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ミルクとマシュマロは合うのかな?  作者: キノシタ
第2章 ー始まりの恋ー
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第438話

私はいつもイベントごとに疎い。クリスマスもギリギリに思い出し、慌ててプレゼントを買うぐらい忘れっぽく疎い。

まぁそれは置いといて、私はなぜか部活の時間なのに体育館にいる。真里ちゃんに来て下さいと頭を下げられ、来るしかなかった。


だけど、やっぱり来なければよかったと後悔する。真里ちゃんの表情でずっと嫌な予感がしており私の勘は見事に当たっていた。

私の可愛い後輩の真里ちゃんを使うなんて、バレー部+松村先輩め…私が真里ちゃんに弱いのを知ってて使いに寄越した。



「水希、勝負よ」


「嫌です!」


「勝ち逃げは私が許さない!」


「松村先輩、いい加減にして下さい。私は陸上部なんです。バレー勝負なんて絶対にしません。それに私はお姉ちゃんとじゃなきゃコンビネーションがとれません」



松村先輩は権力を使いバレー部を巻き込んで私に勝負をしろと言ってくる。

でも、バレーはいきなりできるものではない。選手同士のコンビネーションが何より大事で、セッターとアタッカーの息が合わないと良いアタックができないし、チームプレーが何より大事なスポーツなんだ。



「そんなの分かってるわよ。だから、水希の得意のサーブで勝負よ」


「えー、サーブですか…」


「露骨に嫌な顔をしないの。朱音と勝負してもらうから」


「したくないです…」


「朱音に勝てたら、私の手作りケーキをプレゼントしてあげる」


「分かりました。あっ、ケーキはホールでお願いします」



一瞬で松村先輩お手製ケーキに釣られた私は欲に負け勝負をすることにした。ただ、何も考えず勝負を受けたことで朱音ちゃんが私に対し闘志を燃やす。

松村先輩は朱音ちゃんに私が勝ったらケーキをプレゼントすると言った。私はケーキに釣られ余計な要求をし、私が勝てる勝負だと思っている印象をつけてしまった。



「高瀬先輩には負けませんから!」


「朱音ちゃん…(怖いよー)」



勝負の内容は交互にサーブを打ち、ボールを上げきれなかった方が負け。

だから、どれだけ威力のあるサーブを打つかに勝敗がかかっている。



「先行はどうする?」


「朱音ちゃんからで大丈夫です」


「分かりました。高瀬先輩、本気で行きますから」



私は手首と足首を動かし軽くストレッチをする。ストレッチをしながら、いつのまにか増えたギャラリーの多さにため息を吐く。

隣のコートで練習しているはずのバスケ部も練習をやめ見つめてくるし、完璧に朱音ちゃんとの勝負が見せ物になってしまった。


早く勝負を終わらせてグラウンドに戻らないといけない。さわちんに怒られてしまうし、このままでは更にギャラリーが増えそうだ。

注目を浴びるのが苦手な私は、早くここから逃げ出すために頑張ると決めた。


(ピィー)


松村先輩が吹いた笛の音が鳴り、朱音ちゃんがサーブを打ってくる。なかなかのスピードと勢いがあるサーブだ。

でも、落ち着いていればとれないことはない。私はボールがくる位置で構え、ボールを捕らえた。朱音ちゃん、沢山練習したんだろうな。前より勢いが増している。



「(ピィー)サーブ交代」



今度は私がサーブをする番だ。ボールを何度か床でバウンドさせ、両手でボールを回転させ、手にボールを馴染ませる。

深呼吸をし、ボールを高く上げ、軽くジャンプしながらボールを打った。狙った位置には打てたけど、朱音ちゃんにボールを上られサーブ交代になる。


この勝負は長くなりそうだ。早く勝負を終わらせないと本気でさわちんに怒られてしまうし、芽衣が勝負のことを知ったら叩かれる。

早く部活に戻りたくて、私はまたため息を吐く。私は陸上部なのにって、、大体、バレー部と陸上部がサーブ対決ってどう考えても私には不利な勝負だ。


それに手が痛い。どんどん勢いが増す朱音ちゃんのサーブはしっかりボールを追っていれば上げれるけど手が痛い。

またサーブ権が交代し、私は久しぶりにジャンプサーブをやることにした。お母さんに鬼特訓をされたジャンプサーブ。上手くいけば強いサーブを打てる。


久しぶりのジャンプサーブをするため、一度深呼吸をし、後ろに下がる。狙いを定め、私はボールを高く上げジャンプをした。

久しぶりだけど、体がしっかり覚えていたみたいだ。ボールを打つタイミングもバッチリで手のひらから強い力がボールに伝わる。大きく振り渾身のジャンプサーブをした。



「嘘でしょ…」


「あっ、やったー!」


「・・・凄い、、」



ボールは狙った位置に上手く行き、朱音ちゃんはボールを上げようとしたけど、ボールの力が勝ち遠くに弾け飛ぶ。

これで勝負は決まり、私は喜んだ。やっと部活に戻れると喜んだのに、バレー部に囲まれ身動きがとれない。


みんな、私のサーブを褒めてくれるのは嬉しいけど、私は早く部活に戻りたい。

囲まれたせいで動けず、周りにいたギャラリーは騒ぎ出すし、バスケ部が拍手してくるし私のことはほっといて練習をしてくれ。



「高瀬先輩…負けました。でも…次は負けません。絶対に負けません!」


「朱音ちゃん、、あー、泣かないで」


「高瀬先輩、よくも朱音を泣かせましたね!」


「真里ちゃん、違うって!勘弁してよー」



私はひたすら朱音ちゃんに謝り、放心状態の松村先輩を置いて急いでグラウンドに戻る。あのままいたらギャラリーにも囲まれそうになったから危なかった。

私は平常心保ち、ランニングしてましたよって顔で、しれっとストレッチをしようとするとさわちんにすぐに見つかり「サボってたでしょ」と疑いをかけられる。


なんて酷い友達だ。違うって何度も言ったのに、罰として部室の掃除を命じられた。

事情を話せない私は渋々、掃除をするため部室に向かおうとすると勢いよく走ってくる松村先輩に捕まる。

「今からでもバレー部に入れー」と言われ、危うく本気で連行されそうになった。



私は二度とバレーをしないと誓う。もう絶対にお菓子になんて釣られない。

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