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プロローグ

初めまして、初投稿です。読んでいただけて嬉しいです。よろしくお願いします!



2話までは説明多めなので、めんどくさい人は飛ばしても大丈夫です。


3話から冒険開始、10話からロボットが出ます。12話でヒロイン、中盤辺りで最強クラスになりますので末長くお付き合い下さい。




 何かが足りないような感覚。



 学校もそれなりに楽しいし、友達と遊ぶのも楽しい。家族とも仲はいい。



 毎日それなりに楽しいし不満はない。



 だけど満たされない。



 自分にとって大切な何かが足りない不思議な感覚。



 大切な歯車か、大切な色か。



 なのに、その「何か」がわからなくて。でもなんとかしたくて。



 その「何か」をずっと探している。



 そんな感情を、自分を騙すように手軽な娯楽(ゲーム)に興じていたんだ。








◇◇






 搭乗型ロボット対戦ゲーム「FightingMad」の全国大会、会場。


 彼、西岡晴俊(にしおかはるとし)17歳はその決勝戦を戦っていた。このゲーム、内容は至ってシンプルで「自由に組み上げた機体で対戦する」というもの。


 ゲームセンターの大型筐体なら、全天モニターで(実在するとすれば)本当のコックピットのような環境でプレイできる。


 また、家庭用ゲーム機やパソコンでもVRゴーグルでのプレイが可能で、とにかく敷居が低い。


 機体のパーツ分けが細かく、変更も自由自在。デフォルトで用意されているパーツだけでも数百種類を超える。


 オリジナルパーツを作ることもでき、それをネットで公開して譲渡や販売も行えるため、日夜パーツは増え続けている。


 少なくとも外側だけなら、再現できないロボットはない、と言われる程だ。そんな大人気ゲームの全国大会。 









「ここまで来たんだからぜってぇ勝てよ!」


「お兄ちゃんがんばってー!ミケも見てるわよー!餌代!!」



 高校の同級生で親友であり、準決勝で脱落した西内徹也と、応援に来ていた妹の西岡灯里(あかり)は、モニターを見ながら声を張り上げる。妹の手にはお腹の大きな猫が写った携帯が握られている。








◇◇




 眼前に迫り来る、光の奔流。



「くっ…!」



 晴俊は機体の剣を前に出し、剣の腹で攻撃(ビーム)を受ける。放たれたビームと、それを弾く剣が激しく輝き、モニターが光に染まる。


「っぶねぇっ!」


 ビームを受けきった晴俊は慌ててその場を離れる。じっとしていてはさらに追撃がくるやもしれない。


 森のどこかで、金属音に続いて重い何かが落ちる音がした。おそらく先程の攻撃でエネルギー切れとなった装備を外したのだろう。



 晴俊が距離を詰めようと機体を一歩進めようとした瞬間、針のような物がいくつも飛んで来る。



 一本目、二本目を回避し、三本目、四本目を剣で切り払う。



(この針はたしか威力は低いけど運動性低下の特殊内蔵型武器…)


 と、次の瞬間に真上から相手の機体が降ってくる。


 相手の踵落としを見切ってかわし、反撃に袈裟懸けに斬りかかるが回避されてしまう。



「今だっ!」



 虚をつき、技を発動する。晴俊の機体の目が光り、剣から炎が吹き出す。



 炎を吹きながら時計回りにその場で回転し、辺りを一気に薙ぎ払う。



ぼんっ!



 剣が直撃した相手の機体から煙が吹き、姿が消える。



(変わり身…二回目!使いきったな!)



 回数制限はあるものの、二回までダメージを無効にできる特殊機能『変わり身』たしかかなりのレア装備だったはずだ。


 これでまともにダメージを入れられる。


 ()()()()()すぐに機体を真後ろに振り返らせると、相手の機体が(すね)からビーム刃を出して回し蹴りを放っている所だった。



(かわせない……こなくそっ!)



 回避が間に合わないと判断した晴俊は剣を相手の左腕を狙って突き出す。内蔵武器()の射出口が左腕に見えたからだ。


 双方共に防御を考えない蹴りと剣が、お互いに迫る。



ガンッ!!


