反応
建屋の窓からは、雪が吹雪いているのが分かる。
めったに降ることがない地に、数十年に一度とされる寒波が押し寄せているらしい。
普段であれば、窓からは黒を背景に星・月明かりが差す光景なのだろうが、雪が舞い、次第に白一色に染まっていく。
「リーダー」
リーダーと呼ばれた青年は窓から視線を外し、声を掛けてきた仲間に顔を向ける。
「犯行声明からすでに7時間経過している。政府は要求を呑んでくれそうなのか」
「要求が政府の中枢に関わることであることから、時間が掛かることはある程度予測している。要求を受けいれる側、そしてこれまでの既得権益に預かっていた側の2派でいまだ拮抗しているのだろう」
この情勢は、世論の動き次第で均衡は崩れるだろう。問題は、それを如何にして動かすかだが……。
手っ取り早く世論を動かすことができるのはテレビ等を介した報道メディアだ。
21世紀はじまっての大事件ならば、インパクトは大きく、どのメディアもそれを放置することはないだろう。
――たしかに、喰いついてはきた。
……だが、『狙った形』としてではない。
報道は、たしかにすべてを映す必要もない。10あるうちの7を流し、不足があるからといって罰せられることはない。支障のあるものは外しての切取り報道、解説者による後押しで、観る者の印象を操作することができる。
それを証明するかのように、これまでの報道から、あからさまに論点ずらしが目立つ。
――テロ行為が悪であることは否定しない。
しかし、こちら側が提示する要求を取り上げず、ただテロリストは悪、悪には屈しないといった、ただ『起こった出来事』だけを切取り、報道している。
こちら側の『要求した内容』をまったくもって報道していないのだ。
……分かってはいた。
テレビ局等に絶大な影響を与える、親中派の息がかかった広告代理店による圧力で、彼らにとって不利となる情報を、国民側の意識から意図的に遠ざけていることを……。
周恩来の時代から種をまき、芽吹かせ、国の主幹に入り込ませた手札を早々と切り落とすつもりがないのは容易に推測できる。
だからこそのSNS YouTubeによる犯行声明であった。他メディアによる情報の加工が施されず、切り落とされず、そのまま全国、全世界に発信できる。
しかし、分かってはいたが……。悔しいことに、いまだテレビの報道力は断然強い。
――ある自治体で行われた『都構想計画』がそうだ。終盤に起こった『ある報道』で……。
「それについては、気にする必要はないだろう」
リーダーと呼ばれた青年は視線を外し、再び窓の外を眺めつつ答える。
「彼らに不満を持つ者は多く多い。直に彼らが担ってくれる」
外部に協力者がいるのか……。それとも何かしらの奇策が……。
……まぁいい。
「ところで、さきの施設内上空および正面入口に現れた部隊のことだが」
監視カメラから映し出された映像について、疑問を呈する。
「恐らく工作員を送り込むための陽動部隊とみていいだろう」
C4は原子炉に関係ない建屋屋上にも設置している。
C4、警備配置の偵察ならば施設内上空だけに展開すればよい。
「……泳がせるのか」
「ああ。予定通り彼らの出迎えを頼む」




