第168話
未来ちゃんはよく笑う子だ。でも、時々ふとした瞬間に寂しそうな顔をする。
きっと、さわちんとの事を考えている。2人の喧嘩の原因は私なのかな…?さわちんは私の事になると変わるって言っていたし。
私にはさわちんの考えていることや心の内が全然分からない。嫉妬深い?…でも、私にだけ過剰反応するし何かあるのかも。
未来ちゃんが私の歌を褒めてくれていたことが嫌とか?さわちんは歌が苦手だし。
「水希ちゃんは部活は何をしているの?」
「陸上部で短距離です」
「水希ちゃんね、生徒会のメンバーでもあるんだよ」
「へぇー、1年生なのに凄いわね」
「いや…生徒会は嫌々入ったので」
今は楽しいけど、最初は生徒会に入りたくないって駄々をこねていた。陸上部もそうだし、私は常にお姉ちゃんの手のひらで転がされている。
「あとね、歌も上手いしピアノの弾けてカッコいいの!」
未来ちゃん、あんまり褒めないで。歌もピアノもお菓子に釣られただけだから…芽衣にお菓子に釣られすぎって散々言われたの。
それに、お金にも釣られ…ほぼ私の意思は存在しない。金欠地獄のループ、、
「水希ちゃんは凄いわね。モテるでしょ」
「モテないですよー」
「水希ちゃんのファン多いよ」
だなら…未来ちゃん、そんなに私を持ち上げないで。凡人で地味で素朴な顔の私なんてモテないから。
一歩外を出れば、どこにでもいる子だし女子にも男子にも見向きされないって。
どっちかというと芽衣や未来ちゃんは可愛いから男子にモテて大変でしょ。
実際、芽衣は他校の男子からラブレター貰ってるし…くそ、思い出しただけで苛つく。
そうだよ、さわちん!どっちかと言うと他校の男子を注意してないと危険なんだからね。
こんな純粋な私を敵視しないで、ちゃんと周りを見ないとダメだよ。
「未来ちゃんが今までモテたでしょ」
「水希ちゃん、、私なんてモテないよ///」
「えー、嘘だ!未来ちゃん、可愛いから絶対モテた」
さわちんには勿体無いぐらいの可愛さだよ。それを言ったら私もだけどね!芽衣が可愛すぎるから困る。本当にモテるし…。
「あっ…」
「未来ちゃん、どうしたの?」
「何でもない…」
急に未来ちゃんの顔が暗くなった。もしかしてさわちんからLINEでも来たのかな?
携帯をジッと見つめ、ため息を吐きながら携帯の電源を落とした。これって大丈夫…?
「水希ちゃん、この後神社でも行かない?」
「うん、いいよ」
「お婆ちゃんもいい?」
「いいよ」
頑張って笑顔を作る未来ちゃんの為に私とお婆ちゃんも笑顔を作る。少し心配だけど、私もお婆ちゃんも未来ちゃんを側で支える事しかできない。
いつか、さわちんを叱りたい。好きな女の子を悲しい顔にさせるなんてダメだよって。
今日は大晦日だから、まだ神社には人が殆どいない。夜が多いんだろうな。私は毎年紅白を見て、年越し蕎麦を食べて寝るだけだから夜に参拝に行くのに憧れる。
芽衣と手を繋ぎながら歩きたい。そして、年越しの瞬間を一緒に過ごしたい。
「お婆ちゃん、寒くないですか?」
「大丈夫だよ」
「未来ちゃんは大丈夫?」
「大丈夫、、くしゅん」
「ふふ、寒い?」
「大丈夫///…」
「はい、これ付けてると温かいから」
私は芽衣から貰ったマフラーを未来ちゃんの首に巻いた。私はよく芽衣やひかるに優しすぎると言われる。でも、私にはよく分からない。自分の行動なんて考えたことないから。
「温かい…///」
「良かった」
よし、そろそろ帰った方がいいかな。もう夕方だし冬は日が暮れるのが早い。私達は記念に近くにお店でお揃いの猫の人形のキーホルダーを買った(お婆ちゃんが買ってくれた)
「ありがとうございます」
「今日のお礼よ」
「大事にしますね」
よし、猫のキーホルダーを鞄につけれた。みんな色違いで可愛いし、お婆ちゃんと未来ちゃんとの思い出が出来て嬉しい。
お婆ちゃんも未来ちゃんも鞄につけ、嬉しそうにしている。
明日はお正月だね〜って話しながら私達はお婆ちゃんの家まで歩いていた。今日1日楽しかったなって、みんなで笑い合っていたのに…さわちんが私達を見つけた瞬間走ってきて未来ちゃんが私の服の袖をギュッと握る。
「未来!何で電話に出ないの」
「・・・ごめん」
「さわちん…落ち着いて」
「うるさい!何でまた水希がいるの!」
「爽子、やめて」
ちょっと待って。さわちんが私の服を掴み、めちゃくちゃ怒ってくる。これ、ヤバいかも…怒り方が殴られる勢いだ。
さわちんに何て言えばいいの、、説明しずらいしお婆ちゃんがビックリしている。
「未来に手を出すな!」
「さわちん、誤解だよ!そんなんじゃないよ」
「爽子、水希ちゃんから手を離して」
「うるさい!」
あっ、さわちんが未来ちゃんの手を振り払った瞬間バランスを崩した未来ちゃんが後ろに倒れていく、、うぅ…痛い。何とか未来ちゃんを庇う様に抱きしめ、そのとき腕が壁に激突した。
さわちん!未来ちゃんが壁にぶつかったらどうするの。怪我でもしたら危ないじゃん。
お婆ちゃんが心配そうにしてるし、もっと周りの状況を見てほしい。私が頑丈でよかったよ、、ただ。腕が痛いー。
「ごめん、、未来、大丈夫」
「爽子、帰って!水希ちゃん、、大丈夫?」
「うん、未来ちゃんは怪我はない?」
「大丈夫…ありがとう、、」
空気が重い。さわちんがショックを受けた顔をしている。私は未来ちゃんに大したことのない怪我を心配されてシドロモドロする。
だって、腕をぶつけただけだし血も出てないし…こんなの怪我に入らないよ。
どうしたらいいの、、2人できちんと話し合った方がいいと思うけど…私は未来ちゃんに腕を引かれお婆ちゃんの家まで歩いていく。
意外に力が強い…さわちん、置いてきていいのかな?今にも泣きそうな顔をしているよ。