 大きな音と衝撃と共に吹き飛ばされた機体。


 ……肩辺りから左頭がやられようだ。視界(モニター)が半分になり、アラート音と共に左腕が上がらなくなってしまった。



 すぐに起き上がり、剣を構え、右回りに旋回しながら相手を探す。敵の機体は強い。森の中ではさらに見つけにくい。



 しかし前半の撃ち合いでお互いに弾薬・エネルギーはほぼ底をついているし、さっきので遠距離攻撃は全て破壊できただろう。



 そろそろ止めを刺しに近接で来る。



「カウンターとれるかどうかだな…」



 外せば次はないであろう、決死の反撃。


 相手は機動性特化なうえ、間合いをとるのが上手い。じり貧の消耗戦になれば負ける。そのために一撃必殺を叩き込める博打のような状況を作るしかなかった。


 この状況に持ち込むために森に入り、相手の弾薬とエネルギーを減らしたのだ。片腕と眼は犠牲になったが。



 これまで以上に集中し、一筋、流れる汗もそのままに操縦桿を握り直す。構えている剣がモニターに映し出されている。



 瞬間、剣の腹が光り、何かが映った気がした刹那、左へ振り向きながら低くしゃがみこむ。


 コックピット、胸を狙ったであろう斬撃は、低くしゃがみこんだ事でギリギリ頭の上を通過していく。



キッ!ギリッ!



 頭の上から、相手の武器が頭を掠める音が聞こえる。



「ぃっけぇぇぇええぇえ!!」



 咆哮と共に、晴俊の機体が残った右手で剣を振るう。



 低い体勢から体を伸ばし、相手の左胴を斬り上げるように剣を振り抜く。





ーーキンッ!ーー




【You win!】チャーラッチャラー♪



 二つに別れた相手の機体が爆発し、大きな衝撃と、派手な音楽と共にマシンから勝利を告げるメッセージが流れる。



「よっしゃぁーーーー!!!!勝ったっ!!!優勝っ!」



 喜び急ぎ操縦ポッドから降りようとハッチを開けて彼が最初に見た光景は、崩れる天井と目前に迫る小型セスナであった。






 瞬きをして目を開けると、突っ込んでくるセスナや崩れた天井の瓦礫は空中で止まり、浮いている。


 そして会場の人間全員が微動だにせずに、音もなく、全てが止まっていた。



「なんっじゃこら!?どうなってんだ!?」



「落ち着いて、とりあえず話聞いてくれるかの?」



 気づけば目の前にはよくイメージされるような仙人の風体をした老人がいる。不可解さに訝しむ晴俊。



「とりあえずあなたは誰?なんですかこれ?」



 怪しいけどとりあえず聞いてみる。



「ふぉっふぉっふぉっ。意外と落ち着いておるな。あまり時間がないのでざっと説明してやろう。ワシは神、見ての通り事故の直前でわしが時間を止めたんじゃ」



 いやいやいや……自分を神と名乗る者にろくな奴はいない。少なくとも歴史上はそうだった。



「神は神じゃから仕方あるまい」



(心読めんのかよ!)



「神じゃからな。で、事故であの会場にセスナが突っ込んできて今から大勢亡くなるんじゃ。その直前でワシが時間止めておる。お主と話したくてのぉ」



「……え?亡く…なる?いやいや時間止めれるなら助けてください!…友達と妹が居るんです」



 晴俊はちらっと妹の方を見る。妹は上を向いてセスナと瓦礫を見て愕然とした表情をしている。



「それはできん、運命じゃからな。ちなみにお主は奇跡的に生き残るぞ。他はほとんど死ぬがの。ふぉっふぉっふぉっ」



「灯里と徹也も!?…頼むからなんとかしてくれ……」



「そもそもな、本当はこんな事故起こるはずではなかったんじゃ。本当はお主が会場に来る途中に交通事故で亡くなるはずだったのじゃ。」



「が、お主はちょっと特殊で強力な運命をもっておってな、自分の運命を曲げて、助かってしまったのじゃ。で、帳尻合わせで今回の事故に繋がった、と。何百年かに一人いるんじゃよな、運命変えちゃうやつ」




 ……自分が死ぬはずだった?



