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9回裏2死1.3塁 一点負け スラッガーでもないけど逆転するまで。

作者: 探丼 芥介

明日は駅に7時には集合、現地でアップ。

試合。

この試合が夏の命運をかける。

負けで終わっても構わないから一矢報いて終わりたい。


野球の夢を見た。

小さい頃3人でキャッチボールしてる夢。

野球に関わる最後かもしれないという恐怖がそんな夢を見せたのか。




ピピピピ ピピピピ ピピピピ




目覚ましがなる。



よっしゃ!着替えて朝飯食っていくか。

まだ5時半駅まで遠い。しっかり食べてでる。



「いってきます!」


「行ってらっしゃい。後で見に行くね」


今日がはじまる。


  暑い暑すぎる


  けど全然この夏が終わってほしいと思ってるわけじゃない。

 むしろ今この瞬間が終わればおれはこの瞬間の先ある後悔を元にこれからの人生いき続ける気がする。



  長谷川智行は8番の背番号を背に手と額は汗ばみながらも思考は冷静に考えていた。


  この試合は県大会2回戦なのでまだ全然甲子園まで先が長い。しかし智行にとってそれは関係ない。

 今正に目の前の状況こそが智行にとって最大にして最高のピンチでありチャンスであった。


  マウンドはクソ暑い。

 灼熱で吐きそう。

 クーラーかけて欲しい。


 そんなことを思いつつも智行はこのマウンドに上がることを辞めることは無い。

 自分が甲子園行ってプロになるなんて大層外れた夢を智行は持ち合わせていないが小さな夢はあった。


 県内でもベスト4の強豪、智弁東蔭に一矢報いてこれを機に幼なじみのマネージャーに告白することだった。

 

  もちろん付き合うとまで行かないことは重々承知。

 なぜならマネージャーの美由紀は同じく幼なじみのキャプテンでピッチャーの大河が昔から好きだからだ。

 大河も昔から美由紀のことは好きだった。


 お互い告白してる所まで見た。

 死ぬほど悔しくて、あいつになりたいって心の底から願ったけど、でもあいつならいいやってなんか諦めもついた。


 けどこの夏が終わるまで付き合わないって決めてるらしい。


 すげえって思った。


 恋愛ってその人といることを楽しむとかがメインかなって思ってたりしたけど信じて待てるのも恋愛なんだって思わされた。

  こんなことばっかり頭の中で考えてると恋愛沙汰のために野球してるように思われるかもしれない。


  全然違う。


  もちろんそれもあるけど、それ以上にこの仲間たちといるのが最高に楽しくて、しんどさなんてふっとんでしまうから。


 美由紀がマネジやるっていう理由で高校ても野球やるっていやいや決めたけども大河と一緒にバッテリー組めてよかった。

 あいつが指名したから俺になった。俺を指名してくれたことに感謝してる。

 

  無心でクリアに感謝や葛藤を繰り広げつつマウンド上のピッチャーを見つめる。


 よく研究したピッチャーの大友だった。

 145キロを超える速球をなげ、変化の球種はふたつだがスライダーが半端ない。

 この大会始まるまでにまた腕を上げたのかカスリすら出来てない。

 ほかの球種に絞ってなんとか打ってるいに出てる。それでもあと2点たりない。


  大友の長い腕から白い閃光がほとばしる。


 何度も見たこのまっすぐ伸びる白球にそれを返すように金属バットを降る。



「カッ」



 高めの鈍い音がなった。


 少ししたを叩いた。

 ボールは後ろにそれてそのまま壁に当たった。



「ファウルボール!」



 審判の声が耳につんざく。


  大友がセットポジションに入った。

 一塁手が走り出した!


(盗塁!!)



 頭の中でそう感じながら大友の右腕から放たれるスライダーが吸い込まれるようにキャッチャーのミットへ。


 バットは空を切っていた。



 振るしかなかった。

 走り出した時点で振らないとキャッチャーの視界をクリアなまま2塁への送球をさせてしまう。

 完全なボール球だった。


 2塁への送球は盗塁を成功させた。

 しかし最後の打者になるかもしれない、智行はピンチに追い込まれた。



 3:4 9回裏2アウト2.3塁 2ストライクノーボール



  テレビ越しのおばあちゃんでもわかる超絶ピンチ。願掛けなんてするんじゃなかった。


 負けフラグ自分から立ててんじゃん!


  しかしそんな弱気な気持ちはつゆ知らず大友は残酷にもその白球を放つ。



「イカしてるくせにクソ野郎め!!」



 イケメンでキャーキャー言われててむかつく。

 イケメンじゃなくて部活に打ち込んで3年頑張ってやっとスタメンで、なのにキャーキャーいわれるのは大河ばっかり。

 そのくせアイツは一途!


