謎を聞けば謎が来る
女の子の生意気な態度に思わず困惑してしまったミタ。
仙の言葉にも疑問が湧き、それを聞いて見るものの…
「他にも戦力になる者がいる。」
戦力ってどういう事?俺は仙さんの言ってることがよく分からなかった。なぜ能力が戦力に結びつくのか?結びついたとしてもこの言い方は自分たちは戦う前提で呟いたことになる。
「仙さん。それってどういういm...」
「なぁ仙さんよぉ。気になったことなんだけど、なぜミタが能力が使えると分かった時にタイミングよく俺らのところに来たんだい?」
自分が質問しようとしたタイミングでジンも仙さんに質問をした。少しムッとしたが、この疑問は自分でも抱いていた事だ。その事も気になる。自分の質問は後でもいっか。
ジンは続ける。
「いくら偶然だとしてもこれはタイミング合いすぎてだよ。」
「ジン君。世の中は偶然で出来ている。そんなことに突っ込みを入れたらキリがないよ。」
なんだただの偶然か。
「ま、私の能力でミタ君がこの時間、この場所で能力が使えるようになることは知ってたけどね。」
偶然じゃなくて必然かよ。
てことは仙さんも...
「能力を使えるの?」
「そう、私も使えるし、恐らく日本で最初に能力を使えるようになった人はこの私。実は世間を騒がせたあの文も私が出したものだ。」
昨日までの自分たちならこの話を聞いただけで驚くだろう。しかし科学的根拠がないことが起きた後だから誰も驚いていないだろう。むしろ、ふーんって済まされる。
仙さんは続ける。
「私はこのストラップで自分の知りたい未来を知ることが出来る。当たる確率は100%だ。」
ここで三穂が口を挟む。
「そんなニンジンのストラップで出来るわけないじゃん。」
「信じていないようだね。じゃあ実際やってみようか。」
そう言って仙さんは「もうすぐ何が起きる」とストラップに向かって聞いた。ストラップは数秒後に青く光った。そこに答えが書いてあるのか?あるいは起きることの映像が流れているのか。自分たちには見えないが、仙さんは理解したような顔で頷いている。
そして、
「ジン君の肩に鳥の糞が落ちる!」
あまりの規模の低さに思わずため息が漏れてしまった。
「夜に鳥なんて活動しているの?」
と呟いた時、どこかでカラスの鳴き声が聞こえた気がした。次に何かが落ちる音がした。
ぺチャ
全員の視線がジンの肩に集まる。落ちたね。白い液体の塊が。
「俺の肩に落ちたわ。ホントだったんだ。」
特にショックを受けている様子もなく、ただ鳥の糞を見つめるだけの彼がいた。
俺も三穂も、
「落ちたわね」
とか、
「ドンマイ」
などどうでも良さそうな感想を述べ、彼を地味に励ましていた。
謎の時間が流れたあと、三穂が仙さんに尋ねる。
「確かに使えることが分かったわ。でもいくら何でも能力使える人多くない?だって、使える人は宝くじ当てる人より少ないじゃないの?」
確かにそうだ。確率から見てはこれは多い。しかもこんな狭いところで既に3人はいる。
仙さんはなんかのスイッチが入ったように語り始めた。
「君たち確率を勘違いしているのではないか?」
「か、勘違い?」
「確率は言い換えれば『比』なんだ。例えば2分の1の確率で当たりが出ると聞いたらどんな解釈をする?」
「それは2回引いたら1回は当たりが出ると捉えるよな。」
「まぁそう思っても無理はないな。しかしあるクジは合計6枚あって当たりが3枚ある。でもランダムにしてあるから最初の3枚を引いたら全部ハズレ。そして残りの3枚を引くと全部当たり。部分によっては2回引いても当たるところはないよね。それでも当たる確率は?」
「2分の1だ!」
「もっとわかりやすく言おう。ある町の人口は百人。そのうち能力が使える人はたったの1人。さて能力を使える人の確率は?」
「100分の1よ。」
「そうだね。じゃあ2つの町がありどっちも人口百人だ。1つは能力使える人が2人いて、もう1つの町は誰も使える人がいない。各確率は違ってくるが、じゃあ2つの町で使える人の確率は?」
「100分の1、同じだ!」
「そう、だから確率は頼れないのだよ。言い方を変えれば全部同じ確率になる。それに宝くじの当たる確率と言っても誰も一等だけとは言ってない。六等まで入れるとこの状況は理論通りだからね。」
「あの、仙さん。あなたが言ってた、その、戦力ってどういう意味ですか?」
これ以上聞いたらショックで立ち直れないと思ったから話題を変えた。もう既に動揺していたからだ。
「そこのところは詳しく言えない。ただこれだけは言っておく。」
仙さんが背中を向けて、顔だけを自分たちに向けて、
「人間は便利を覚えたら絶対手放すことは出来ない。この能力もいずれ依存する。そして君たちは利用される運命だ。嫌でも使わなければならない時が来るということを覚えておくんだな。」
その時の顔は怖かった。まるで誰かを恨むような表情だった。仙さんは不気味な笑い声を残してこの場を去っていってしまった。
「な、なんなのよあいつ。」
三穂は強がる口調で言ったものの足が携帯かと思うぐらい震えていた。
この三人はさっきの恐怖とこれから起きる何もわからない恐怖で会話を出来る余裕は無かった。
仙は一体何者なんだ?
しばらくして恐怖から脱出した俺ら。そして夜の街に1人の青年の声が響く。
「うわぁぁぁ。俺の肩に鳥の糞落ちとるじゃん!ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ジンの声だった。
今更何言ってんだよ。