表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/37

第007話 ゴブリン

テレビゲームなら序盤はスライムが定番だがTRPGなら序盤はやっぱりこっちのほうが定番です。

朝、狩のため村から出るとき熊悟郎(カールド)さんから「最近、山の北側のゴブリンが増えて巣別れしたらしいので気をつけろ」と言われた。

まぁ、こちらから積極的に探さない限りぶつかることもあるまいと思っていたのだが…

自分のピンポイントで強く出る不運を忘れていた…


“わ~、きもい…”


崖の上で寝そべり軍用双眼鏡で下を覗きながら感情がまったく篭って無い声で呟く。

下の手掘りらしい洞窟の入り口をゴブリン達が出入りしている。

30分ほどの観察で判ったのは出入りして作業しているゴブリンは約20体。

奥に他の個体がいるかは不明。

どうも洞窟の拡張工事らしくひっきりなしに奥から棒に布を結び付けて作ったモッコらしいので2体1組になって土を運び出していた。


山に入ってからなぜか動物にぶつからないと思ったらこんなところに巣を作ってるとは…

そばに何体か狩られた動物が解体されて食事にされたらしい後が見えることからこいつらが付近の動物を狩ってしまったためにこの付近から動物が逃げ出したのであろう。


“どう考えてもこいつら村の害にしかならんよな…”


動物がゴブリン共に狩られては村の狩りに影響が出る。

また、山で出会っても集団で襲われたら村の人ならかなり危険だ。

またこいつらが村を見つけたら何をするかわからん…。

よくある小説やゲームなら冒険者ギルドに討伐依頼でも出ているところだ。


“でもまだ俺冒険者じゃないし…”


と、言いつつ四次元ホシェットから取り出したのはM4アサルトカービン(小銃)。

下部にはM203A2グレネードランチャーがしっかり取り付けてある。


“いや~、陸自が対外有償軍事援助(FMS)でこいつを購入していてくれて助かった。

89式は使ったこと無いから使いにくいしな…”


そう呟きながらうつ伏せの姿勢のまま銃口を洞窟の入り口に向ける。

2~3回軽く息をして…呼吸を止める!

引き金を軽く引き3点バーストで撃つ。

こいつの後継版のM4A1(M779/979)ならセミ/フルオートなのだがM4(M777/977)はセミ/3点バーストモデルだ。

こいつはM4(977)の為、セミ/3点バーストでフルオートは出来ないがこれで十分だ。

戦争じゃないのだから弾をばら撒きすぎる必要は無い。

ちなみに弾切れは無いし再装填はいらないしといいこと尽くめに思えるファンタジー機能満載のこの銃にも欠点はある。

撃つのに強化無しの通常弾でMP1点消費することだ。

フルオートで撃ったら長期戦は絶対出来ないよな…MP切れで…。


的確にゴブリン1体に対して弾3発撃ち込み倒していく。

年に3回ほど鬱積晴らし兼ねてグアムに射撃に行っててよかった…いやマジで…。

おかげで腕は維持できていたのだから。

もっともゲームで覚えた『射撃』スキルも鍛えてあるからそれも貢献しているのだろうが。


出口付近で何が何やら判らず撃たれていくゴブリン達。

中から銃声に驚き飛び出してくるゴブリンも順次に撃ち殺されていく。

数分後26体目を撃ち倒したところで中からゴブリンが出てこなくなった。


“終わったかな?”


そう呟きながらもさらに30分程様子を見るが中からは出てくる雰囲気はない。

とりあえず近くの蔓を伝って下に降りM4を構えながら洞窟に近づく。

念のためグレネードの銃身をスライドさせグレネード弾を装填しておく。

『探知』スキルのレーダー表示上は何も映っていないので入り口のゴブリンは全部死体になっているはずだが念のため軽くつま先で蹴って確認しておく。


レーダーでは洞窟の奥までは確認できないため生き残りがいないかは中に入って確認するしかない。


軽く“面倒くさいな…”と呟きつつ中に慎重に入っていく。

50m程の通路の両脇に幾つかの部屋があったが『探知』スキルレーダーには何も反応しなかったので無視して進む。

一番奥にある部屋に反応1あり。

識別は『赤』、どうやら敵対生命体がいるようである。

部屋の手前で壁にもたれポシェットから身だしなみ用の長方形の小型の鏡を取り出す。

それを地面付近でそっと部屋の中が映るように出して中を確認する。


いた…

先ほど倒したゴブリンより大型のゴブリンが確認できる。

姿を確認したことでレーダーに名前が表示される。

『ホブゴブリン』


“あらま、元々はひそかに家事手伝いをする善良な妖精として伝承されていたのに後のフィクション物でゴブリンの親玉格に落とされたかわいそうな妖精さんですか。”


もっとも鏡に映ったホブゴリンは妖精なんてかわいい姿ではなかったが…。


とりあえず鏡を回収してポシェットに片付けついでにMK3攻撃手榴弾を取り出す。


“地球では室内戦のセオリーとも言うべき使い古された手段だが…この世界では使われたこと無いだろう…”


ピンを抜き室内に手榴弾を放り込む。

当然ランは壁側にいて爆風から逃げている。


ドカーン!!


