政府、軍隊、そんなものはもうこの世界には存在しないのかもしれない。
とりあえず家に帰るか。
道路には車が散らばり、ある日突然人がいなくなったかのような
置き去りにされた世界が広がっていた。
自転車を押し、絶望を感じながら家に帰る途中、数々のバケモノを発見した。ゴミを漁る、トカゲと人が混じったかのような4足歩行の黒い生き物、ムカデ同様、明らかに人の何倍もある大きさのカエル、グゲェェェェと鳴き声を上げて空を飛ぶ巨大カラスなど。
この世界の生き物はどれも巨大化しており、種をミックスしたような気持ちの悪いバケモノや、前の世界では見たことのないヘンテコなバケモノもいた。
奇跡的にどのバケモノにも見つからず、家に帰ることができた俺はひとまず絶望しかない今の状況を忘れ、汗でびしょびしょになった体を休めることにした。
・・・これからどうする?
電気も水道も止まっているこの世界では家にある食料は腐りきっていた。冷凍の必要ない保存食だけを集め、バケモノの急襲に備える。
とりあえず水を確保しなければ。冷蔵庫にある水はどれも腐りきっていて飲めたものじゃない。いや、そもそもここにいて大丈夫か?またあのドラゴンが襲ってきたら?食料や水を調達するにはどこに行けばいい?危険な外へ出なければいけない。バケモノに見つからないように移動するには?
今のどうしようもない現状を忘れるつもりが死の恐怖、生への執着のせいでこれから先のやるべきことを考えてしまう。まずは落ち着いて休もう。気持ちを落ち着かせよう。
しかし、現実逃避は思うようにうまく行かず、焦る自分に苛つきを抑えられなくなっていく。
「あぁあああぁあああぁあああぁああ!!!!!」
「何だよこれ!何なんだよ!どうなってんだよこれ!」
神さま、僕をあの退屈で平和な世界へ戻してください。