魔物狩猟の助手
その夜、恐ろしく長い夢を見た。あまりにも長い夢だったので、いくつかの断片が記憶に残るだけで、正確なところは何も分からなかった。ただ、その断片があまりにも鮮明だったので、僕は夢から覚めた後もなんだかぼんやりと地に足がつかないような、そんな状態だった。
僕はその夢の中で誰かの名前を叫んでいた。その誰かはどこまでも遠くに行ってしまうようで、僕はただ叫ぶことしかできなかったのだ。そして次の場面では、僕は魔物の肉を貪り食べていた。まるで何かに取り憑かれたように血の滴る肉にかぶりついていた。夢の最期の場面では、何かが砕け散っていた。巨大な力でなんの躊躇もなくそれは砕け散った。
僕は恐怖で目を覚ました。それが夢であることはすぐに分かったけれど、僕の体は恐怖で少し震えていた。
そしてその後、夢の中で自分が魔物の肉を食べていた場面が蘇り、ひどい嫌悪感に苛まれた。
この国では魔物を生きたままで食べることは法律で禁止されており、また倫理上の観点から言っても決して許されることではなかった。
どうしてこんなおかしな夢を見たのかよく分からない、朝から僕は気分が沈んで食事を取ることができなかった。
このまま家にいてもどうしようもないので、気分転換に外に出ることにした。
街をぶらぶらしながら、なるべく僕は気分を落ち着かせようとした。ウリは今何しているだろうか?ひとまずウリに連絡を取ってみることにした。何度か連絡してみたけれど、ウリにはつながらなかった。そして、ウリからの連絡もそれからくることはなかった。
僕は本当に何のあてもなく街をぶらついていた。とにかく何でもいいから気をまぎらわせたかったのだ。
しばらくの間そんな状態が続いた後、ふとある張り紙が僕の目の中に飛び込んできた。
「魔物狩猟の助手を募集。経験・資格問わず。連絡先……」
僕はなんとなくこれは何かの啓示なのではないのかとか考えてしまった。その時そこに行ってどうなるのかなんて全く考えもせず、気づくと僕はその連絡先に電話していた。
しばらく着信音が鳴った後、電話口から幼い女の子の声が聞こえてきた。
「もしもし、こちらヤブサカですが。」
「あのぉ…張り紙を見てお電話させていただいたのですが、魔物狩猟の助手を募集してるとかで…。」
「あぁ…はい少々お待ち下さい。」
僕はしばらくの間、電話口で待っていた。
(なんか幼い女の子の声だったけど…、本当に大丈夫だろうか?)
「お待たせしました。えっと、明日なんですけど今から言う住所のところに来ていただけますか?」
「明日ですか…?大丈夫ですけど…、何時頃行けばよいでしょうか?」
「えっと、朝の5時ぐらいにお願いします。」
(かなりの早朝だな…)
「…分かりました。」
「はい、ではよろしくお願いします。」
僕はそれから家に帰り、明日の準備を始めた。何を持っていけばいいのか全く分からなかったので、とりあえず必要そうなものをかき集めて、大きなリュックに詰め込んだ。
それからもう一度ウリに連絡してみたが、今度もまたつながらなかった。
(魔物狩猟の助手って何をやるんだろう?)
僕はしばらく想像を巡らせてみたが、あまりうまくはいかなかった。そうこうするうちに僕はいつのまにか眠りに落ちていた。
目を覚ますと深夜の2時過ぎだった。僕は準備したリュックを抱え、自転車に乗って家を出た。2時間ほど自転車を走らせ4時半ごろには教えてもらった場所に到着した。でもまだそこには誰の姿もなかったので、その辺のベンチに腰を下ろし、ぼんやりとしながら誰かが来るのを待っていた。
周りは朝靄で白く煙り、周りに何があるのかもよく分からない状態だった。しばらくすると、その朝靄の向こう側から人影が見えてきた。はっきりとその姿が見え始める頃には、その人影はもう僕のそばまで来ていたので、なんだか突然煙の中からマジックみたいに人が現れたような感じがした。
そこにはまあまあヨボヨボの老人と可愛らしい女の子が立っていた。
「どうも、昨日お電話をいただきましたヤブサカです。こっちは私の祖父になります。」
「あっどうも、今日はお世話になります。よろしくお願いします。」
「お前さんかえ、魔物狩猟の助手をしたいというのは?」
老人が突然喋り出した。
「小遣い稼ぎかのう?それとも魔物狩猟者にでもなりたいのかのう?」
「えぇっと、はい実はどちらもなんです。」
「フォッフォッフォッ、そうかそうか。じゃあ早速、魔物を獲りにいこうかのう。」
老人はスタスタと歩き始めた。僕も置いていかれないように、慌ててそれについていった。そして、僕の後ろからは女の子が付いてきた。僕らはそんな風に縦に並んで山の方へと歩き続けた。




