幹部会議
今話が説明回っぽくなってしまったので、読みづらかったら申し訳ありません。
屈強な男4人をぶちのめした(自称)可憐な少女も、男と同じく家路に着いていた。
が、しかし自分の『生』を実感して家路に着いた男とは裏腹に、少女は迫り来る確実な『死』の恐怖と戦いながら歩いていた。
少女の足が止まる。
その前には古びた扉が待ち構えている。
(…行くかっ!)
覚悟を決めた少女は、勢いよく扉を開く。
「ただいまー!」
扉の中には、古びた酒場が広がり7人の男女が待ち構えていた。
「おかえり…セル」
微笑みながら少女を出迎えるのは、少女と年の変わらぬ黒髪の少年。
彼は少女に歩み寄ると、その瞬間
「何してんたんだよ、このバカーーー!!!」
窓ガラスが砕けそうなほどの、雄叫びをぶちかました。
「うるっっせーよ!この駄犬!」
「はぁ!?誰が駄犬だ!俺は狼だっつてんだろ!」
「はっ、首輪つけててよく言うぜ!」
「これはチョーカーだ!」
少女の金の瞳と少年の銀の瞳が火花を散らす。
「はいはい、そこまで」
果てなき戦いをしていた2人を止めたのは、淡い茶色の髪と瞳の優しげな男だった。
「げっ、ライ…」
「ライさん。」
ニコニコと微笑んだままライは少女の前に立ち
「で?今日は幹部会議が有るっていうから、幹部7人全員集合したんだけど…セルは何してたの?」
これは怒っている。確実に怒っている。
正直に言った方が身のためと判断した少女は正直に白状した。
「幹部会議が始まるまで暇だからその辺プラプラしてたら、人攫いのオッサンに絡まれて、逃げたけど行き止まりで襲いかかられたから、ボコってきました…。」
「ふーん…」
あれ?おかしいな、正直に白状したのにライの怒りのボルテージがまた上がった。
解せぬ。
「セル…そのパターン何回目?」
怒りを通り越して呆れの境地に達した少年に対し
「確か48回目!」
笑顔で答えるセル。
額を押さえてため息をつく少年に無邪気に問う。
「悩み事か?」
改めて少年の怒りに火をつける。
「あんたは自覚を持ってっつーの!」
「リオの飼い主っていう自覚か?」
「ちっげーよ、このバカ!」
またしても果てなき戦いが始まりそうなその時。
ゴンッ
「いっっっっってー!」
一見優男風のライのメガトンパンチが炸裂した。
頭を抱えて悶絶するセル。
そんなセルをちょっと同情するリオ。
いつもの景色だとばかりに気にも留めない他の幹部5人。
どう見ても平和を目指す裏組織の幹部会議には見えない。
「これより、第7回幹部会議を始める!」
5分後、ライのメガトンパンチのダメージから回復したセルが幹部会議の始まりを告げる。
が、大声を出すと頭が痛むのか若干涙目で、威厳が欠片もない。
「セル、今日の議題は何なんだい?」
笑いを堪えながらライが問う。
「今日は、『蠅の王』についてだ。」
『蠅の王』は最近、派手に活動しているヴィアロ集団である。
「クロの調べによると、構成員は100人前後。100人全員が戦闘可能と見ていいだろう。」
「はぁ〜ウチとは大違いだね〜」
「ボス、僕のことクロって呼ぶのやめてくれません?猫みたいで嫌なんですけど…」
緊張感の無い発言をしているのが時雨、憮然とした顔で訂正を求めるのがクロことクロノス。
「で?その『蠅の王』をどうするの?」
それかけた話題を元に戻すのが要。
「もちろんぶっ潰す!」
「アホか、ぶっ潰すのは全員わかってるよ。どうぶっ潰すかを要さんは聞いてんだろ?」
「そ、それはそうなんだけどセルといいリオといいガラ悪いよね…。」
「どうやってぶっ潰すか?正面突破に決まってんだろ。」
笑顔で恐ろしいことをさらっと言ってのける。
「ふーん、じゃあボス『蠅の王』のアジトは検討ついてるのね?」
幹部連中の紅一点、雅は現実的な質問をする。
「もちろん!シャルに潜入させて調べさせた!」
「ボス、オレ死にかけたんスけど…」
「大丈夫、大丈夫。お前は殺しても死なないだろ?」
「理不尽!!」
ちょっと不憫な扱いを受けているのがシャルことシャルルマーニュ。
上記のリオ・ライ・クロ・シャル・要・雅・時雨の7人の幹部とボス_セルの合計8人が『セレルマリーの花束を』の上層部兼実働部隊である。
『セレルマリーの花束を』の構成員は500人を優に超す、が戦闘可能なのは上層部の8人くらいである。
人間がヴィアロの戦闘に加わるのは不可能に近いし、『セレルマリーの花束を』に所属するヴィアロは戦闘を好まない者がほとんどなので、戦力にはなりえない。
よって、『セレルマリーの花束を』の戦闘要員は8人である、と言っても過言ではない。
「さて、作戦会議だ!」
それでも彼らは弱くない。
治安の悪い下界の王者となりうるほどには。
「で?今回は合併の相談はしに行かなくていいのかい?」
「とっくの昔に相談しに行ったけど、断られた。」
「潜入してたオレに言わせてもらえれば、あいつら多分人間を食いモンとしか見てませんね。」
「大方のヴィアロはそんなもんだろ。」
「それを言っちゃあおしまいじゃないっスか。」
「いつ、潰しに行く?」
「ん〜明日?」
「了解!」
「あいよ〜」
「へーい」
なんとも緊張感のない作戦会議である。
『セレルマリーの花束を』の上層部の設定
セル・・ヴィアロ。15歳。158㎝。炎髪金眼。ガラが悪い。
リオ・・ヴィアロ。15歳。163㎝。黒髪銀眼。セルの右腕的存在。
ライ・・人間。28歳。178㎝。茶髪茶眼。セルのお父さん的存在。
クロ(クロノス)・・ヴィアロ。23歳。182㎝。青髮黒眼。情報収集が得意。低血圧。
シャル(シャルルマーニュ)・・人間。20歳。175㎝。金髪碧眼。なんやかんや不憫。
要・・人間。元極道。22歳。176㎝。黒髪黒眼。セルのお母さん的存在(?)
雅・・人間。要の妹。19歳。168㎝。黒髪黒眼。セル曰く、雅姐さん。
時雨・・人間。元忍。17歳。177㎝。黒髪黒眼。元忍とは思えないほど、ゆるい。
長々とすいませんでした。