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眠れ、大罪人よ  作者: ノーム
5/12

推測

 現地に潜入し、幾時か過ぎる。


 虚空にむけ、口から吐く息は視界を白く染め上げる。まわりがかなり冷え込んでいることが分かる。

 天候は悪く、昨日から続いて吹雪いており視界を遮る。時たま弱まった瞬間を狙い、歩哨の動きを観察する。


 屋外に配置されている歩哨については、潜入時に展開された陽動部隊からある程度情報を仕入れ、把握している。


 彼らをみると、疑問に感じることが幾つかある。


 ひとつ、服装がまばらである。

 ふたつ、兵装が統一されていない。


 複数のブロックを潜り抜けてきたが、私服としか思えない格好なのである。

 兵装については、片やアサルトライフル、もう一方ではマシンガン、はたまたショットガンを携行している者もいる……。見回っている兵士のなかには手になにも持たず、あたりを見渡すものもいた。


 ……懐にハンドガンを忍ばせているのか。


 ――なんにせよ、分からないことが多い。


 テロを引き起こした集団については、いまだ詳細な情報が入らない。


 彼らを見ると、個人の決起で引き越した事件のように見える。

 しかし、そのように見せかけ、裏で働きかける政治的組織があるのか……。


 彼らの要求は政治色の濃いものであり、それに同調する者は世界各国に存在する。

 なにより我が国においては、かの国を敵対視している者が多い。

 ……裏で働きかける組織があっても不思議ではない。


 どちらにせよ、いま持っている情報だけでは断定できない。


 ――思考を張り巡らし、陽動部隊からの情報、視界に映る相手の動きを基に監視の目を潜り、ようやくひとつの目的物にたどり着く。


 C4は大きく起爆剤、発火を制御する2つで構成される。

 起爆を誘発させる制御部に、事前に支給されていた冷却スプレーを吹きかけ凍結処理を施す。

 犯行声明で発信されていた映像から、あらかじめ爆弾処理グループから数ある爆弾を処理するのに最適な方法として提示されたものであった。彼らから潜入前に手ほどき、レクチャーを受けることができたのは実に助かっている。


 ひと作業を終え、無線にてコールする。


「こちらジャック、C4の凍結処理を完了した。みる限り、爆弾はタイマー式、センサー式でもなくリモートにて爆発させる仕組みを採っていた」


「ご苦労様。設置された爆弾だけど、原子炉に直接ダメージを与えるとは思えない位置にあるみたい」


 設置されてあったのは、原子炉から離れた車両進入路の端。施設の施工図面上、冷却水を送り込むパイプライン、原子炉等の電源・制御系統のケーブルは埋設されていない。


 ……彼らの狙いが分からないな。


「見せしめの可能性が高いな。交渉が決裂したときの圧力要因として考えていいだろう」


「――ところで、政府に動きはあったか」


「……事態は非常に複雑になった。

 ついさきほど、米国大統領がtwitterにて、この事件に関し日本国政府はテロリストからの要求を受け入れるべきだ、というコメントを投稿している。これが世界全体に報道され、その動きがあって間もなく、そのコメントに対し非難する文書を、中国をはじめ挙げている。そして、日本国外務省へテロリスト集団鎮圧のため、軍隊を派遣すると申し出ているそうだ」


 ……大統領の動きはある程度予測できてはいた。

 それに対する反論で見事火種となり、炎上――世界は再度中国に対しヒートアップしているということか……。


 彼らの犯行声明について一度振り返ると、はじめからこれを狙っていたのではないか。

 発信先の相手はたしかに日本国だが、彼ら自身からの動きには期待せず、大統領を発信役として狙い、そこから世界へ拡散、世界規模の世論形成を為させ、外部から働きかける、そう目論んでいたのではないか、と思ってしまう。


「……もはや日本国だけに留まらない話になっていることは分かった」


「そうだ。

 いまや全世界が注目している事件だ。この事件で、アジアの政治・経済の覇権がある程度決まってくる。そして、その中心に座す政府は各国からの干渉を受け、まったく動けない状況だ」


「なんとも情けない国だな。自分の国でありながら舵取りを、周りの目を気にしながら行うとは」


 ある国による領空海侵犯は日常茶飯事になり、当たり前のように遺憾砲のみを放ち続ける政府。そして、外資による領土侵略にむけた動きも実に鈍重だ。彼らには国を担うという意識はあるのだろうか。

 それに比べ、我が国はかなり恵まれている。――彼らには深く同情する……。


「話は変わるが、テロリストに関わる情報を手に入れた。今回のテロには、どうやら施設に融通を利かすことができる内通者が加わっているらしい」


「だろうな。内通者なくしては占拠などできないはずだ。

 あらかじめ施設内に出入りできるマスターキーが支給されたのは助かっている」


 加えて施設を手掛けた会社、原発を管理する会社からの全面的なサポートも受けている。相手の監視モニターに観測されるのを防ぐのに、監視カメラの配置、セキュリティーに関わる抜け道の情報はかなり助かっている。


 図らずも関わってしまった彼らも他人事ではないということか。


 ――問題は、建屋内の歩哨配置だ。


「爆破予告まで、残り12時間を切っている。

 すまないが、引き続き任務を続行してくれ」


「了解した」




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