表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠れ、大罪人よ  作者: ノーム
6/12

道すじ

 監視モニターに注目すると、赤く点灯していたランプがひとつ、またひとつと点滅、消えていく――。


 予定通り工作員は潜入し、C4の解体処理を行っているのだろう。


 C4の起爆方法をタイマー式、センサー式にしなかったのは、ここにある。

 解体処理によるケーブル断線、もしくは起爆そのものの機能を停止させれば、そこからの信号が途絶え、モニターに映るランプが消灯する仕組みだ。


 設置したC4をみて、彼らにもはっきりと爆弾が本物であることを確信できたことだろう。


 これは今の拮抗している情勢に、ひとつの圧力を掛けたことになる。




 ――しかし声明を発してからの15時間、政府は変わらず要求に対して、はっきりとした回答を示さない。


 だが、


「世論が大きく動き出しましたね」


 ジャック・テロはもちろんのこと、政府へ要求した内容が全世界に伝わり、米国大統領の発言によって、日本含めた各国に大きい衝撃を与えるようになった。これをきっかけに米国内はもちろん、中国と対立するインド、豪州、ブラジル、そして英国内でも、それを歓迎する一部の動きが起こり、それがニュースとして大きく取り上げられるようになったのだ。


 これにいち早く反応した中国は、アジア圏の恒久的平和と銘打って、日本国の外務省へ軍隊の派遣を申し出た。


 狙いはさしずめ、これまで全世界に報道されてきた民族弾圧、協定違反、国境線の挑発、脅迫、領空海侵犯、占領、ハッキング等、積み重ねられてきた負のイメージ払拭だろう。そして、世界が緊張状態にあるなか、軍事力を強く誇示させると同時に、これからの世界を牽引する者は誰であるか、表立った場で示したいと思ったからだろう。


 そういった、我々の要求をきっかけとして世界規模で動く世論に、いままで一部報道しない自由を享受していた国内報道メディアがようやく重い腰をあげ、要求の内容を取り上げるようになったのだ。


 ……比率として、全体の2割程度に留まるが。


 報道の焦点は、原子力発電施設の継続運用、核廃棄物に関することであり、専門家を交え議論させている。




 ――ふっ。グラスを目線より上に掲げ、光の反射を楽しむ。


 我々が欲していた状況は、ほぼ形となった。


「今回のテロをきっかけに、原発の恐怖が人々に再認識されると同時に、脱炭素社会を目指したエネルギー転換の方針を再度考えなければならない事態へと陥るであろう」


 今回のテロには、大きく2つの目的があった。一つは国会議員、特に親中派議員に関わること、そしてもう一つが、脱原発への働きかけであった。全世界で取り組もうとしているとしている脱炭素社会に、国策として原発を促進させる動きに、真っ向から反対する形だ。


 原発はたしかに火力発電に比べ、生み出すエネルギー量は大きく、質量単位で言えば2、300万倍になる。だが、それに伴う代償は大きく、いくらセーフティー機能を設けたとて、それを扱うのは人間である。


 加えて維持管理、廃炉にかかるコスト、もっと厄介なのは現代の技術ではどうしても処理できない核廃棄物が発生する。

 それは人が即死するほどの危険物であり、現状それは仮置き、地中深くに埋設しているような状況だ。


 そして、福島原発で既に崩れ去った安全神話に、今回のテロ占拠により追い打ちをかけたことも相まって、見直しは必然となるだろう。


 ……だが、癒着、既得権益に深く囚われている者たちは、まだ動くつもりがないのは容易に思い浮かぶ。


 グラスを置き、ひとつ思案にふける。

 そして、テレビの画面越しで行われている国会の中継が目に映り、思わずほくそ笑む。




 ――追い詰められた状況下での、判断は実に危うい。相手を追い詰め、そして追い詰められる両者。そこには感情の起伏があり、隙が生じるものだ。


 潜入者はいまもたしかに一歩一歩、こちらに近づいてきている。


 ……にも関わらず、その例に当てはまらない尋常さを彼に感じる。


 生まれ持ったタレントなのか、気質なのか、威風堂々としている。

 ……この状況を楽しんでいるのか。


 ――彼は笑い、そして私に言うのだ。


「のちに、次の一手を打つ。

 道すじはみえた……。さぁ、最後のひとときを楽しもうか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