Final Stageへ
銃を構えつつ姿勢を低く保ち、あたりを警戒する。
――360度、上下含め見える格好だ。
原子炉格納容器まわりに設置された歩廊では、上に続く階段からはもちろんのこと、側面は鋼管の手すりで筒抜けであり、足場はグレーチングであることから下からも覗ける。
……警戒すべきは視界だけでない。足音……、ひとつひとつの動きに注意が必要とされる。
屋外にいたときに比べ、警戒すべき範囲が広く、張り詰めた状態が続いている。
――あのときは吹雪であったことも大きい。
唯一の救いは冷却水系統のパイプライン、補機類があちらこちらに点在していることぐらいだ。
身を隠しては一呼吸を置くといった具合で目的物に近づいていく。
――だいぶ時間は掛かったが……。原子炉へ設置された最後のC4を見上げる。
このフロアを警戒している歩哨は4人。
フロアへの出入口は東西に1か所ずつ。出入口に1人ずつ配置され、2人が原子炉付近を巡回している。
コツ、コツと歩哨からの足音が室内に響き渡る。
決まった巡視時間、ルートから潜り抜けれるタイミングを見計らう。
――生きている実感を持てている。
潜って15時間以上経過しているが、この緊張・緊迫感が不思議と高揚感に繋がり、それが生きているという充足感を満たしてくれている。
――普段の生活のなかでは、どこか満たされない空白感、浮いた感があり、どうしても非日常に思えてしまうことが時折ある。
長く戦地に、諜報活動に身を置きすぎたな、と思い返してしまう……。そんななか、数時間前の無線でのやりとりを思い出し、忍んで笑ってしまう。
『――段ボールがあるな。段ボールは古来より諜報活動に用いられ、多くの諜報員を救った必須アイテムといっていい』
『……っ、本当か』
これまでの経験上、まるで当て嵌まる例がなく、失笑してしまう。
『ああ、もちろんだ。――潜入、サバイバルはありとあらゆるものを駆使して敵の目を欺く必要がある。これで歩哨の目を掻い潜ることができるはずだ……』
『……』
力説はされど、使えるかどうかは怪しいものだ。
『――まあ、冗談だ。……多くのフィクションでは使われているみたいだがな。ただ実際に、これを用いて監視の目を掻い潜ろうとした例もある。――2015年に韓国にて段ボール箱を被り、店内の物品を盗みだした事件があったそうだ。……ただ残念なことに監視カメラには被りながら動く様がばっちりと残されていたがな。
――敵の目を潜り抜ける方法は何通りもある。柔軟な発想を心がけてくれ』
『了解した』
――ふっ、あのやりとりで幾分か心に余裕ができたといっていい。
最後のC4に近づき冷却スプレーを吹きかける。制御部から発される信号が停止したことを確認し、無線をつなぐ。
「こちらジャック、最後のC4凍結処理を完了した」
「よくやってくれた。これで彼らの切り札は大きく削がれた。……とはいえ、現地にはまだ人質もいる。タイムリミットまで残り数時間だ。急いでくれ」
「人質のいる場所は、投稿された動画からモニタールームだと思われるわ。そこから北に位置する別棟よ。急いで」
遅ればせながら、この作品を評価・ブックマーク登録、一読頂いた方々に感謝します。
作品としては、あともう少しで終わる予定です。