 のに、助かったから代わりに妹や親友、他に大勢が死ぬことになっただって?



「俺一人のせいで巻き込まれ過ぎだろ…帳尻合ってねぇしだったら俺が死ぬから妹や皆を助けてくださいよ!」



「それもできん。お主の運命の力が強すぎて変わってしまった未来を元の流れに戻すことができん。完全に変えるには今回動いた量の数十倍の運命力が必要になる。足りんのじゃ。それに帳尻は合っておる、それだけの人数を動かすだけの運命力をお主が持っておるということじゃ。信じられん事だがの。自分を強運だと思ったことはないか?」



「俺が何人に匹敵とかどうでもいいんで…俺のせいで何人も犠牲になるのを自分だけのこのこ生き残るなんてできるわけないでしょ!なんか方法はないんですか!?」



「…ふむ、そこまで言うのなら一つだけ方法がある。と、言うかその為に話をしとるからの。ただ、成功の可能性はかなり低いし、成功してもお主は運命力のほとんどを失う。人並みになればこれまでのような幸運はなくなるぞ。しかも失敗すればお主は死に、会場の者も死ぬ。それでもやるか?」



 神はふむふむ、といった顔で語り、晴俊をまっすぐと見つめ覚悟を問う。神の言葉に、晴俊の目に火が灯る。



「やるさ…やるしかないんだ、やらせてくれ!いや、やらせてください!」




「ふぉっふぉっふぉっ。元気じゃのう」



 髭を触り、笑いながら神は答える。



「さっきも言ったがの、運命を変えるには今ある分では運命力が足りんのだ。逆に言えば、運命力があればまだ変えることもできるということじゃ!」



 神はエア眼鏡をクイッとあげる動作をしながら答える。



「その運命力とやらを集めりゃいいってことですか…でもどうすれば?」



平行世界(パラレルワールド)に、運命力の動きの大きい世界がある。そこに行って運命力を集めてくるのじゃ。運命力は人などの生き死にで動く。世界に良い影響の大きい人物を助けたり、逆に悪い影響を与える人物を排除すれば余剰分が手にはいる。これを目印にするといい。お主の運命力は使えないからな。」



 神の手が輝いたと思うと、晴俊の手首には、くすんだ四つの宝石が嵌まったブレスレットがあった。



「それは運命力を集める器じゃ。お主と今回巻き込まれた者達の心であり、運命力の入れ物でもある。4つの宝石全てが輝いたら十分じゃ、帰ってこれるぞ。当然だが自分の運命力は込められんからな」


 なんか昔流行った小説みたいだな、なんて思った。



「ちなみに、剣と魔法の世界で魔物もおるが、お主は普通の人間だから、死んだら終わりじゃ。身体能力も普通だし、この世界では人間は簡単な魔法しか使えん。注意するんじゃぞ。」



 また心を読んだのか、親切なのか、なんとも聞きたくなかった情報を教えてくれた神は魔方陣を準備しているようだ。



「わかりました…死にたくないですし。どんな方法でも、なんとしてもやりとげますよ」



「うむ。最後にアドバイスじゃ。お主は強い運命力を持っておるが、運命力はただの強運などではない。ある程度決まった未来を、多少変更する力。自分で未来を切り開き、掴みとる力じゃ。選択の幅が広い、程度のものじゃからよく考えて動くようにな。」



「わかりました。…ありがとうございます」



 魔方が発動したようだ、次第に体が薄くなり粒子のようになって魔方陣に吸い込まれていく。



 最後に妹と親友を目に焼き付けるように一瞥し、



…必ず助ける。少しだけ待っていてくれ。強く念じ、自分への宣誓とする。



 こうして晴俊は、妹と親友、その他大勢のために異世界へと旅立つこととなった。




「さて、どうなることやら…ふぉっふぉっふぉっ…」



 空っぽになった操縦席を見ながら神は呟いた。



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