一尺やかんの神様
私は今どんな顔をしているのだろうか―――
65年生きてきた中で、最も間抜けな顔をしているのではないだろうか―――
おそらく65年生きていなくても、誰だってそうなるはずだ―――
草野大二郎(65歳)は夜間のビル警備のため、灯りのない裏口から地下一階にある警備員用の宿直室へ向かっていた。
古いビルで電灯設備もまともになく、暗闇に包まれた廊下をビルの裏口に常備されている懐中電灯で足元を照らしながら歩く。暗闇の中、草野は自分の足音だけが響く廊下にいつにも増してとても寒々しい感じがした。
しばらく歩き、廊下の突き当たりを曲がると奥に一部屋だけ灯りが漏れているところがある。草野はいつも通りにその部屋の扉を開けた。
「お疲れ様です」
草野は8畳の縦長な宿直室へ入ると持っていた懐中電灯の灯りを消し、外開きのドアを閉めた。
「ああ、お疲れ様です。もう交代の時間ですか」
その聞き覚えのある声に気付いた草野は、部屋の入口からみて左奥の4畳半の座敷部分で読書をしている男の顔を確認する。白髪交じりの短髪に眉間に福沢諭吉のようなホクロがある。更に、草野を確認する事なく本を読み続けている。
間違いない、いつもの浅野さんだ―――
「今日は浅野さんと交代でしたか。それにしても今日は冷えますね」
草野は本を読み続ける浅野の返答を待ちつつ両肩を摩り、制服を着替えるため入口のすぐ右手にある4台並んだロッカーの方へ身体を向ける。一番奥にあるロッカーの前で足をとめて扉を開こうとすると、浅野の温和な声がそれを止めた。
「確かに冷えますね。でも草野さん、寒そうにしている割には随分と厚着に見えますよ」
草野は自分の服装を確認した。
首にはネックウォーマー、フードの付いた黒のダウンを羽織り下には白色のニットのセーター、更にその下には保温性の高いゴアテックスインナー。どちらかと言えば暑がりの草野自身も普段以上の防寒っぷりに驚きはしたが、それ以上にとにかく寒かった。
「ハハハ、やはり歳には敵いませんな。しかし、浅野さんもよく(警備員用の)ジャンパー無しでこの寒い部屋にいられますね。ロッカーからジャンパー出しましょうか?」
振り返り浅野さんを見ると、まだ本を読み続けている。確かに浅野は読書家ではあったが、草野との会話を遮るほど熟読するタイプではなかった。それ故に草野は気になった。
そこまで浅野さんを夢中にさせる本とはどんな本なのか―――
草野は息を殺し、本のタイトルを見ようと浅野の方へ近づこうとすると浅野は素早く片手を突き出して草野を制止させた。
「私には不要ですよ。それにもう交代の時間ですから」
「そう言えば、そうでしたな」
いつもの浅野なら、自分から進んで読んでいる本の紹介をするのに。どうやら今日は気分が良くないみたいだ。浅野さんも私と大して年齢は変わらないのだから、昼からの警備できっと疲れているのだろう―――
草野は軽く笑いながらロッカーの方を向き、本のタイトルを見るのを一旦諦め制服に着替える事にした。
ダウンを脱ぎ、ロッカーにあったハンガーにかけ、ニットのセーターを脱ごうとした時だった。
「では、私はこれで失礼します」
咄嗟に草野は浅野の声が聞こえたであろう部屋の入り口付近に身体を向けた。ドアが空きっぱなしで既に浅野の姿は無く、通路を覗くと制服のまま歩く浅野さんの後ろ姿がみえる。
草野は声をかけようとしたが、すぐに暗闇へとその姿を消してしまった。
「今日はどうしたんだろうか……制服のまま帰宅するなんて……」
しかし、よく考えてみると制服管理も仕事のうちだ。きっと、制服をクリーニングに出すために着替えるのが面倒で、そのまま帰ったのだろう―――
「それにしても寒いな」
