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第3話 クラス分け

 入学式が終わって、生徒達は講堂からぞろぞろと移動し始めた。講堂から廊下に出て、少しの間歩くと廊下の壁の前に人垣ができていた。私はそれを指差した。

 

 「あれがクラス分けの掲示かな?」


 入学式の最後に、後頭部が禿げ始めているおじさんが、廊下の壁に張り出されているクラス分けを確認するように、言っていたような言っていなかったような……。

 私は入学式の間、睡魔と格闘していたから、壇上で話されていたことをほとんど覚えていない。


 「ああ、そうだろうな」


アレンがそう言って、私たちはクラス分けが貼られた壁の前まで歩いて行った。


 クラスはAからJまでの十クラスに分かれていて、ちょうど一クラス三十人ずつに分かれている。私の名前は一番最後のクラスJクラスにあった。

 私はふと疑問に思ったことをアレンに尋ねた。


 「あのAクラスだけ別のところに貼り出されているけれど、どうしてかな?」 


BからJクラスは同じ一枚の紙に名前が書かれているのに、Aクラスだけ別の紙で貼り出されている。


 アレンは呆れたような声を出した。


 「一体、セシリアはこの学園に何のために来たんだよ?」


 「もちろん、勉強のためでしょう?」

 

 アレンは何をそんな当たり前のことをたずねてくるのだろうか。


 「セシリア……。よくそんなことを言えるよな……。ちゃんと学園仕組みぐらい知っておいてから言えよな。」


 「うぐぅ」


 そう言われるとぐうの音も出ない。だけど、それは仕方ないじゃないか。わけも分からないまま馬車に乗せられて、この学園に連れてこられたのだから。それに入試の成績が悪いのは別に、今の私のせいではないのだし、ゲームの中のセシリアがちゃんと勉強していなかったからなのだから、私に非はない。


 「一回しか言わないから、ちゃんとそれで覚えろよ」


 「そんなに私のことをバカだと思っているの?」

 

 「思っている」


 そうアレンに真顔で言われると、心がちょぴり傷つく。


 「それで、どうしてなのよ?」


 「BからJクラスは、成績順とかじゃなくてバラバラにクラスが分かれているけれど、Aクラスだけは入試の成績の上位三十人からなるクラスなんだよ。

ちなみに俺もそのAクラス」


 アレンは自慢げに自分の事を指差した。


 「なに、バカな私に対しての当てつけかしら?」


 「さぁー、どうだろうね」


 アランのニヤニヤとした顔が無性に腹立たしい。ふつふつと怒りがわき上がってきた私は、心にもないことを口走ってしまった。

 

 「いいわよ、そこまで言うならやってやろうじゃないの。来年になったらクラス替えがあるのでしょう? そうしたら、アレンと同じクラスになって、あんたをぶっ飛ばしてあげるわ」


そう高らかに宣言した私は、アレンを指でびっしと指差した。


アレンはケタケタと笑いながら「そうかい、期待しているよ」と言ってきやがった。絶対に無理だと、そう思っている様子だ。


 「それじゃあ、私は自分の教室に向うから」


私はそう伝えて、まだ笑い続けているアレンを残して歩き出した。








私のクラスは校舎でも端っこの方にあった。長い廊下を進んで、クラスの前にたどり着くと、ドアを開けて中に入った。


 私が教室の中に入ると、さっきまで賑やかにおしゃべりをしていた声が少し静かになったような気がしたけれど、それはきっと気のせいだろう。 


 私は、黒板に貼ってある座席表を確認した。私の席は、窓際の列の最後尾。教室の端っこなんて、クラスメイトからの干渉を受けにくい場所で、なかなかに良い位置じゃないか。


 私は並べられた机の間を縫うようにテクテクと歩いていって、自分の席にたどり着くと、ポンと鞄を机の上に置いて椅子に座った。


 すると、二人の女子生徒が私に近付いてきた。このタイミングで私に話しかけてくるなんて怪しすぎる。

 これはいわゆる、私の取り巻きと呼ばれる人達なんじゃないか。つまり、私を焚きつけて、主人公の恋路を邪魔するように仕向ける悪い輩である。お近づきにならないのが私の身のためである。


 名前がわからないから、とりあえず、背の高い方を取り巻きA、ぽっちゃりとしている方を取り巻きBと名付けておこう。


取り巻きAが先に口を開いた。


 「セシリア様がAクラスじゃないなんておかしいですよ」


そして、取り巻きBがそれにウンウンと頷いて同意する。


 「そうですよ。本当はセシリア様は、実力があるはずなのに、入試の日は体調が悪かったのですか?」


 どういうわけだろうか。さっきアレンの話だと、私はこの学園に下から三番目で入学したと聞いたのに……。どうして、彼女達は私が頭が良い、天才だと、そう信じて疑っていないのだろう。


 まさか、アレンが私に嘘をついたのだろうか。本当はゲームの中の私はバカではなかったのか。だけれど、アレンが私にわざわざ嘘をつくとは思えない。


 そうか、嘘をついていたのは私だったのか。

 なんだか、ゲームの中の私が、恋路を邪魔しようとし出したのが分かったような気がする。

 ゴテゴテと偽りの装甲を自分の周り貼り付けて、架空の自分を演じるのが疲れて、主人公にその鬱憤を晴らしていたのかもしれない。


 私は取り巻きA、Bにぎこちない笑みを浮かべて言った。


 「そうね……、入試の日は調子が出なかったのよね。ウフフ……」


 「「やはりそうなんですね」」


 二人の声が重なって、納得してしまったようだ。チョロい、チョロすぎるぞ、取り巻きAとB。

 普通の人だとしたら、今のでは絶対に欺されないだろうに。


 



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