眠れ、大罪人よ
小型の木槌――ギャベルの鳴らす音が室内に響き渡り、沈黙が場を制する。
「判決を言い渡す。被告○○は、無期禁錮に処すものとする」
今回起こした騒動はひとつの武装蜂起であり、内乱罪が適用されたこととなる。
死刑は免れたが……といった形だ。
ただ、これに反発する者も現れる。犯行声明にあった爆破については未遂に終わっており、死人・けが人もない。――事の終わりは自ら投降した形で締めくくっていることから、もう少し情状酌量の余地があるのでは、と申す者が多い。
「被告〇〇、最後に言い残すことはあるか」
被告と称された者が法廷に佇む者たちを見回し、そして口を開く。
「この法廷の場に臨まれている裁判官はじめ、検察官、弁護士……、そして傍聴されているみなさんに、私にモノ申す時間を与えて頂けたことに感謝する。
私は、ご存知の通り先日テロを引き起こした首謀者であり罪びととして、この法廷の場に立っている。
なぜ、自爆テロという行為に踏み切ったのか、それは声明で発表した通りである。
――我々日本民族は歴史的に紐解いていったとき、幾度と海を隔てた大国から多大な影響力を受けながらも属国には下らず、この国を死守し続けてきた。これはみなさんが既に知っていることだ。そして時代は流れ世界大戦というさなかにおいても、多くの若人が海上で、ときには陸上でこの国のために散華していった……。ときの流れにあった全体主義というなかで、彼らは愛する家族・恋人、なかには残される子供たちに自分の持てる最後の思いを一言、もしくは何枚もの用紙にて綴ったのだ……遺書というかたちで。これに胸を打たれない者はいまい……。彼らは国のためといい、笑顔で轟沈するといいながらも震えていたのだ。……そんな明日を生きることができない彼らは、未来を生きる者たちに願い・思いを託したのだ。
さて、彼らからバトンを受けっとった、いまの日本の内部を覗くとどうであろうか。
――もはや目に余る。あまりにも自己保身に走る者たちが多すぎる。そして、なによりこの日本――我が愛すべき国に対し他国への属国の足掛かりを作る者たちがいることに愕然とする。それが国の中枢にいるのであれば、なおさらである」
そして、天井部に視線を移し
「――しかし、私が引き起こした行為は悪しきものであったことには間違いなく、私には事を引き起こしてしまったゆえに多くの方々に恐怖、心配事を与えてしまった事実がある。この場にて、再度お詫びさせていただく」
裁判官はじめとした傍聴席に座る者たちに深々と頭を下げる。
そして顔を上げ、威風堂々とした様で
「私は、言い渡された刑罰を甘んじて受け入れます。今後、私は日の目を見ることもないでしょう。
――しかし、ことの顛末はこれですべて終わるわけではない。世論は既に動き出し、そして躍動していっている。……むしろここから始まっていくのだ、真の民主化が」
聴衆者全体に手を伸べ、そして拳を握り、語気を強めて放つ。
「――私は、ここで宣言する。
真の民主化が為されるまで、闘い続けていくことを」
最終話になります。
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