ドアを閉めロッカーの前に戻った草野だったが、着替える前に少し温まろうと座敷にある電気ストーブへと向かった。宿直室には暖房設備がないため、いつもは電気ストーブを利用していた。更に言えば、浅野と交代する際は草野がこの電気ストーブの電源を切る事はあっても入れる事はなかった。
そう言えば、どうして浅野さんは電気ストーブを使っていなかったのだろうか―――
「……あれ?」
電気ストーブのスイッチを押すが反応がない。プラグを確認するが、ちゃんとコンセントに刺さっている。プラグを抜き、再びコンセントにさしこみ電源を入れるが変わらず反応がない。
ああ、使っていなかったのではなく、使えなかったのか。どうやら、電気ストーブは壊れているらしい。仕方がないな、何か温かいものでも飲むか―――
宿直室内には台所があり、ガスコンロが1台と小さな流し台、上と下には開き戸がある。草野は電気ストーブを諦めると、泣く泣く座敷すぐ横にある台所へ向かった。
上の開き戸からインスタントコーヒーの瓶と紙コップを取り出すと、次にお湯を沸かすためのやかんを出すために下の開き戸をあけた。
「えっ」と草野は思わず声を漏らす。
そこには、直径約1尺(直径30センチ)ほどのやかんが1個だけ置かれていた。
「こんなデカイやかん、宿直室にあったか? それよりも、こんなデカイやかんがあるのか?」
疑問に思いつつも手に取ってみるとヤカンにしてはやけに重かったが、その重さに不思議と懐かしさを覚えた。しかしこんなサイズのやかんを見た記憶はなく、どうしてなのか草野自身も分からないでいた。
なんだろうが、やかんはやかんだ―――
草野は一尺やかんの蓋をあけ、台所の蛇口を捻り、水を入れた。
1人分の量ならやかんの1割から2割程度の水を入れれば充分だったが、暖房器具が壊れている事を思い出し沸騰したお湯の蒸気で少しでも部屋を暖めようと考えた草野は、やかんの5割程まで水を入れコンロに置き、火をつけた。
お湯が沸くまで、コンロの火で手を暖めようと思い、手を一尺やかんの方へ近づけた時だった。
やかんを火にかけて数秒しかたたないというのに、やかんのフタがカパカパと音を鳴らし始める。草野は蓋のハマりが緩く、鳴っているだけなのだと思った。しかし、カパカパという音は次第に大きくなり、まるで既に沸騰しているかのような勢いで激しく蓋が上下し踊っていた。
さすがに気になり、水の具合を確かめる事にした私は踊る蓋に手をかけようとした。
『おい、触れるな』
草野は辺りを見回した。
誰もいない。気のせいだったのか―――
草野はもう一度、蓋に手をかけようとする。
『蓋に触るなと言っている。理解できないのか』
やかんの蓋が人間の口のように、言葉にあわせ動いているように見えた。
偶然か?―――
もう一度辺りを見回した。もちろん誰もいない。
草野は馬鹿らしいとは思ったが、やかんに話しかけてみた。
「あなたが喋っているんですか?」
『無論だ。我は神である』
草野の身は一瞬固まり、思い出したかのように背後にあったロッカーへ後退り激突した。
私は今どんな顔をしているのだろう―――
65年生きてきた中で、最も間抜けな顔をしているのではないだろうか―――
おそらく65年生きていなくても、誰だってそうなるはずだ―――
なぜなら『やかん』が喋ったのだから―――
「やかんが、しゃべった……」
『神であるからな。この世の理を超えても不思議ではないだろう』
神なら、きっとそうだろう。確かに私は敬虔なキリスト教徒だが、それがやかんでは信教心も何もない―――
「……本当にやかんが喋っているのか? 誰かどこかに隠れているんじゃないのか!」
『現実にこうやって我が喋っているのだ。我以外の誰の言葉でもない』