手榴弾が爆発して衝撃波が終わると同時にM4を構えて室内に突入。

同時にホブゴブリンの位置を眼で確認したら腰だめの状態で3点バーストを2連射。

あわれホブゴブリン、なんの攻撃も行えず撃破された。


“さすが室内戦のセオリー通り、効果あるわ…。”


そもそも相手に攻撃させずに制圧するのが基本なのに映画やゲームみたいにドンパチやらかしていたらこちらの身が持たん。


いやはや、ごもっともです(笑)


“さてと…まずは定番のお宝捜索と行きますか!

(出来立ての巣みたいだから何かあるとは思えないけど…)”


ランの思った通り全部屋を探索したが目ぼしいものは何もなかった。


結局金目の物や使えそうなものは…


つるはし×3

鉄の片手剣×16

銅の片手剣×4

弓(短弓)×6

鉄のナイフ×19


ついでにゴブリン達の衣服を引っぺがし金属類(止め具等)は全部回収。

さらにホブゴブリンからの獲物が…


木の棒(魔法発動体)×1

鉄の片手剣×1

魔石(Eランク)×2


“ゴブリンってカテゴリー的に『魔物』扱いなんだろうか?”


思わずふと悩む。

まぁ、どっちにしろ『魔物』と同じなら『魔石』があるはず。

しかし…ゴブリンって地球の伝承のカテゴリー的には邪妖精じゃなかったけか?

そもそもゴブリンに魔石があるのか?

見つけた5cm程の薄赤い魔石を手のひらの上で転がしながら考える。


“ちっとばかりいやだけどばらしてみたら判るか…”


ここがゲームと現実との差である。

ゲームなら敵を倒せばアイテムの状態で肉や皮など手に入るが現実では自分の手でばらさなければいけない。

『魔石』は生物的には『心臓』が魔力の溜りによって魔石となるらしい。

ということは心臓の変わりに心臓の位置に魔石があるということだ。

いったいどんな原理で魔石で体内に血をめぐらしているのか大いに気になるところではあるが…

とりあえず人間と同じ左胸で良いのか?



結果的には魔石はあった。

ただかなり気分的にはよろしくない作業だった。

ゴブリンは全部同じで5cm程で薄い赤の魔石が回収できた。

ランク的には『鑑定』スキルでみるとEランクである。

ホブゴブリンからは一回り大きいがおなじ薄い赤色の魔石が回収できた。

ランク的には『鑑定』スキルでみるとE+2ランクである。

+2が価格的にどれくらいになるのかはよく判らない。

まぁ、所詮はEランクだ。

ほんの少しプラス査定がつくくらいだろう。


金目になるものは全部回収したと思う…あとは…


“こいつらの死体処理だな…”


この世界の人たちが魔物や動物を倒した後どのようにするのかは知らない。

必要な部分だけ採ったあとは放置するのかもしれない。

アフリカのサバンナみたいにそのうち肉食の動物などが集まって食べて骨だけになるのかもしれないが日本人としてはあまりそれに期待したくない。

というより腐敗してそれが元で病気が発生するほうが俺としては怖い。


そんな訳で手間はかかるが焼いて埋めることにする。

死体の数も多いから腐敗したら臭いも洒落にならないだろうし。


そんな訳で洞窟そばの森の中に直径2m深さ10mほどの穴を土魔法の錬金魔法を利用してあける。

闇魔法ランク3の『レビテーション(浮遊)』で全部の死体を運び穴の中に放り込む。

そしてその上に背嚢から食用油を取り出し死体にかけて火魔法ランク1『イグナイテッド(点火)』で火をつける。


“くっ…さ…”


温度が低くて生焼けなのかものすごい臭いがしてきた。

仕方ないので火魔法ランク3『ファイアボール(火球)』を魔力を通常より少し余分に使い温度を上げで赤い炎から青白い炎に変えて穴の中に撃ち込む。

さらに風魔法ランク1『ウインド(風)』を使い絶え間なく強制的に酸素を送り込む。

これにより青白い炎(約1900~2000℃ ガスコンロやガスバーナーと同じくらいの温度)を維持し死体を5分ほどかけてほとんど肉の部分は焼ききった。

そのあと再び土魔法で穴を埋めておく。


これでほぼ病原菌の心配は無いだろう。

腕時計を取り出して見ると時間は正午を回ったところである。

思わぬ臨時収入が入ったか本来の目的の狩りはまったくして無い。

太陽が沈む前に村に帰りたいので時間的にあと4時間ほどしかないががんばって獲物を見つけるとしますか。


その前にお弁当、お弁当と♪

多数の死体処理をしたそばで食事とは…

ランは思った以上に場馴れしてるかもしれん…


ところで他の小説を見ているとこの『死体処理』の方法というのを書かれている作品はほぼ見たこと無いですね。

VR等のゲーム物ならそれも判るのですが異世界物ではその点の処理どうしているのだろうと個人的に思うのでありまして…

アフリカみたいなところならともかく普通町の近くの森とか草原でそのまま放置ばかりしてたら肉食獣は集まってくるは病気が蔓延するはで大変なことになりそうな気がするのですが…

今回はその辺が気になったのであくまでもチート魔法を使った簡単な処理方法として書いてみました。

まぁ、10mも深さのある穴をほいほい作れたり2000度近い炎を一定時間維持できたりする魔法使いがいる世界なら良いのですが…

この世界でもラン以外はこんな処理の仕方無理だろうな…

普通に浅い穴手で掘って埋めるのがせいぜいな気がする…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