黒い空
狭いアパートに閉じこもって
同じ夜ばかり過ごすのに
嫌気がさしてきたから
久しぶりに用事もない外出をしている
居酒屋 家電量販店 駅のターミナル
ただ歩いているだけで
知りたくもない他人の性格や人生が
透けて見えてくる
苦労を乗り越える道のりも振り返れば
楽しかったとかいう声達が嫌に耳につく
苦労を終えたから言えるんだろ
そんなに苦しみたいのか
苦しみが大きいほど努力は尊いのか
手応えの拠り所として苦労を誇示するな
能天気な声達に浴びせてやろうと
用意してた罵声が頭の中で繰り返される
励ましの言葉の多くは
励ます奴自身のためのものだ
安全地帯に入れた奴らがくれた
励ましなんてちっとも響かない
頑張れという声の中に
それを言える立場になったことへの安堵が満ちているから
もがく日々の中で見た夜空の闇の重さを忘れたのか
忘れるものか
だから僕は挑戦なんてとっくに捨ててやった
おかげで平穏な日々が始まった
それが今だ
新しい日々を生きることなく
過去の傷口を思い出し
それが増えないよう身を護るための日々だ
それもまた虚しいことくらい
とっくに自覚してるが
だからと言ってまた苦しみに飛び込みたくもない
また今日が終わろうとしている
この街はうるさすぎる