「あー! そうか、浅野さんだな! 制服のまま出て行ったからおかしいと思ったんだよ!」
草野は宿直室のドアを開け、廊下をみるが誰もいない。
『理解できたか? そんなことより早くしないと時がないぞ』
草野はドアノブに手をかけたままやかんの方を振り返り、恐る恐る『時』とは何かを尋ねた。
『我は神であるが、我の中の水が沸騰してしまうと我は消えてしまう。故に時がない』
やかんの神が私を急かす理由は何なのだろうか―――
「……では、私は何をすれば良いのでしょうか」
『願いを申してみよ。御主の願いを一つだけ叶えてやろう。ただし、我はやかんの神である故、何かをあたためる事しかできぬ』
「何かをあたためる願い?」
『我の中にある水が沸くまでに、よく考えてみよ。御主が一番あたためて欲しいものは何だ?』
どうやらこの神様は限定的ではあるが私の願いを叶えてくれるらしい―――
自分に害を及ぼすわけではないのだと感じた草野は一旦ドアを締め、ドア付近、一尺やかんの姿を確認できる最大限離れた場所に身を固定した。
「ちなみに何でもいいんですか? あたためるモノは?」
『無論だ。物でも人でも、あたためる事ができるものなら何でもだ。ただし、叶える願いは一つ、よく考えよ』
草野は腕を組み、考える。
まず、はじめに浮かんだのは《 この部屋、もしくは身体をあたためる 》だった。
しかし、そんなものは一時的なものであり、せっかく神様が目の前にいて自分の願いを叶えてくれるのだから何かもったいない気がする―――
「んー、あたためる……あたためる、ねえ……」
『念の為もう一度言うが、制限は我の中にある水が沸くまでだ。時は有限であるぞ』
「……わかりました」
次に頭に浮かんだのは《 懐をあたためる 》だった。
最近、妻が色々と買い物をしているらしく私が自由に使えるお金が無い。それでよく喧嘩をしている。
妻が何を買おうと自由だが、お金はある事に越したことはない。それにもうすぐ定年退職だ。警備の仕事は身体が続く限りやろうとは思っていたが、それもこれも老後の安定のためであり、ゆったりとお金をつかって余生を過ごすのも悪くない。よし、とりあえず訊いてみるか―――
「あの、すみません。願いに関して質問があるのですが、よろしいでしょうか」
『なんだ、申してみよ』
「言い回しみたいな……そうですね、例えば《 懐をあたためる 》なんかを願った場合、どうなるのでしょうか」
『言葉の通りに、あたためる。懐をあたためるだけだ』
「なるほど……」
なんだか怪しい。それに相手は自称ではあるが神様だ。浅野さんの影響で多くの小説を読んできた私だ。
こういう展開の小説だと大抵は神様相手に卑しい願いをして痛い目をみる展開が定番だろう―――
『では、懐をあたためる、でよいか?』
「いや、待って下さい。もう少し考えさせて下さい」
『よいが、我の中の水が着々と熱くなっているのを感じる。時は止まらぬぞ』
「わかっています」
どのみち、叶えてくれるって事なら何も言わなければ言わないで私には害はないだろう。タイムリミットがあろうが、私には関係ない。それに冷静に考えれば、やかんが神様なんて馬鹿らしいじゃないか。神様を自ら名乗る奴に、まともなやつはいない。少なくとも私の歩んできた人生の中にはいなかった―――
草野がしばらく黙っていると、一尺やかんが尋ねた。
『御主は我を見たとき、何も感じなかったか?』
どういう事だろうか。私はこんな喋るやかんを見た事がない。つまり、記憶があるかどうかの意味ではなく、言葉通りの『どう感じたか』って事でいうなら、まずやかんのでかさに驚いた。喋る事に関しては腰を抜かしそうだったな。あとは――――
