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第6話

「お嬢さん」


正面から男性の声が聞こえる。もう、勘弁してよ。

エリーザは胸中で呟きながら視線を下ろした。


そこには、王国の中でも最も名門の家系出身の青年貴族がいた。

馬上槍試合でも活躍している、美貌の男性。


「一曲、お相手頂けませんか?」

相手の顔を見て、その誘い文句を聞いて、エリーザじゃ気合を入れ直した。

さぁ、ここが勝負どころだ。サヴァツキ家のお嬢さん。


なんだか訳が分からないけれど、王子や高級貴族とダンスをする機会を得ている。

ここで顔を覚えてもらって、父上や母上、家臣たちへの手土産にしなくては。


先ほどの歌唱で体力も気力もほとんど使い果たしていたけれど、最後の一滴を振り絞れと自分に鞭を打ち、エリーザは笑顔で申し出を受諾する。


エリーザは美貌の青年貴族に手をひかれ、ホールの中央付近へと躍り出た。

舞踏会では、高級貴族が中央付近で踊り、格の低い貴族は周縁で踊るという暗黙のルールがある。エリーザは場違いな空気を感じながらも、一生懸命に踊った。


「あの人の名前聞くのを忘れてた。なんて名前なんだろ」


中央付近で踊っているからか、背後から王子の声が聞こえてきた。

気さくな語り口なのはアネットと踊っているからだろう。


「お名前をお伺いしたく」


彼にも王子の声が聞こえたに違いない。

エリーザのダンス相手がにやりと笑いながらエリーザに問いかける。


「サヴァツキ家のエリーザと申します」

「承知いたしました。お伝えしておきますよ」


美貌の青年貴族は爽やかな笑顔でエリーザに向ける。

エリーザも、精一杯の笑顔をつくって感謝の気持ちを伝えた。


そうして、社交界でデビューしたばかりにも関わらず、その日、エリーザは幾多の名士たちと踊り明かした。


それが、エリーザとヨハン王子、そしてアネットとの出会いだった。


翌日、エリーザは王宮に呼び出された。


「サヴァツキ家のエリーザだね。昨日はどうだった?」

「殿下にお声をかけて頂き、恐悦至極でありました」

「そう。それは良かった」


ヨハン王子は一段高くなっている場所に据えられた豪奢な椅子に座っていて、エリーザはやや離れた位置で跪いている。エリーザの斜め後ろでは、昨日の舞踏会で音楽隊の指揮者を務めていた壮年の男が跪いていた。


それは良かった、と言ってから、王子はなかなか次の句を継ごうとはしない。

王子が話し出さないので、エリーザも黙ったまま跪いている。

すると突然、王子が鼻歌を歌い始めた。エリーザが舞踏会で二曲目に歌った曲だった。

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