7話 『試験』
読んで頂いている皆さま、本当にありがとうございます。
久しぶりに帰ってきましたニアフォレスト!
帰ってくるなり、
「今日はゆっくり休め、明日の朝ギルドに来い」
とだけ言って師匠はどこかへ消えてしまった。
まぁせっかく帰って来たんだし羽を伸ばさない手はない。
とりあえずお世話になってた宿屋のおかみさんに挨拶と今日泊まれるか確認しにいきますかね。
出る前は気軽に一週間くらい、なんて言っちゃったからなぁ。
まさか何ヵ月も森に居ることになるとは思わなかった。
「こんにちはー」
「いらっしゃい…あらハルくん!久しぶりじゃないか!何ヵ月経っても帰ってこないから死んだとばっかり思ってたよ」
ケラケラとおかみさんは笑う。
あぁ、よかった。とても懐かしく感じるなぁ。しかし
「ちょっ、ひどくないっすかそれ」
「まぁあんた達の仕事考えりゃそうなっちまうのさ。とにかくよかった!今日は泊まってくのかい??」
優しい笑顔だが、やはりそんな事になることもあるのだろう。
「はい!お願いします」
「じゃあ今日はハルくんが好きだったシチューにしようかねぇ」
「ありがとうございます!ギルドに顔だして買い物にいってきます。夜までには戻りますので」
「気をつけてね~」
あぁ、人の優しさが染みる…帰ってこれてよかった。
◇◇
ギルドに着くと、全く変わらない喧騒がそこにあった。
「ハルさ~ん。おひさしぶりです~」
あ、受付のおねえさんだ。相変わらずそうでよかった。
「長いこと来られなかったので心配してましたよ~」
「ある方に師事したので修行つけてもらってたんですよ。またお世話になると思いますのでよろしくお願いしますね!」
「みたいですねぇ~!これからもお願いしますね~。あ、がんばってくださいね!ファイトです」
最後はよくわからなかったが別れの挨拶をしてギルドを後にした。
そのあとは武器屋と防具屋によっていろいろ見てみた。
ギルド貸与のナイフを使い潰す勢いだからなぁ。それに、メインウエポンにするには正直心許ない。もう一回り大きいのが欲しい。
防具は動きやすさ重視だから今のままでいいけど、ある程度受けたり流したりできる小さな片手盾みたいなのがあればいいんだけどなぁ。
どっちにしろ金がいるな…クエスト受けていいか師匠に聞いてみよう。
あぁなんて楽しいんだろう街は!!欲しいものが多くて困るけど…
師匠は明日は何をさせるつもりなんだろうなぁ…ろくでもないことなんだろうなぁ…
その夜、宿で食べたおかみさんのシチューはとてもおいしかった。
◇◇
次の日、ギルドにて
あ、師匠きた。眠そうだな
「おはようございます!眠そうですね」
「おぉー。飲みすぎた…」
やっぱりか。
「やっぱりですか。んで、ギルドで何をするんです??」
「おぉー…お前の昇級試験だよ…頭いてぇ…」
頭を掻きながら師匠は眠そうに答える。
「…?…はぁっ!?なんも聞いてないんですけど!?試験って何するんですか!?」
さらっと大事な事を言ったぞ!?
「おうっぷ…頼む…耳元ででかい声を出すなまじで…」
「試験を受けるのは俺なんですよ!?」
師匠の肩を掴んでガクガクと揺らす。
「止めろ…揺らすな…ヤバいから…決壊するから…ギルド指導員との模擬戦闘だよ…今のお前なら問題ないから大丈夫だって…詳しいことはねーちゃんに聞け…うっぷ…」
そう言って師匠は机に突っ伏して静かになってしまった。
「…はっ、!そうか最初から師匠に聞こうとしたのが間違いだった!」
ようやく我に返った俺はすぐさま受付のお姉さんの所に概要を教えてもらいにいった。
ランクDDからランクCへの昇格試験はギルド指導員との模擬戦闘で実力を試される。
ランクCからは狩猟系の依頼が受けれるようになり戦闘力が必須となるので、未熟な者を上げないために実力を見るそうだ。
あれ?俺はランクDじゃなかったっけ?と思ったが、俺が倒した動物や魔物の素材を師匠がギルドに提出し、それが実績と認められたそうだ。
魔物は駆除対象なので依頼を受けていなくても、倒して素材を持っていくとギルドで実績と買い取りを行ってくれるそうだ。
てか、狩猟が解禁されるCランクになるために魔物と戦ってるって逆じゃね?もしかして、めちゃ危険なことしてた?
と思ったが、それを聞こうとした瞬間に何かを察したお姉さんの
「アルフレッド様ですから」
と、乾いた笑顔で聞くことはできなかった。
ほんとに何者なんだうちの師匠は。
あ、昨日お姉さんに言われた「ファイトです!」はこれの事だったのか…
◇◇
試験会場
と言ってもギルドの裏の鍛練場だ。
試験を受けるのは10名ほどいるようだ。
みんな脱初心者しようとしてるだけあって落ち着いてるし、腕にも自信があるようだ。
通常はギルドが行っている高ランク者による講習会や、雑用などで師事して戦いかたや魔素の扱いを覚えるそうだ。
お、始まったかな?
「私が今回試験官をするBBランクのドランだ。『鉄血』とも呼ばれている。宜しく」
鉄血のドラン…!
二つ名持ちだ…
すげぇ…!
おぉ、なんかザワザワしてるぞ。隣の金髪君に聞いてみよう
「なぁ、二つ名ってそんなすごいのか?よくわかんねぇんだけど…」
「功績とか逸話がないと呼ばれないからね。実力者には間違いない。ちなみに鉄血のドランと言えば、CCの頃にたった一人で魔物を何体も倒して村を守ったって話だな」
「なるほどなぁ…かっこいいな!俺もなんか考えようかな」
「周りから呼ばれて意味があるんだ。実力もないやつが自分で言ってたらバカみたいじゃないか」
身をすくめながら金髪君が言う。
「それもそうだな…そうなるようにがんばれ、ってことか」
「そういうことだ」
親切だなこの金髪君。
「ありがとよ、俺はハルってんだ。よろしく!同い年くらいかな?」
「……よく喋るな君は。私はエリック、エリック・メルヴだ。よろしく」
師匠以外と喋るのが久々すぎて楽しいのだ。
「それでは早速だが試験を始めるぞ。内容は簡単だ。私と模擬戦をして、その内容で合否を決める。魔法を使えるものは使っても構わない。回復魔法の使い手も待機してるから安心しろ」
「では受付番号の若い人から順番にやっていこう」
鉄血のドランさんが言うと、隣に居た白い法衣を来たお姉さんが会釈をする。美人だ…癒されてぇ…!
「お願いします!」
隣のエリック君が前に出て一礼をした。がんばれよー!