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眠れ、大罪人よ  作者: ノーム
7/12

第2フェイズ

「世間が騒がしくなってきたな」


「まったくだ。我々を非難めいた言葉があちらこちらから聞こえてくる。――我々がどれほどまでに骨を砕いて、いまの場に立っているのか、彼らは分かっていないのでしょうな」


 から笑いといっていい声が、室内に響く。


「……しかし、あの人には困ったものだな。彼のおかげで、たしかに議員の統率がとれてはいるものの、いかんせんだいぶ偏りが露出し過ぎた」


「それに付け込む形で起こった今回の事件と報道……。議員のなかでは彼を含む幹部の引き下ろしを目論む勢力が水面下で動いていると聞く」


「どう転ぶか……。いまの国内外の情勢を鑑みれば、我々の身の振り方もすぐさま変えるべきしょうな」


「いかに長く、しぶとく生き残るか……。我々も家庭・生活が懸かっているのでな。――公約は二の次よ」


「最近では議員の一部で年収、特権内容をSNSで公開している者もいる。……まったく困ったものだ」


「年収の情報にスポットが当たれば、やれ下げよ、と申す者が続出する……。だからこそ比較的、的になりやすい公務員の年収をチラつかせ、難を逃れてはいるものの……」


 口元を尖らせ、勢いよく煙を吐く。


「奴らの狙いは、次に迫る選挙準備といったところでしょうな。我々を出しにして……」


「心の奥底から愛国心を以てして動く者はいまい。表面だけを取り繕い、甘い汁を吸い続ける……、我々よりも狡猾かもしれんな」


「――なんによせ、今回の騒動で大きく割れる。乗り換えも視野に入れ、動くしかあるまい」


 たばこを灰皿に擦り付け、室内を出、ある場所へ赴くのだった。


 ――――


 犯行声明から20時間が経過し臨時国会のなかで、少しずつ動きが現れてきた。

 これまで、頑なにテロリストの要求を呑まないとしていた会派が、世論の動きに乗ったのか、受け入れる側へ流れ始めたのだ。

 しかし、それでも内閣・与党の中枢に根付く者たちは、いまだ反対をしている。


 彼らの意見は、特権剥奪・給与削減は議員の成り手が少なくなること、また特権は国の施策を案じるのに必要なものであるとして反対している。また、親中に関わることは世界の中心が米国から中国に移り変わってきていることを軸に、1970年代に国交正常化したことからはじめて、これまでに日本に大きく影響を与えてきた中国の働きを歴史的に紐解きながら、日本はいち早く身の振り方を親中に傾倒すべきだと力説している。


 ――では、原発についてはどうなのか、と問われれば、


「脱炭素社会は全世界が目指しているものであり、我が国においてもそれを目指す必要がある。そして、それを実現させるには原子力発電の充実化を国策として進めていかなければならない」


 原発における潜在リスク、コスト面は度外視しての、環境面の配慮といった全世界共通のクリーン施策を全面的に押し出している格好だ。


 しかし、この動きで大きく利潤を被ると思われる原子力発電を手掛ける製作メーカは――


 ……既に虫の息だ。 


 国策の目玉として進められてきた計画に振り回され、諸外国への売り込みに失敗、あげく計画凍結が多発。――いたずらに体力を消耗させられた形だ。そのうちのいくつかは存続のために事業の抜本的改革が急務で、いくつかの主力事業を売却せねばならない事態へ陥り、また一方では国内で進められている建設中の原発について、一部幹部からは苦言を呈している。『……リスクがでかすぎる』と。


 そして、これに加えて騒動がひとつ起きている。


 国会議事堂前にはデモを広げる者たちが並びたち、抗議の声を上げているのだ。


 彼ら曰く、『テロリストからの要求を受け入れろ、議員への抜本的改革、そして脱原発の社会を』と。




 ――タイムリミットが差し迫る中、これまで一枚岩を保ってきた議員たちに亀裂が生じ、抑えが利かなくなってしまったのは実に大きい失敗だった。……舵を切りすぎたやもしれん。

 そこへのデモ活動で、患部にスポットライトがあたり、一部の番組で取り上げられ大衆に知れ渡るところとなってしまったのは目も当てられない事実――。

 このほか、与党内部では我々を引きずり下ろす者たちが周辺で画策している動きもある。


 これらに舌打ち、苦虫を噛んだ表情をする者、党内の不穏なざわつきに睨みを利かせる者など、目にみえる形で議員内に不協和音が響く。……あげく、声を張り上げる者までいる始末――。


 そして、この事実がタレコミにより報道で全国に知れ渡るところになってしまい、ますます頭を抱えることになったのは、ほんの少しあとのはなしだ。


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