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6話 『実戦』

実戦1日目



「ほら、そこそこ!、あーおっせぇな。右からきてんぞー!ほらかわせ!」



「えっ、ちょっまっ!!だぁぁあーもう!」



俺は今、小さい豚のような動物と戦っている。つかいきなり実戦とかさせるか普通?



師匠曰く、強くないが魔素で凶暴化していて、「今のお前といい勝負」だそうだ。



しかし素早いし微妙に俺より強い。



時間はかかったし傷だらけだがなんとか倒す事ができた。



まさかこんな感じで毎日戦うんじゃねぇだろうな…






その日の晩御飯はさっき仕留めた動物を豪快に焼いたものだった。



「……魔物って食えるんすね」



肉を見つめながらハルはアルフレッドに問う。


「当たり前だろ、せっかく仕留めたんだしな、命に感謝して食え。ちなみに魔物は魔素量が多いから回復も早くなるし魔力も得られるし冒険者にはうってつけだな」


「ま、明日も飯にありつきたきゃ頑張ることだな」



「おっす…」


しかし疲れたな…食うためとは言え命を奪ったし。慣れる…のかなぁ…


そんなことを考えながら一日目の夜は更けていった。




◇◇



実戦3日目



「ほら上から来るぞ!次は横だ!おいしっかりしろー。くらうなよー!ほらかわせ!あぁー」


「静かにしてくださいよ!あと石投げるの止めてください!めっちゃ怒ってるじゃないですかコイツ!」



俺は今、猿のような動物と戦っている。今回は魔物になりかけ、だそうな。



手足に牙にしっぽとバラエティ豊かな攻撃をしてくる。



師匠が顔に小石を投げ続けてるせいでだいぶご立腹のようだ。



攻撃手段が豊富で勉強になる。強かったが怒っていたせいでなのか、防御をしっかり固めて少しずつ反撃してなんとか倒せた。



が、俺の実力ではこれ以上は正直難しい気がする…。



と思っていたら次の日も、同じ種類の猿と戦う事になった。



師匠から見ても、やはり今の俺の限界なんだろうか?






猿と戦い始めて4日目、なんとか倒してはいるし、猿との戦い方も初日よりは分かってはきたが厳しい相手であることに間違いない。



「今日はコイツだ。死ぬなよ」「うす」



師匠が森の奥から現れ、木の上に姿を消す。



師匠の後から出てきたのは、いつもの猿…とは違う?



明らかに体が大きく爪も長い。俺より少し小さいくらいだから150くらい??昨日までは1メートルもなかったからコイツはめちゃくちゃでかく感じる。



「ボス猿!?っとぉっ!」



大きさに驚いていると、猿が突進してくる。回避し、反撃に蹴りを放つが、器用にクルリと横転してかわされてしまった。



「まだまだっ!」



素早く踏み込み、剣で突きを放つ。かわされるが折り込み済みだ。



そのまま続けて左肩に向けて袈裟がけに切りかかるが、なんと腕で防がれてしまった。



毛皮のせいか?刃が立たねぇ…かってぇな…



「エヒッ!」


猿は剣が効かない事に満足そうにニヤリと笑うと襲いかかってくる。



猿の攻撃をかわしながら俺は考える。最初の突きはかわされた、って事は突きなら通るかもしれん。だからかわしたんだろ?それに少なくとも目とかなら効くハズだ。



猿の大振りの蹴りをかわす。ここだ!


猿の顔に向かって突きを繰り出すが、恐ろしい反射神経と動体視力で頭を捻ってかわされてしまった。



だけでなく、しっぽで視界を塞がれる。まずいっ!



鈍い音と衝撃で吹き飛ばされる。なんとか咄嗟にガードはできた為体勢は崩れていない。が左腕が痺れてしまった。なんか最近もあったなこれ。いや余計なこと考えてる場合じゃない