「懐かしい感じがしました」
気付くと草野は声にだしていた。同時に、草野は1人娘の事を思い出す。
草野には娘がおり、5年前に嫁にいって以来、娘とは会っていない。理由としては、娘が外国人と結婚して相手側の国にいる事が大きかった。
まあ、結婚には反対していたからな。娘も娘で会いづらいのだろう。それに妻とは連絡を取っているみたいだし、きっと元気にしているのだろう。それに会えないわけではないんだ。いつか向こうからノコノコと孫でもつれて帰ってくるさ―――
『何故、泣いている?』
やかんからそう言われ、草野は顔に手をやった。
草野の目からは大粒の涙がボロボロとこぼれていた。
「わかりません。なんだか急に娘の事を考えていると涙が出てきて……」
『そう……か……』
「どうしたんですか?」
草野は涙をぬぐい、やかんを見ると蓋の隙間から薄らと湯気がでていた。
『……最後だ…願いを…申し…み…』
何故、こんな声を途切れさせてまで私に願いを訊くのか―――
やかんの神様が唯一してきた質問で何故、娘の事を思い出したのか―――
私が一番あたためて欲しいもの―――
「私の心をあたためて下さい」
言い終わるのと同時にやかんの汽笛が鳴り、誰もしゃべらなくなった宿直室の空間には汽笛音だけが響き渡る。草野はしばらくやかんの反応をみていたが、蓋が動く事はなかった。しばらく茫然としていたが、やかんの汽笛に急かされ戸惑いながらもコンロに近づき火を止めた。
その瞬間、停電したかのように急に視界が暗転する。暗転と同時に、草野は悪寒と身体の節々が痛くなるのを感じた。それもただの痛みではない。猛烈な痛みだった。
草野はあまりの痛さに目を閉じ、寒さに膝を折ってその場に縮こまる。
痛い、寒い、痛い、寒い、痛い、寒い、痛い痛い痛い―――
あまりの痛さに甲高い一本調子の嫌な音が耳に響いていた。しかしその音は次第に小さくなり、遠くの方から微かに女性の声が聞こえ、徐々にハッキリとしてくる。
「……お……おとう……おとうさ……おとうさん……お父さん!」
次に目を開けた時には、一転して辺りがまぶしかった。
ぼやけていた視界がゆっくりと明順応していき、まず草野の目に入ったのは白い天井だった。身体を起こそうとしたが力が入らず、眼球だけを左右に傾ける。
草野の目に映ったのは心配そうに覗き込む5年前より少しだけ髪が短くなった草野の娘の顔があった。娘は今にも泣きそうな表情を浮かべている。
草野は娘に話しかけようとしたが、口を動かそうとすると顎に激痛が走った。痛みで少し身体が揺れ、それに気付いた娘が慌てた様子で草野に話しかける。
「お父さん! 聞こえる? 聞こえるなら瞼を一回閉じてみて!」
草野は娘の言った通り、瞼を一回閉じた。
娘は口に手をあてると涙を流す。そしてすぐさま後ろを振り返った。
「お母さん!お母さん!お父さんが――お父さんが目を覚ましたよ!」
娘がそういうと、草野の視界からは見えないところにいた草野妻が視界にゆっくりと顔をのぞかせる。
「あなた……聞こえているの?」
娘はもう一度聞こえていたら瞼を一回閉じるように言ったので、草野は言われた通りにした。
「……あなた……よかった……本当によかった……」
そういって草野の妻は口に手をやり涙を流し、娘は草野の頭上辺りにあったブザーボタンを何回も押した。しばらくするとドアが開く音がして草野視界に娘や妻とは別の女性の姿が映る。
看護師さん―――
「どうされました?」
「父の意識が……もどりました……」
看護師は驚いた様子で「わかりました、すぐに先生を呼んできますね」と再び部屋を出て行った。
草野の意識は朦朧としていたが、それでも理解できる事はあった。
