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ミルクとマシュマロは合うのかな?  作者: キノシタ
第2章 ー始まりの恋ー
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第462話

ゾロゾロと卒業式のために来てくださった親御さん達が椅子に座っていく。

私は今日は本当に卒業式なんだと胸を熱くさせ、清楚なスーツやモダンな服を着た人達に混じり一際目立つ人が入り口から入ってきた瞬間、気持ちが冷めていく。


生徒会のメンバーと先生達も笑顔で手を叩きながら生徒の親に「こんにちは」と言っていたけど、私のお母さんを見た瞬間手が止まり、「すごっ」と思わず声が出ていた。

そんな反応をされたことを知らないお母さんが私に「水希〜」と手を振って来る。


私は小さく手を振りながら苦笑いする。いい加減慣れてきたけど、相変わらずの母の目立ちっぷりに顔が引き攣る。

元バレー部の母は身長が高く、スタイルも維持しているからカッコいいけど派手好きなのが難点だ。誰よりも目立とうとする。


私はお母さんに手を振りながら周りの視線を集め、逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。まだ、始まってないのに注目される。

今日の主役は3年生のはずなのに、今現在体育館の主役は私の母だ。

綺麗にセットされた髪型+派手なパンタロンスーツのせいでどこぞの女優に見える。


真里ちゃん達の視線が苦しい。なぜ、2人とも目を輝かせ尊敬の目で見るのだろう?

此の親にして此の子ありと小さい頃から私とお姉ちゃんは言われてきた。だけど、お姉ちゃんは分かるけど地味な子だった私まで言われずっと納得ができない。


気まずさと緊張感に包まれ、私は姿勢を正す。もうすぐ3年生が体育館に入場する。

チラッと入り口の方に胸に花の飾りを付けた3年生が見え、やっと頭の中からお母さんを追い出すことに成功した。

手で軽く頬を叩き、自分を鼓舞する。生徒会長として頑張らなくてはいけない。


一度大きく深呼吸をしていると体育館に音楽が流れ始める。卒業式の定番曲で、もうすぐ卒業式が始まるんだと緊張する。

必死にうるんできた目に力を入れ、涙が流れないよう集中した。泣くとしても、最後だ。激励会の時みたいに号泣は絶対にしない。



「只今より、卒業式を行います。これから入場します3年生に拍手でお迎えしましょう」



真夏ちゃんのお淑やかなトーンの喋りに感心する。真夏ちゃんの素を知っているからギャップが凄すぎて感動してしまった。

みんな、やっぱり凄いなと改めて思いながら私は拍手をする。音楽に乗って3年生が入場し、涙腺が感動で刺激されヤバい。


きっとお姉ちゃんや恭子先輩、元生徒会の先輩達を見ちゃうと本気で泣きそうで、覚悟を決めて入場を見つめていると意外に涙腺が刺激されず笑顔を作ることができた。

先輩達が手を振ってくれ、切なさや悲しみより嬉しさが勝ち、大好きな先輩達の卒業式をこうやって見送れることに感謝する。


お姉ちゃんも口パクで「頑張りなさいよ」と言ってくれて、これはちょっとヤバかったけど何とか涙腺は耐えてくれた。

3年生みんなが輝いている。華やかで、尊敬できる先輩達で、時々大変な目に遭ったけど全部チャラになるぐらい大好きだ。


生徒会長になって良かった。お姉ちゃんの策略にハマり立候補したけど、楽しい思い出が多くて最高の学生生活を送れている。

頼もしくて可愛い後輩達にも出会え、こんなにも大好き!って言える人達に出会い、私はめちゃくちゃ幸せ者だ。


あー、涙腺が楽しい思い出のせいで刺激されてしまった。涙を流さないため、上を向き必死に乾けと念じる。

今日の主役は先輩達だ。私が先に泣いてはいけない。先輩達が高校生活を語り、涙を流した時、私も涙を思う存分流したい。


みんなが着席したあと、壇上で校長先生が挨拶をし、それぞれのクラス代表の生徒が卒業証書を受け取っていく。

そして、生徒会長の私がスピーチをし校歌を歌い…卒業式が終わる。こんなにも卒業式か短いと思うなんて不思議だ。もっと長くやってもいいのにって初めての感情を持った。



体育館に流れる音楽が止まる。3年生が椅子に着席し、校長先生が壇上に上がった。

お姉ちゃん達は凛として前を向き、校長の言葉を聞いている。その姿がとてもカッコよくて、私の永遠の憧れだ。私も先輩達みたいなカッコいい先輩になりたい。


私は大好きな先輩達をずっと見ていたい。そのお陰で校長先生の話は全く聞けてないけどそれでいい。チラチラと号泣する私のお母さんが目に入るけど気にしないようにする。

あー、、素敵な卒業式だよ。こんな日に何で私はトイレに行きそびれたのかな…感動とトイレに行きたい思いが激しく揺れ動く。


体育館が寒すぎる。暖房がないから仕方ないけど、寒すぎる。足の指が悴み、膝を擦り合わせながら必死に校長先生の話の間にトイレに駆け込もうか考える。

こっそり壁伝いに歩いていけば誰も私なんて気にしないはずだ。校長先生の話があと5分ありますように願いながら私は静かに後ろに下がり影の存在となりゆっくり歩く。


お姉ちゃんと目が合ったけど…もう限界だった。それに今日は私は主役じゃないから許して欲しい。モブは突然消えても問題なし!

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