猿は好機と当然のように追撃をしてくる。



避ける、避ける、かわされる。

避ける、受ける、避ける、かわされる。

受ける、受ける、避ける、避ける。


段々反撃を入れる余裕が無くなってきた。まずい、一旦距離をとるか?…と、



「ハル!お前何を教わる為にここにいる?」



師匠から言葉がかかった。



何を教わるため…?生き方…?いや、戦いかた…いや。



…あぁ…なんでこんな簡単な事に気づかなかったんだ。



…俺は魔素の扱いと魔法を覚える為に戦い始めたのに。



初日のジャンプは何のためにやったんだ。なぜバカ正直に生身で戦ってるんだ。



「すいません師匠!!もう大丈夫です!」




「よし、ならさっと終わらせろ」


今頃ようやく気付いた弟子に、アルフレッドは少し笑みがこぼれる。



ハルは大きく返事をし、一つ、深呼吸をする。



「いくぜっ!」


気合い一閃、足に魔素を込め、魔力の奔流を感じながら踏み込む。



猿との距離を一瞬で詰めると猿は驚いたようで、慌てて蹴りを出してくる。



強化した腕力でしっかりと防御し、剣を横に一閃。魔素で強化された威力の剣は容易く切り裂く。



「経験も、血肉も無駄にしない。ありがとよ、お前のお陰だ。」



ハルは自分を成長させてくれた強敵に感謝を述べた。









「いやほんとに、気付くの遅すぎない?バカなの?」



アルフレッドはからかうように言う。



「いやー…アホですね。わかってます!わかってますからもう言わないで下さい!」



かんっぜんに忘れてた…つか死ぬかもしれんって集中してるときに魔法の事でてきませんて…僕の世界魔法ないんですもの…なんて言ってもしょうがない。



「クソ真面目に力だけでやってるからわざと魔法使ってないのかと思ったわ!」


アルフレッドはニヤニヤしながらハルをいじる。


「もういいでしょう!?」


「まぁわかったらいい。戦い方は悪くなかった。よく考えてたしな。だが常に自分の手札に何があるのか把握して戦え。テンパってカード切らずに負けるとかアホの極地だからな」



「その急に真面目になるのなんとかなりません?ついていけないんですけど…」





「そういえばお前さ、どこの出身だ?なんで1人で居たんだ?」


アルフレッドがハルに尋ねる。


「出身ですか?この国じゃないんですよ。事故みたいなもんでこの国来ちゃって。帰る為に1人で生きてく手段が必要だったんで。」


そういえば師匠には言ってなかったな。



「…ほー。……帰れそうなのか?」



アルフレッドは手に持った緋色の酒を煽りながら言う。



「どうっすかね…生きてればいつかは…ですかね?」


神は運命力とか言ってたがどれくらいの量が必要なのか、今どれくらい溜まっているのか全く分からない。ブレスレットの宝玉も全てくすんだ色のままだ。何年かかるんだか…



「そうか……。そんじゃま、魔獣ぶっころせる程度には強くならないとな」



「いや魔獣は逃げれればいいです…。師匠の物差しで計らないでください…」



魔獣を1人で倒すなど普通の冒険者ができる事ではない。



「大丈夫だ。俺がついてるからな」



月を見上げながらアルフレッドが言う。


なにこれ超イケメンじゃん師匠いつもこうならもっと素直に尊敬できるのに…



「……よろしくお願いします。師匠」



「んじゃ明日からさらに厳しくいくぞ!死ぬギリギリまで追い詰める感じで!」



犬歯を出してニヤリと師匠が嗤う。



「Nooooo!!」




そんな事を言って夜は更けていった。







実戦二週間くらい??もう覚えるのも面倒になってきた。


あれ以来、魔素を扱って戦うようになると一気にできることが多くなってきた。



「当たったら痛いぞ!ほら死ぬ気で避けろー全部よけろー」


「痛いで済むわけないでしょ!魔素に集中してるんですから黙っててくださいよ!!」



俺は今、でっかい蜂と戦っている。最低級の魔物だそうだ。



手が刃物みたいになってるし必殺っぽい針もあるし動き速いしこいつはほんとに強い。



防御できそうにないのでとにかく回避、回避、回避してチクチク反撃してなんとか倒した。



とにかく戦い続けの日々。



師匠のモットーは、実戦でこそ得るものがある。死にたくなければ死ぬ気でやれ、らしい。…だろう、たぶん。



師匠のアドバイスを聞きながらやってて気づいた事は、とにかく回避と防御の大切さだ。



いつも、なんだかんだヤジをいれながらも「どうすれば回避できるか」をアドバイスしてくれている。



くらった、毒があった、死亡、終わり!なんてざらにあり得るのだ。



基本は回避、どうしようもない時は反らすか受ける。受けるにしてもただ受けず、流したりで相手の体勢を崩す。


この辺をきっちりできるようになれば、とりあえずすぐ死ぬ事はないだろう、と師匠は笑っていた。



この人についてよかった。






今が何ヵ月だかもう覚えていない



「今だ!➡️⬇️↘️+P!…あれ?」



「でねぇよ!昇龍なんかでねぇし、もちろん小足なんぞ見えねぇからな!」



俺は今、師匠(バカ)にツッコミ入れながらゴブリンと戦っている。


……魔素の扱いを覚えた今なら波○拳なら出せるか!?いや余計な事を考えるな!




このゴブリン、めっちゃ慎重で、しっかり防御しながら、こっちの僅かな隙を見つけては攻撃してくる。

ゴブリン=ザコみたいなイメージあったけどこりゃ油断できねぇわ。


顔に似合わず繊細な戦いかたをする。勉強になるなぁ。しかし強い…




長い時間がかかったが、なんとか倒したあと、いつもはダメ出ししてくる師匠が珍しく誉めてきた。



「筋肉も少し付いてきたし、魔素の扱いもマシになってきたな。いきなりだけど魔法やってみるか。魔素を体の中で練って…んー、手のひらに溜めるイメージだな。んで、あの木に向かって投げてみろ。何かが出てくる感じで」


たしかに魔素の扱いもそれなりに自由に素早く動かせるようになったと思う。

なんか出せるのかな!



「なんでもいいって言われると逆に難しいっすね…」



なんて言いながら木に向かって手を伸ばして、集中する。



イメージか…。なんか出ろ!