ここは病院か――
月日は流れ、半年が経った。
草野は喋れるまでに回復していた。喋れるようになった草野の第一声は「何故、私はこんな大けがをしているのか」という疑問だった。
草野は怪我の原因を思い出せないでいた。更に半年の間、妻や娘が交代で会いに来て様々な話をしてくれたが怪我の理由だけは聞かされなかった。
しかし、その理由を担当医から聞かされ草野は再び言葉を失った。
草野は同僚の浅野さんと二人で冬登山に行き、二人とも崖から滑落した。草野は全身骨折で意識を失っていたらしく、救急の連絡をいれたのは浅野だった。浅野は自分より酷い怪我を負っていてまだ息のある草野を生かそうと、自分の着ていた登山用ジャンパーを草野に着せた。結果として草野は生き残り、浅野は凍死した。
担当医はそれらを述べた後、浅野を褒めたたえ悔むと「奇跡です」と付け加え、去って行った。それを聞いた草野は酷く傷心し、浅野を冬山に誘った事を悔んだ。
ある日、数日経っても顔色が暗い草野を見かねた娘が話しかけてきた。
「お父さん。私にくれたやかんの事、覚えてる?」
「やかん?」
「そうそう。あの大きなやかんだよ。私が日本を出る時に無言でくれたじゃない」
「もしかして、あの蓋の緩いやかんの事か?」
「そう、それ!」
その瞬間、猛烈な勢いで記憶がよみがえる。
そうだ、あのやかんは一尺やかんだ―――
一尺やかんは私の祖父が使っていた物だ―――
祖父は生前から物を大切にする人で、特に一尺やかんはお気に入りだった。それを私の父に譲り、そして私がそれを受け継ぎ、娘に渡した―――
そうか、それでなのか―――
「あのやかん、今どうしてる?」
「大丈夫よ、ちゃんと向こうの自宅でちゃんと見えるところに保管してあるから」
「……おまえ、知っていたのか。あのやかんの意味」
「うん、やかん貰ったあとにね、お母さんに聞いたの。あのやかんの意味……」
「……そうだったか」
「私、あのやかんの意味を聞いた時に泣いちゃった」
草野は祖父の言葉を思い出す。
「このやかんがあれば、どんなに水が冷めても家族の仲だけは冷めない。じいさんも良く言っていたな」
それを聞いた娘は少し間をおき、再び語りだした。
「ホントはね、彼とは何度も離婚しそうになってお父さん達のところに帰ろうと思ったの。でも、あのやかんを見る度に頑張ろうと思えた。だから、中途半端なままで帰るのが怖かったの」
「……そうか。で、今はどうなんだ?」
「良好よ。なかなか子供ができなかった事も理由としてあったんだけど、いま妊娠15週目よ。お父さん、ついにおじいちゃんになるのよ」
そう言って服を少し押し出したようなお腹を見せてきた。
「大丈夫なのか、妊娠しているのに飛行機なんかに乗って」
「ちゃんと向こうのお医者さんから許可もらったし、それにこっちで産むつもりなの」
「どうして、わざわざ……」
「向こうのお医者さんの提案なの。それで彼と話あったの。そしたら彼が「君は両親と5年も会っていないのだし、お父さんが危ないんだ。それに君が生まれ育った場所でストレス無く産むのがいいだろう」って」
「そうか、案外いい男だったんだな」
「私もそう思った」
涙が流れそうになる目元を抑えながら嬉しそうに語る娘をみて、草野も自然と微笑んでいた。そんな草野の表情をみて、娘も笑う。
きっと、私を生かそうとしてくれたのは浅野さんだけではなかったんだな―――
「なあ……」
「なに? お父さん」
「神様ってもしかしたら本当にいるのかもしれないな」
「どうしたの、急に」
再び笑う娘を見ながら、さっきよりも少し膨らんだかのように思える娘のお腹に目をやった。
それを見て草野は深々と思う。
この話をどうやって孫に伝えようかと。