第202話
晴菜さんがチラチラと私を見てくる。もしかして、、私が芽衣を抱っこしていたの思い出したのかな…恥ずかしいから出来れば記憶から消して欲しい。
あの時、晴菜さんに…「彼女ちゃん、心配そうに見てるよ」って言われたからヤバいって。今となっては勘違いではないけど、、
「水希ちゃんに助けられてたの3回だったね。私、いつも助けられっぱなしだ。それも、忘れるなんて最低、、」
「そんなことはないです!私もなので、、それに助けたのはお姉ちゃんですし」
「水希ちゃんも助けに来てくれたでしょ」
晴菜さんにそう言ってくれるけど、私はあの時も何も出来なかった。お姉ちゃんにお願いして助けてもらったし。いつも、私は気づくだけで何もできていない。
「晴菜、夏からずっとあのムカつく元彼と揉めてたから水希ちゃん達のこと忘れちゃったのかもね。でも、良かったよ。やっと別れられて…あいつ最低野郎だったし」
「水希ちゃん達のお陰なんだよ。元彼と揉めていた時、助けてくれたの」
「マジ?凄い縁だね。晴菜、この縁は大事にした方がいいよ。だって凄いもん」
縁。確かに凄い縁だ。海での縁が続いていたのかもしれない。あの時も自販機で私の後ろに並んでいたのは晴菜さんで、お茶ではないけどお水を渡して、ナンパ野郎ではないけど元彼から助けて、、やっぱり不思議な縁だ。
晴菜さんが私を見てニコって笑う。なんか照れ臭いな///。「久しぶりだね」って言われて、感動しちゃった。
まさか、半年後に出会い仲良くなるなんてなかなか無いよ。それにお互い気づいてないのが面白い。だからこそ、驚きが凄いけど。
「晴菜。そろそろ、私は寮に戻るね」
「うん、バイバイ」
「晴菜さん、家まで送りますね」
「えっ、でも…水希ちゃん、バイトで疲れているでしょ」
「大丈夫です。晴菜さんを家まで送るのは私の役目なので」
「水希ちゃんは…優しいね、、ごめんね」
私はお姉ちゃんと別れ、自転車を押しながら晴菜さんを家まで送る。話しながら歩いていると、私が晴菜さんに貰った手袋を付けているのに気付いて嬉しそう笑った。
「晴菜さんに貰った手袋、暖かいです」
「本当?良かった〜」
「なんか、こうやって一緒に帰るの不思議な感じしますね」
「そうだね。不思議〜」
晴菜さんとは不思議な縁でこうやって笑い合える。あの時、自販機で私の後ろに晴菜さんがいなかったらこうやって一緒に帰ってないと思う。自販機で出会い、交わした会話の印象が残っていたからその後、偶然会ったとき無意識に晴菜さんを目で追った。
だから、晴菜さんのSOSに気づけた。
「あっ、私が水希ちゃん見るとホッとするの何度も助けてもらったからかも」
「そんなことは…」
「水希ちゃんはヒーローだね」
「ヒーローはお姉ちゃんです、、」
「もう、、意地っ張り」
だってそうだもん。私は何もしていない。
だから、ヒーローじゃない。
「晴菜さん…痛いです」
「私の言葉を素直に受け取らないから」
「嫌です…だって、違う」
晴菜さんに優しく頬をつねられても、晴菜さんの言葉を意地でも受け取らない。何だろ…意固地になってるのかな?
うぅ、、首と顔が痛い。晴菜さんに顔を手のひらで押さえられ横を向かせられた。
真剣な目で見られ、年上の言葉を素直に受け取れと言われる。分かってるよ、分かってるけど、、嫌なんだもん。
私は晴菜さんのSOSに気付いても助けてない。だから、私は目を逸らしてしまう。
「水希ちゃんのバカ…」
「バカでいいです…」
「えぃ!」
「痛いですよー」
うぅ、両手で頬を引っ張られた。頬が伸びちゃうよー。今はまだ張りがあるけど、このまま何度も色んな人に頬を引っ張られると伸びて戻らない気がする。
頬をさすりたいけど、自転車を持っているから出来なくて痛みだけが頬に残る。
「あっ、痛かった…?」
「痛いです…頬が伸びる」
「若いから大丈夫だよー」
「晴菜さん、馬鹿力すぎます」
「そんなことないよ…多分」
芽衣同様、晴菜さんも馬鹿力すぎる。私の頬をさすってくれたけどこの行為って意外に照れるから困る。
でも、お陰で気づけたからよかった。晴菜さんは手袋をしていない。
私は慌てて手袋を外し晴菜さんに渡す。私の頬をさすってくれた時の手が冷たくて少しでも温めて欲しかった。
「私は大丈夫だよ」
「ダメです。晴菜さんの手、冷たすぎます」
「ほら、コートのポケットに手を入れたら大丈夫だし」
「じゃ、一度手袋で温めてからポケットに手を入れて下さい」
「水希ちゃんって…誰にでも、いつもそんな感じなの?」
「えっ?」
どう言う意味?晴菜さんが困った顔をしている。私、晴菜さんを困らせる発言した?
もしかして、しつこく言いすぎたのかな…。どうしよ、面倒くさい子だと思われたかも。
「水希ちゃんって、絶対女の子にモテるタイプだね。告白とかされた事あるでしょ」
「ない、、ありますけど、、モテないです」
「彼女ちゃん、大変そうだ」
「そんなことは、、えっ?あの、、」
「思い出したの。海で抱っこしていた子、、水希ちゃんの彼女でしょ」
どうしよ…言葉が出てこない。晴菜さんの勘違いですよって本当は言わないといけない。
でも、真っ直ぐ私を見る晴菜さんには見透かされそうで…私は黙り込んでしまった。
黙り込む=肯定なのに、嘘が苦手な私は窮地に追いやられる。冬なのに汗が出そうだ。