すると…



ピンポン球くらいの小さな火の玉が手の辺りに現れ、木に向かって飛んでいき、ポンっ!と、はぜた。




「おおおっ!火が出た!!出ましたよ師匠!!!」


記念すべき初魔法だ!いや身体強化も魔法の一種なんだけど、やっぱこうなんか違うよね!主に俺のテンションが!



「おぉ、火属性か。ベタだけど使いやすいし、いいんじゃねぇか。他の属性と違ってただ出すだけでも攻撃になるからな。よかったじゃねぇか。突撃バカのお前には丁度いいさハッハッハ」


師匠は笑っているが、常に自分より強い上に師匠の煽りでブチキレた相手と常に戦っていたこちらの精神状態も考えてほしいものである。そう、ヤケクソだ。



「おっ、また出た。すげー!!すげーぞ魔法!」


魔法に夢中で聞いちゃいないハルだった。







覚える意味もない。半年は経ってるかな?



「距離をよく考えろ。お前と相手では、リーチの差があるだろ?あと、腕力に差があるから受けずに流すか回避するかするんだ」



「なんで急に真面目になってんすか!?最初からそう教えてくれればいいじゃないですか!」



虎の魔物と距離をとりながら師匠の真面目なアドバイスに俺は答える。




「戦闘感覚は大分マシになってきたからな。次は理詰めだ。足りない頭でも少しは考えて戦えよ!」



「足りないは余計です!!」




時間はかかったがアドバイスを聞きながらなんとか倒す事ができた。しかし毎度よく現在の俺より少し上の強さの魔物を連れてくるもんだ。




なんて考えながら息を整えていると、



「よし、んじゃ今日からは魔物の後は俺との模擬戦やるぞ。」



なんですと。そう言えば師匠と組手的な事はしなかったな。めっちゃ強いのにもったいない!



「まじすか!よろしくおねがいします!」



「魔法も混ぜて戦え。威力は弱くても使い方を考えれば大きな効果が出せる。掠りでもしたら終わりでいいぞ」



「おっす!」



よーしここ数ヵ月でどれだけ成長したか、目にもの見せてくれるわ!






◇◇





…もしかして結構いい勝負できるかも、なんて思い上がりも甚だしかった。



こちらの攻撃は一回も当てることができず、当てる事どころか触れることもできなかった。



一方的に師匠のデコピンをくらい続けた。



やっぱとんでもない強さだ師匠は…




「……参りました…」


ボロボロでヘトヘトの体を地面に投げ出し


「体力はついてきたな。あんだけの時間戦えりゃ及第点だ。だがまだなんか考えと動きにズレがあるような感じがするな。魔素の扱いをもっとうまくなるか体鍛えるかすれば多少は合ってくるかもしれん」



「あと魔法だが、もっと使い方に幅をもたせろ。ただ火の魔法と言っても人によって火の玉が出る奴もいればかえんほうしゃみたいにでるやつもいる。魔法はイメージ、と言ったはずだ。お前みたいにただ飛ばすだけなら普通のナイフでも投げた方が魔力使わない分マシだ」




「はい…精進します…」




ズレはたしかにある気がする。けど自分の体なのにずれるってどうしたらいいんだ…



あとは魔法のイメージか。ボールみたいに飛ばしてるだけだからな。なにができるだろ…某大佐みたいに指パッチンで相手燃えたらかっこいいな…魔法の規模的に無理か?



とにかくいろいろ考えてやってみよう!イメージ、って事は変えられる、って事だもんな!






もはや何月目かなんて気にしてないよ俺は!ハイってやつだ!!



師匠を正面にとらえ、時計回りに旋回しながらジリジリと距離を詰めていく。


一月ほどで慣れてきたのか、当てることはできないが回避することはある程度はできるようになった。



師匠は気の棒を片手に軽く構えてこちらを見ている。



俺は低い体勢から、魔素を集中させ一気に地を蹴り肉薄する。



師匠の横薙ぎをさらに屈んでなんとかかわし、ながら下段足払いをかけるがかわされる。



さらに胸への刺突も、…かわされる。



間髪入れずに反撃の振り下ろしが来るが回避…する



そして打ち合い、回避しあいを幾度か繰り返したとき。




…この距離…俺の剣が届くかどうかギリギリの間合。



最近ずっと考えていた、師匠に一撃いれる魔法だ…!




手のひらほどの小さな炎のナイフを2本、師匠の体の中心よりほんの少し右にずらして飛ばす…




きた!左に回避してきて…ここまでは狙い通り…




そこを横薙ぎに払う。後ろにギリギリ回避されるのはわかってる。




「っ…とどけぇぇぇえ!!」




だから体の直前で、炎の刃で剣を長くして(・・・・・・・)










「…ちっ、かすったか」


「…っしゃあ!ついに掠めましたね!!」


と、刃が服を掠めた直後、師匠の蹴りで3メートル程ふっとばされてひっくり返ったままの体勢で俺は言う。



「やるじゃねぇか。地味だが効果的だ。発動する直前まで気づかれにくいしな。よし、んじゃ、一端街に戻るぞ!準備しろ」



「ありがとうございます!………え、今からですか?真っ暗ですよ…?」

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