いつでも虹が見える程に眩く・・・。
女の子同士の恋愛話・・・ですね。
これはとある少女たちの軽いお話です。
太陽が照り付けていた。真夏の午後2時半ごろ。
校舎の陰でいちゃつく男女のカップルを
通りすがりに偶然見かけた。
多分自分よりも一学年上だと思う・・・。
「人目もはばからずよくやる・・・。」
自分たちよりも年下の中2女子に見られていようが
お構いなしとばかりにネチョネチョとくっついている。
「きもちわるい・・・。」
「本当だね~。気持ち悪いね・・・。」
突然真後ろで高い声のふんわりとした女子の声がして
驚いて後ろを振り向く。
長い黒髪ストレート、今時流行りのぱっつん前髪ではなく
少し下ろしている程度のナチュラルな素朴そうな髪型。
自分とは正反対に見えた。
自分は茶髪の軽いボブだったから、なんとなく違うなって。
ただそう思っていた・・・。
「・・・てか。なに?びっくりした・・・。
なんで貴方私の真後ろで・・・あんな・・・の
見てたの・・・?気持ち悪くないの???」
思わず出た言葉がそれしかなかった。
間抜けな質問を我ながらしてしまっている・・・。
「う~ん・・・。だって。気持ち悪いの1人で
見てるのってやじゃないですか?私は耐えられないから
「同じ女の子」の貴方の後ろで一緒になら・・・。
耐えれそうな気もして・・・(笑)。」
ふんわりとした見た目通り喋り方もおっとりとしていて
ふわふわしたショートケーキみたいに甘い女の子だと思った。
声も甘い砂糖菓子みたいで・・・。耳が溶けそうになる・・・。
「・・・声・・・可愛いね・・・。」
思わず思ったことをそのまま口にしてしまった。
きょとんとした彼女は一瞬目を丸くしたのちにクスッと
微笑して自分に対して話しかけてきた。
「う~ん。私は貴方の声の方が好き・・・。」
一瞬の軽い沈黙の後、驚いた私が慌てて否定した。
「な・・・!何言ってんの?私の声なんか全然可愛くないよ!
ハスキーでしゃがれてるしっ!男みたいじゃない?!」
「う~ん・・・。そこがいいんだよ~・・・。
私とは違う感じで・・・そこがいい・・・。
男みたいってことはないよ?貴方、あっちにいる
気持ち悪い男と自分のこと、同じみたいに言われたくないでしょ?」
「う・・・ま・・・まあ。それはそうね・・・。」
微妙に納得させられてしまう・・・。
「私、男が嫌いだから~・・・。貴方みたいなタイプの
女の子が男だったらよかったな~・・・。」
「へえ?男が嫌いなんだ・・・?私も割とそうかも・・・。」
「じゃあ。同じだね~・・・?」
そこでふと疑問符がよぎる・・・。
「えーと。じゃあ貴方は・・・男が嫌いなのに
その・・・私が「男だったらよかった」って
本気で思ったの・・・?今・・・。」
「!!!」
重めの衝撃を受けているらしい彼女・・・。
「それはやだ!!それじゃ意味がないっ!!
私、「女の子の貴方」の方がいいもんっ!!
いいに決まってる!!絶対だよっ!!」
また軽い沈黙が2人の間に流れた・・・。
「ちょっと待って・・・?貴方と私は・・・。
「今」出会ったばかりですが・・・。
なんでいきなり私がいいとか・・・言うの・・・?」
少しばかり眩暈が起こりそうだった・・・。
彼女がとんちんかんなことを言い出したせいと、
「こんなにも可愛い女の子」が「私がいい」とか
言い出している事実に正直戸惑ったからだ・・・。
「私じゃ嫌だったかな・・・?ごめんなさ・・・」
「違う!そうじゃないのっ!!」
彼女の言葉を最後まで聞かずに途中で遮った。
「・・・私は・・・嫌じゃないから・・・。」
風がふわりと吹いて木の葉が舞い、時間がスローモーションの
様にチャカチャカ動いた気がして気が付いたら・・・。
甘い・・・シャンプーの香りが顔に近づいてきて、
彼女の柔らかい唇がそっと私の唇に軽く触れた・・・。
「な・・・に・・・?」
「今。好きになったの。貴方の事・・・。嫌だった?」
「い・・・嫌じゃないけど・・・。なんでこんな・・・。」
砂糖菓子の様な彼女は長い髪を右手でかきあげて
少しばかり意地悪な言葉を吐いた・・・。
「私がしたことが・・・。嫌だった?気持ち悪かった?