 ちくしょーめ!そんなこと思いながらもしっかりボールは見極める。

 判定はボール。


 すげえキレのあるスライダー。

 キレキレすぎてキャッチャーたまにまじで掴めてなかった。

 こんなのストライクゾーン入れてくるんだからまじで化け物。取れるキャッチャーも結構すげえ。


 次はストレート

(これやばい!!)


 わかった瞬間手が出たがてるのが遅かった。



「チッ!!」



 なんとかかすった。

 ボールは後方にそれた。



「ファウルボール!」



「いやぁ長谷川くん最後まで粘ります!」


 聞こえるはずのない実況が聞こえてきたように感じた。

 大友が投げたボールがすっぽ抜けたのかすげえ下に落ちた。


 持ち玉のひとつフォークだ。

 もちろんボール。


  大友が深呼吸をした。

 来る。確信目いた何かがあった。


 大友のしなやかに伸びる右腕が綺麗な曲線を描く。



(ここだ!!)



 なんとまあ自分でも驚きなことに真芯を捉えた。


 おれは決してスラッガーじゃない。


 だからホームランにならない確信はあった。


 でも絶対に長打だ!!



「カィン!!」



 金属の響く高温。

 白球はのびた。

 3塁ランナー駆ける!


 なんとレフト前で地面にはねて高くバウンド!


 3塁ランナーホームイン!


 2塁ランナー3塁を蹴った!


 レフトからショートへショートからホームへ!



 (杉!!間に合え!!)


 キャッチャーへの送球は少し遅かった。でも目の前に立ちはだかるそのキャッチャーの大きな壁を横側からすり抜けるようにして2塁ランナー2年山杉は最後の点を取った。




 静まり返るマウンド。



 一瞬がすごく長かった。それくらい静かだった。



「うぁぁぁぁ!!!」

「いよっしゃぁぁぁ!!!!」

「いやったぁぁぁぁぁ!!!かった!かったぁぁぁ!!」



 激しい歓声。

 熱いこの灼熱のマウンドをひっくり返すほどの激しい声だった。


 優勝でもしたのかと言うくらいの歓声と雄叫び。

 よく分からないが大河は泣いてた。



「何泣いてんだよ。勝ったんだぞ!わらえよ!」


「智行。ズズ。。まじでありがと。」



 鼻をすすりながら大河は言った。

 俺の方こそお前のおかげだと言いたかったけど、まだ2回戦なのになにしてんだよ!って言われかねないし。

 次の負けフラグを立てたくない。


 監督から背中だけたたかれた。

 褒めることはしない主義の監督だけど目が少し潤んでだ。

 親指だけ立ててよくやったと言わんばかりの表情。


(こんな時くらい素直になれよハゲ)


 とか思いながらも内心感謝してた。


 相手チームは崩れていた。

 泣いていた。

 歓声に打ち消された無音の世界の中で悔しさにもがいていた。

 奇跡が数個起きてなんとか勝てた。もう1回やっても勝てるとなんて全く思えない。でもおれたちはなんとか勝てた。

 山杉の肩をなぐった。


「お前まじ天才!」


「あの場面で決めてる長谷川先輩にいわれたくないっす!今日のMVPは絶対先輩ですって!」


 俺も照れたけどいわれてすこし山杉も照れてた。いい後輩をもった。


  勝利の喜びも浸る余韻なく試合の幕を閉じ、俺達は帰路についた。

 次の試合も油断はできない。


 その前におれにはやろうときめてたことがあった。

 やろうと思った。行おうと決意してた。しかし、やっぱりあのイケメンやろうは全部もってきやがる。


 泣いてる大河の肩をたたきながら美由紀が一緒に歩いてる。

 こんな泣き虫野郎のどこがいいんだと思いながら、心底こいつよりいいやつなんていないだろうと思う。

 おれは持ち合わせた決意を。決起したこの思いを。



「次の試合でかったりにするか!」



 なーんてヘタレて同じ失敗をくりかえすのである。


 俺も早く諦め付けばな。なんて思いながら夕焼け空をみてると、


「先輩、女子校の同級生で先輩のこといいって言ってる子いるんすけど合コンでもします?」


 なんて山杉に声をかけられた。

 できた後輩だと、思う。

 まじで。


「お前はもうちょっと野球をまじめにやれ!」


 びしっ


「いた!先輩は真面目すぎっスよ!」




 とかアホなことしつつ、自分の切ない気持ちを誤魔化すことにした。

野球ものって初めて書きました。

こんな感じ出会ってたらいいんですけど。笑

まあ違くない?みたいなのあればレビューください。

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