第41話
「水希、15日…どこか行かない?」
「いいけど、ひかるの誕生日でしょ。私とでいいの?」
「うん!水希と遊びたい」
「分かった、部活が終わったら出掛けよう」
ひかるの誕生日は15日…530円で買えるプレゼントってあるのかな。お菓子ぐらいしか思いつかない。せめて可愛いアクセサリー系を買えたら、、それでも安すぎるね。
それに、どこかに出掛けるにしてもお金掛かるし、とても530円じゃ持たない。
530円、530円…はぁ、、
「水希、どうしたの?」
「プレゼント…来月まで待っててくれる?」
「いらないよ!一緒に過ごせるだけでいいから」
「ダメだよ、いつもお菓子を貰ってるし」
「本当に大丈夫だから。水希がいればいい」
流石にその案は受け入れられない。でも…お金がない。くそー、どうしたらいいんだ。
もうこうなったら、日曜日だけのバイトをしようかな。それか、部活が終わったらバイトをするか…私の体力は持つよね。
「水希、何…考えてるの?」
「別に…」
「プレゼントいらないからね」
「・・・でも」
「お願いだから、気にしないで」
やっぱり、バイトをしよう。うん、それしかない。部活終わったあと、3時間バイトしたらそこそこお金が貯まるはずだ。
何のバイトがいいかな?接客業・コンビニ…後で色々調べよう。思いつかない、、
「水希、紅茶を持っていこう」
「うん」
「15日、楽しみにしてるね」
「あっ、そうだ。さわちんも誘う?」
「・・・うん」
「私はその日、用事があるから」
「あっ、さわちん」
いつの間にさわちんは二階から降りてきたのだろう。全く気付かなかったし、ひかると2人でつい長話しすぎた。
さわちんに用事があると言われ残念だ。せっかくならみんなでひかるの誕生日のお祝いしたかったけど仕方ないね。
ただ一つ、気になることがある。さっきから、さわちんの眉間にしわが寄りすぎだよ。
顔が怖くて、待たせてしまったことに対して怒っているのかもしれない。
しまった、紅茶が少し冷めてしまった。もういっそのことアイスティーにしたほうがいいかも。夏だから暑いし。
「ねぇ、紅茶淹れたの?」
「少し冷めたかも」
「別に暑いから丁度いいよ」
「さわちん、アイスティーにする?」
「じゃ、氷入れて」
紅茶に氷を入れて、アイスティーにし準備万端だ。ただ、足に包帯を巻いているから階段を登るとき気をつけないと。
「さぁ、ケーキ食べよう〜」
「水希、飲み物は私が持つよ」
「ひかる、ありがとう。助かるー」
「私が持つよ、ほら貸して」
「さわちん、男前〜」
「うるさい、早く二階に行こう」
今日のさわちんはどこか機嫌が悪くて、少しだけムスッてしている。
それにしても片足が不自由だと歩くのが面倒くさい。一歩づつ、ゆっくり手すりを持って階段を上がらないといけない。
「水希、私が後ろから支えるね」
「ひかる、ありがとう」
「よいしょ、よいしょっと」
「ふふ、水希お婆ちゃんみたい」
「失礼な、私はまだ15歳だぞー」
「可愛いお婆ちゃんだね」
可愛いお婆ちゃんって言われてもあんまり嬉しくない。せっかくなら、可愛い女子高生がいい。来年は華の17歳だ。SEVENTEEN!
響きがいい、ザ・高校生って感じがする。
来年の今頃は何をしてるかな。きっと今と変わらず部活三昧で走ってそうだ。
もしかしたら、10%の確率で私に彼氏が出来てるかもしれないし…90%の確率で芽衣に彼氏が出来てるかもしれない。
「あっそうだ、ひかるって彼氏いないの?」
「いないよ、好きな人はいるけど…」
「えっ、そうなの!マジかー」
「片思いだけどね」
「実るといいね」
「どうだろ、、多分無理だと思う」
「えー、悲しいこと言わないでよ」
「じゃ、頑張ろうかな」
「うん、頑張れ」
机の上からガチャっと音がする。出来れば、もっと優しくコップを机に置いてほしい。せっかく入れた紅茶が溢れてしまう。
さっきから、さわちんが何に怒っているのか全く分からない。座った途端、1人でアイスティーを飲み始めたし。
「水希って今まで好きな人、いたことあるの?」
「ないー(さわちんが真面目な顔して聞いてくるからビビる)」
「そっか、だから鈍感なのか」
「さわちん、酷いぞー」
「ひかるを泣かせたら許さないからね」
「えっ、どういうこと?」
「ちょっと、爽子…やめてよ」
昨日から何なの?お姉ちゃんからは芽衣を泣かせたら許さないって言われて。今日はさわちんからひかるを泣かせたら許さないって言われて意味が分からない。
私は2人を傷つけるって思われてるの?そんなこと絶対にするはずない。特に…芽衣を泣かせるなんてあり得ない。