あそこにいる・・・「気持ちの悪い人たち」みたいで・・・
「私が気持ち悪かった」・・・?」
「そんなわけないじゃないっ!貴方みたいな綺麗で可愛い
女の子が!「気持ち悪い」訳がないじゃないっ!!」
「・・・じゃあ・・・嬉しい・・・?」
今度は笑顔でそう尋ねる・・・。(やはり意地悪だ・・・)
「う・・・嬉しいって・・・言ったら気持ち悪い・・・?」
彼女と同じ質問を返した・・・。
「全然っ?私は嬉しいから嬉しいっ!!」
明るく弾ける様に笑う彼女は「綺麗」だった・・・。
思わず手を伸ばし、彼女を抱き寄せてしまった・・・。
「私・・・青空深春・・・。」
「私は遠凪綾音・・・。」
随分と遅れた自己紹介を交わし、またお互いの顔を
じっと眺める2人・・・。
「う~ん・・・。私はやっぱり、あなたの声も好きだけど
顔も好きかな・・・?何でかわからないけど・・・。」
「「う~ん。」が口癖だよね・・・?さっきからずっと
思ってた・・・(笑)。」
会話は噛み合ってない様に見えるがそんなことはお互いお構いなしだ。
空気が澄み切った様に「そこの空間だけ」が「綺麗」だった・・・。
遠くから見ていたらしい「気持ち悪い呼ばわりされていたカップル」も、
そんな2人の話を小声でしていた。
「女同士でいちゃついてるよ・・・キモ・・・。」
男の方が馬鹿にしたように哂う。
「・・・でも・・・綺麗じゃない・・・?」
女の方は素直にそう感想を述べたから相手の男は仰天して
「はあ?!じゃ、お前も「あーゆーの」になりたいの?!キモ!!」
「・・・なんかいいわもう。あたしも・・・あんな風に・・・
綺麗になりたい・・・なれないかな・・・。」
「はっ!じゃあ、別れてやるよ!知るかこんなキモイ女っ!!」
吐き捨てる様にそう言い放ちそれまで好き勝手に触っていた女を
いとも簡単に手放した男・・・。
「・・・汚れたあたしじゃ・・・。なれないのかな・・・?」
呆然とした女は遠くからずっと当の彼女たちを眺めていた・・・。
「なら変わればいいじゃんか。」
その女の後ろにいた女の友人が腕組みしながら話しかけていた。
「じゃ・・・。あんたとあたしで・・・「ああなってみる」?」
「ふう・・・。別に?あたしは構わないけどね・・・。」
主人公たちをよそにこっちはこっちでなんだか・・・な、
雰囲気になるから不思議なものである・・・。
「ね!虹が見えるよ~?」
「こんな晴れた真夏日って虹なんか見えるっけ?」
「見間違いかな?でもいいや~。貴方となら、
雨でも晴れでもいつでも・・・。虹が見える気がするの。」
「いいね。それ・・・。いつでも虹が見えるって・・・。
ずっと虹が続けばいいのにね・・・。」
真夏の日差しが照り付ける校舎の近くで。
「綺麗な彼女たち」の周りには・・・。
願えばいつでも「虹」がかかるのかもしれない・・・。
曇りのない暑い真夏日・・・。
作者初めての「百合もの」を書いてみました。
ずっと書いてみたかったジャンルなので
ウキウキしながら書いていてなかなか楽しいものでしたね。
機会があればまたこのジャンルの短編を(別の主人公たちで)
書いてみたいものです。